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墜
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お
ふりがな文庫
“
墜
(
お
)” の例文
「可哀想じゃないか、あんな結構な太夫を殺して、——過ちで
墜
(
お
)
ちたのかと思ったら、こめかみへ吹矢が突っ立っていたんだってネ」
銭形平次捕物控:118 吹矢の紅
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
暫くして空から一つの桃が
墜
(
お
)
ちて来た。それは
盌
(
わん
)
よりも大きなものであった。彼の男は喜んで、それを堂の上の官人にたてまつった。
偸桃
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
「こわくはなかった。いや、こわいということは感じなかった。第一、
墜
(
お
)
ちることを、考えもしなかった。ぼんやりしてたんだな」
幻化
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
というのは、彼がちょっとでもその顔を見たら、たちまち死んだ石の像になって、空中からどうっと
墜
(
お
)
ちてしまったでしょうから。
ワンダ・ブック――少年・少女のために――
(新字新仮名)
/
ナサニエル・ホーソーン
(著)
コップから水を嚥んで、下に置こうというときに異変が起ってコップを手から
墜
(
お
)
としたら、ああもなるのではないかと想像される。
三人の双生児
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
▼ もっと見る
ブンと風をきり、五十
米
(
メエトル
)
も海にむかって、突き刺さって行く槍の
穂先
(
ほさ
)
きが、波に
墜
(
お
)
ちるとき、キラキラッと陽に
眩
(
くる
)
めくのが、
素晴
(
すばら
)
しい。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
さっき、自分が
墜
(
お
)
ちこんだ所を、鏡の裏の下から仰ぐと、一丈あまりの高さであって、
梯子
(
はしご
)
のない二階同様、上がる
術
(
すべ
)
がないのである。
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
かくて苦悩と労役との十九年の間に、彼の魂は同時に上りまた
墜
(
お
)
ちた。一方からは光明がはいり、他方からは暗黒がはいってきた。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
迂濶
(
うかつ
)
に手を放せば、彼は底知れぬ
暗黒
(
くらやみ
)
に転げ
墜
(
お
)
ちて、お杉と同じ運命を追わねばならぬ。さりとて
此
(
こ
)
のままの
暗黒
(
くらやみ
)
では仕方が無い。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
あの朝、私は便所にいたので、皆が見たという光線は見なかったし、いきなり暗黒が
滑
(
すべ
)
り
墜
(
お
)
ち、頭を何かで
撲
(
なぐ
)
りつけられたのだ。
廃墟から
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
「おばさま、其処の穴は欠け石でがじがじして危いったら。抜けたって向う側はどろどろ川なのよ、
墜
(
お
)
っこったら死んじまう。」
蜜のあわれ
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
彫刻などいうことは地に
墜
(
お
)
ちてほとんど社会から見返られなかったにもかかわらず、今日、ゆくりなくもこうした光栄を得たことを思うと
幕末維新懐古談:67 帝室技芸員の事
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
さきに
墜
(
お
)
ち入りたるほとりの雑草に、血に染みて生けるがごとき指等を絡ましめつつ這い出づ。衣形ほとんど血に濡れてあり。
道成寺(一幕劇)
(新字新仮名)
/
郡虎彦
(著)
銀の如き髮の解けたるが、片頬に
墜
(
お
)
ちかゝりて、褐色なる頸のめぐりに垂るゝを見る。その墨の如き瞳は、とこしへに
苧環
(
をだまき
)
の上に凝注せり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
段丘を吹き抜けて来た烈風は、この外れで
墜
(
お
)
ちて逆転した。
雪庇
(
ゆきびさし
)
の軒下をえぐり取ってその向うに吹きだまりをつくっていた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
二人は底知れぬ谷に
墜
(
お
)
ち
失
(
う
)
せたり。
千秋万古
(
せんしゅうばんこ
)
、ついにこの二人がゆくえを知るものなく、まして一人の
旅客
(
たびびと
)
が情けの光をや。
詩想
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
はて、時ならぬ、何のための
水悪戯
(
