)” の例文
朝飯後、客の夫婦は川越の方へ行くと云うので、近所のおかみを頼み、荻窪まで路案内みちしるべかた/″\柳行李をわせてやることにした。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
立出三條の龜屋と云る旅籠屋はたごや宿やどりしに當所は大坂と違ひ名所古跡も多く名にし平安城へいあんじやうの地なれば賑しきこと大方なら祇園ぎをん清水きよみづ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
光はすえひて竹村の姉のもとへ、天神様のはとを見になど行き候。かしこに猿もあり、猿は行儀わろきものゆえ見すなといひきかせ候。
ひらきぶみ (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
阿母さんはもう座敷の拭掃除ふきそうぢも台所の整理事しまひごとませて、三歳みつヽになる娘の子をせなひ乍ら、広い土間へ盥を入れて洗濯物せんたくものをしてる。
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
今日は名にし金精こんせい峠である。ほとんど直立せる断崖絶壁を登ること一里八丁、樵夫きこりが連れて来た犬が莫迦ばかえ付いて始未におえぬ。
細い両眼の外は黒一色の影法師の背中に、長い髪の毛をふり乱した、白衣びゃくえの青ざめた女幽霊が、ぶさるようにしがみついているのだ。
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
されどテーマの重きことゝ人間の肩のこれをふことゝを思はゞ、たとひこれが下にてゆるぐとも、誰しも肩を責めざるならむ 六四—六六
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
フォーシュルヴァンがはいってきた時、ジャン・ヴァルジャンは壁にかかってる庭番のかごをコゼットに示しながら言っていた。
斯樣かやうに、墮落だらく方面はうめんをとくに誇張こちやうした冒險者アドヹンチユアラーあたまなかこしらあげ宗助そうすけは、その責任せきにん自身じしん一人ひとりまつたはなければならないやうがした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
荷物にもつ背中せなかって、薬売くすりうりの少年しょうねんは、今日きょうらぬ他国たこくみちあるいていました。きたまちから行商群ぎょうしょうぐん一人ひとりであったのです。
薬売りの少年 (新字新仮名) / 小川未明(著)
先生は予がこのこうともないしをふか感謝かんしゃせらるるといえども、予の先生にうところ、かえってだいにしておおいしゃせざるべからざるものあり。
保名やすな家来けらいのこらずたれて、保名やすな体中からだじゅう刀傷かたなきず矢傷やきずった上に、大ぜいに手足てあしをつかまえられて、とりこにされてしまいました。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
太股ふとももをつかれた柄本又七郎が台所に伏していると、高見の手のものが見て、「手をおいなされたな、お見事じゃ、早うお引きなされい」
阿部一族 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
自己の職分と父の贖罪しよくざいと二重の義務をんでるのだからと懺悔ざんげして居る程です、思ふに我々のける種子たねつちかふものは、彼等の手でせうよ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
望月の家をせ出した兵馬が、この村をあとにしてもと来た道。そこへちょうど通りかかったのは、空馬からうまを引いた、背に男の子をうた女。
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
母様おっかさんに逢いに行くんだ。一体、私のせなかんぶをして、目をふさいで飛ぶところだ。構うもんか。さ、手をこう、すべるぞ。」
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その山の頂上まで十ちょうほどある所を下僕しもべ二人にぶさって昇りましたけれども、何分にも痛くて動けませんので二日ばかり山中に逗留とうりゅういたし
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
そのうちに蝶々てふ/\とうさんの竹竿たけざをになやまされて、手傷てきずつたやうでしたが、まだそれでもげてかうとはしませんでした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
すると、ふいにそこへ、手傷てきずった大きないのししがあらわれて、そのくぬぎの木の根もとをどんどんりにかかりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
をんなこゑたかうたうてはまたこゑひくくして反覆はんぷくする。うたところ毎日まいにちたゞの一かぎられてた。をんな年増としま一人ひとりうてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
大来目主おほくめぬしと、ひ持ちて仕へしつかさ、海行かば水漬みづかばね、山ゆかば草むす屍、おほきみのにこそ死なめ、かへりみはせじと言立ことだ
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
千葉家ちばけふて大黒柱だいこくばしら異状いじやうつては立直たてなほしが出來できぬ、さうではいかと奧樣おくさまくらべてへば、はッ、はッ、とこたへてことばかりき。
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それでドウも二宮金次郎先生には私は現にうところが実に多い。二宮金次郎氏の事業はあまり日本にひろまってはおらぬ。
後世への最大遺物 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
と振りかぶって見せた。西洋人にまで義太夫を語って聴かせたいのだから始末にえない。尤もこれは通訳の限りでなかった。
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
清盛は、羞恥しゅうちした。鳥羽院の武者所をって、堂々と、一人前な男を誇示していた手前にである。穴があれば、はいりたい。