みずいたずら
)
ぢや。
悪戯
(
いたずら
)
は仔細ないが、
羽
(
は
)
ぶしの
怪我
(
けが
)
で、
湖
(
うみ
)
に
墜
(
お
)
ちて、
溺
(
おぼ
)
れたのではないかと思うた。
妖魔の辻占
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
いつ何時、心が魔道に
墜
(
お
)
ちぬとも限らぬと、自誡のために、わざわざ白紙の一巻を、二柱の御神前に
供
(
そな
)
え
奉
(
たてまつ
)
って置いたわけ。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
渡し場の船頭は、大きな図体に闕腋を着け、冠を
被
(
き
)
た鼓村氏の姿を見て、天国から
墜
(
お
)
ちて来た人ででもあるかのやうに、目を
瞠
(
みは
)
つて
吃驚
(
びつくり
)
した。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
声もろともに射出す
征矢
(
そや
)
に先に進んだ騎馬武者一騎、真っ逆様に馬より
墜
(
お
)
ち、次に進んだ騎馬武者は馬もろともに倒された。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
あさひは
暗澹
(
あんたん
)
たる前途を見透し、地獄へ
墜
(
お
)
ちる瞬間の光景を
垣間
(
かいま
)
見たひとのような悲愴な顔で、生きにくい東京という土地を離れる決心をした。
虹の橋
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
頭が熱し、
瞼
(
まぶた
)
が焼けて、じぶんは地獄に
墜
(
お
)
ちてもマヌエラを天に送ろうと、座間は目を
瞑
(
つぶ
)
り絶叫に似た叫びをあげていた。
人外魔境:01 有尾人
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
深川の陸軍
糧秣廠
(
りやうまつしやう
)
の広場で何十万の人の死んだ所や、両国の橋の
墜
(
お
)
ちた所などを読んだ。どうも息がつまるやうである。
日本大地震
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
ぼくはぼくの才能によって
墜
(
お
)
ちるところへ墜ちて来たのさ……許してくれたまえきみ、ぼくはいつも恥じていたんだ、ぼくはこれだけの人間なんだよ
陽気な客
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
ふと涸沢岳のあの
脆
(
もろ
)
い岩壁から岩がひとつ
墜
(
お
)
ちる音がした。カチーン……カチーン……と岩壁に二、三度打ちあたる音が、夜の沈黙のなかにひびいた。
涸沢の岩小屋のある夜のこと
(新字新仮名)
/
大島亮吉
(著)
「
爪
(
つめ
)
や髪の伸長をも意志によって左右しようとしなければ気が済まない者の不幸について」「酔うている者は車から
墜
(
お
)
ちても傷つかないことについて」
悟浄出世
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
さっきもあの梯子段の手すりへ
跨
(
またが
)
って、
辷
(
すべ
)
り下りようとなさるんでしょう。私
吃驚
(
びっくり
)
して、
墜
(
お
)
ちて死んだらどうなさるのって云ったら——ねえ、民雄さん。
路上
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
他日幕府の政權を
還
(
かへ
)
せる、其事實に公の
呈書
(
ていしよ
)
に
本
(
もと
)
づけり。當時
幕府
(
ばくふ
)
既に
衰
(
おとろ
)
へたりと雖、
威權
(
ゐけん
)
未だ地に
墜
(
お
)
ちず。公
抗論
(
かうろん
)
して
忌
(
い
)
まず、獨立の見ありと謂ふべし。
南洲手抄言志録:03 南洲手抄言志録
(旧字旧仮名)
/
秋月種樹
、
佐藤一斎
(著)
嘘でも、また、ひかれ者の小唄でもないもの。まともなことを正直に僕に訴えて見給え。君は、なにか錯覚に
墜
(
お
)
ちている。僕を、太陽のように利用し給え。
虚構の春
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
アダ、私は貴女が
容易
(
たやす
)
く身を委すたびに飛行機のプロペラのこわれたように扁平な地球からころげ
墜
(
お
)
ちるような大陸的な叫声を出すのを知っているのです。
孟買挿話
(新字新仮名)
/
吉行エイスケ
(著)
最初に、最も大きな枝が地に
墜
(
お
)
ちた音で、彼の珍らしい仕事を見に来た彼の妻は、何か夫に
喚
(
よ
)
びかけたやうであつたけれども、彼は全く返事をしなかつた。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
少女は「あ」と叫びつつ、そのまま気を
喪
(
うしな
)
ひて、巨勢が
扶
(
たす
)
くる手のまだ及ばぬ
間
(
ま
)
に
僵
(
たお
)
れしが、傾く舟の一揺りゆらるると共に、うつ
伏
(
ぶせ
)
になりて水に
墜
(
お
)
ちぬ。
うたかたの記