ただ我々はそんな概括論に一任する前に、もう一ぺん自分の内の歴史を調べてみる義務をうた、群島国の学徒なのである。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
がすりのあはせに、あかおび竪矢たてや背中せなかうた侍女じぢよが、つぎつかへて、キッパリとみゝこゝろよ江戸言葉えどことばつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
いんまさき小供をぶって、涙を流しながら、ここの女のお客はんが裏の二階からおぜぜを投げてくだはったさかい、ちょっとお礼に出ました
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
一家の都合つごうによって返済ののう不能ふのうも定まることであるから、感情的の理由も通る場合もあまたあろうが、借財が事業のためにったものならば
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
子供をぶった見窄みすぼらしい中年の男に亀井戸たままでの道を聞かれ、それが電車でなく徒歩で行くのだと聞いて不審をいだき、同情してみたり
雑記帳より(Ⅰ) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
「あのひとたち、とても、あたしの手にえませんの。……でも、そんなにおっしゃるんでしたら、お引き受けしてよ」
その小間物屋から四、五軒さきに、踊りや茶番の衣裳の損料貸しをする家があって、そこであやつりの衣裳の仕立てや縫い直しなどをっていた。
半七捕物帳:38 人形使い (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
お前も、ゆっくり寝てるがいい。もう少しお前が良くなれば、俺はお前をんぶして、ここの花園の中を廻ってやるよ。
花園の思想 (新字新仮名) / 横光利一(著)
お前の母ばかりでなしに、沢山たくさんの母たちが毎日のように警察に出掛けて行ったが、母はそこでよく子供をんぶした労働者風のおかみさんと会った。
母たち (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
その他を率いたが、二等三角点を設けんとせしも、名にしう嶮山とて機械及材料を運上はこびあぐる事能わず、むを得ず四等三角点を建設する事とした。
越中劍岳先登記 (新字新仮名) / 柴崎芳太郎(著)
ロミオ 領主りゃうしゅには近親きんしんたる信友しんいうのマーキューシオーが俺故おれゆゑあのやうな重傷ふかでひ、おれはまたたゞ時程ときほど縁者えんじゃとなったあのチッバルトゆゑ汚名をめいけた。
アカシアがまだついの葉をせて睡っている、——そうした朝早く、不眠に悩まされた彼は、早起きの子供らを伴れて、小さなのは褞袍どてらの中にぶって
贋物 (新字新仮名) / 葛西善蔵(著)
やらなきやへねえ奴だと云つてゐました。又別の時エグナアの忰のフレッドからもその話を聞きましたがフレッドもシリングのやうな奴は首へ繩をかけて
無法な火葬 (旧字旧仮名) / 小泉八雲(著)
ゆゑこの攝養法せつやうはふひろおこなはれ、戰後せんごてふ大任たいにんへるわが國民こくみん體力たいりよく一層いつそう強固きやうこならしめ、各自かくじ職責しよくせき遺憾ゐかんなく遂行すゐかうせられんことをふか希望きばうするところなり。
命の鍛錬 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
あるとき猿廻さるまわしの背中せなかわれているさるに、かきをくれてやったら、一口ひとくちもたべずにべたにすててしまいました。みんながじぶんをきらっていたのです。
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
何處いづこにも土地とちめづらしき話一つはある物ぞ、いづれ名にしはば、哀れも一入ひとしほ深草の里と覺ゆるに、話して聞かせずや
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
〔評〕南洲、顯職けんしよくに居り勳功くんこうふと雖、身極めて質素しつそなり。朝廷たまふ所の賞典しやうてん二千石は、こと/″\く私學校のつ。貧困ひんこんなる者あれば、のうかたぶけて之をすくふ。
数馬はその途端とたんりこみましたゆえ、わたくしへは手傷もわせずに傘ばかり斬ったのでございまする。
三右衛門の罪 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
なんだかこれまたかれには只事たゞごとでなくあやしくおもはれて、いへかへつてからも一日中にちぢゆうかれあたまから囚人しうじん姿すがたじゆうふてる兵卒へいそつかほなどがはなれずに、眼前がんぜん閃付ちらついてゐる
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
だんだん聞いてみると、次郎たちの仲間が十四五名で、隣村の青年たち四五名と、大川の土堤で乱闘をやり、相手にかなりひどい傷をわせたというのである。
次郎物語:02 第二部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
じぶんは主君に二とうまで傷をわしたから、不忠不義の極悪人となって死なねばならぬ、それも己一人死ぬるなら好いが、父をはじめ一家一門にもそのとがめがかかって
頼朝の最後 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
さあ、ぐつすりるとしよう。耶蘇イエススよ。十字架クルスふあのしろ幼児をさなごたちをも、夜々よるよるむらしたまへ。われまことにかくねがたてまつる。あゝむくなつた。われまことにかくねがたてまつる。
あなたの帰幽きゆう当時とうじの、あのはげしい狂乱きょうらん執着しゅうじゃく……とてもわたくしなどのえたものではありませぬ。
「おのおの方ッ、こけ猿の茶壺でござるぞ。われわれの手で取りもどしたは、真に痛快事。これで、気をい剣を帯して、江戸表まで出てまいった甲斐があったと申すもの」
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
其の流れのきよきをげしなるを思へば、ここの玉川も毒ある流れにはあらで、歌のこころも、一〇八かばかり名にふ河の此の山にあるを、ここにまうづる人は一〇九忘る忘るも