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
英雄は人類の中心点である、そうだ、中心点だ、車の
軸
(
じく
)
だ、国家を支える大黒柱だ、ギリシャの神話にアトラス山は天が
墜
(
お
)
ちるのを
支
(
ささ
)
えている山としてある。
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
しかし私のこの熱情はだんだんに弱くなって来て、いつの間にか空想に
墜
(
お
)
ちていました。この
室
(
へや
)
には、すこしも死人の室とは思われないところがあったのです。
世界怪談名作集:05 クラリモンド
(新字新仮名)
/
テオフィル・ゴーチェ
(著)
ただ彼はときどき激しい羽ばたきをする盲目的な力に支配されたが、その力もやがてくじけて地に
墜
(
お
)
ちてしまった。彼はあたかも闇の中に
唸
(
うな
)
る雷雲に似ていた。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
吁
(
ああ
)
、彼はその初一念を
遂
(
と
)
げて、
外面
(
げめん
)
に、内心に、今は全くこの世からなる魔道に
墜
(
お
)
つるを得たりけるなり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
可憐
(
かれん
)
なるエレーンは人知らぬ
菫
(
すみれ
)
の如くアストラットの古城を照らして、ひそかに
墜
(
お
)
ちし春の夜の星の、紫深き露に染まりて月日を経たり。
訪
(
と
)
う人は
固
(
もと
)
よりあらず。
薤露行
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
有名なる英のアルフレッド大王は、人が樹から
墜
(
お
)
ちて死んだ時には、その樹を斬罪に処するという法律を設け、ユダヤ人は、人を
衝
(
つ
)
き殺した牛を石殺の刑に行った。
法窓夜話:02 法窓夜話
(新字新仮名)
/
穂積陳重
(著)
およそ四百三十年の期間であった。治承四年の冬、
平重衡
(
たいらのしげひら
)
の兵火によって
伽藍
(
がらん
)
の大部分が焼失したことは周知のところであろう。仏頭もむろん
熔
(
と
)
け
墜
(
お
)
ちてしまった。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
と、顔を
擡
(
あ
)
げてじっと主人を看る眼に、涙のさしぐみて、はふり
墜
(
お
)
ちんとする時、また
頭
(
かしら
)
を下げた。
雪たたき
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
酒に酔つて来た為か、富岡は少しづつ気持ちが明るくなり、
曖昧
(
あいまい
)
な心のわだかまりから、解放されて、このまゝまた元通りの危険な関係に
墜
(
お
)
ち込んでゆく勇気が出た。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
わが邦はその改革前まではいまだ一雲片の空間に
飄
(
ひるがえ
)
るを見ず。いまだ一点滴の大地に
墜
(
お
)
つるを見ず。
将来の日本:04 将来の日本
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
地獄に
墜
(
お
)
ちてもだえ苦しむ者と、地獄に
墜
(
おと
)
して喜ぶ悪魔との
咽喉
(
のど
)
から一緒になって、ただ地獄からだけ聞えてくるものと思われるような、なかば恐怖の、なかば勝利の
黒猫
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
または落雷に砕かれ候て
隠置
(
かくしおき
)
候大金、木の葉の如く地上に
墜
(
お
)
ち来り候やうの事有之候ては一大事なりと、天気
宜
(
よろ
)
しからざる折には
夜中
(
やちゅう
)
にも時折
起出
(
おきい
)
で、書院の
窓
(
まど
)
を明け
榎物語
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
私を
溺愛
(
できあい
)
する叔母であることを知ればこそ、苦笑しながらも、それを有難いと思って、
享
(
う
)
け入れている私との間には、いわば、
睦
(
むつ
)
まじさが平凡な眠りに
墜
(
お
)
ちて行くのを
河明り
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
地に拠って一度吼ゆれば山石震い裂け馬辟易し弓矢皆
墜
(
お
)
ち、逃げ帰ってまた虎を射なんだとある。
十二支考:01 虎に関する史話と伝説民俗
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
湯村は急に力を
籠
(
こ
)
めて、「今の世に
最
(
も
)
う信仰は無い、神の権威は地に
墜
(
お
)
ちた。有るものは唯理解だけ、理解を離れては神の存在すら信ずる事の出来ぬ、浅間しい時代だ。」
茗荷畠
(新字旧仮名)
/
真山青果
(著)
そして、
相手
(
あひて
)
の
鳥
(
とり
)
が
下
(
した
)
の
方
(
ほう
)
へとだんだん
小
(
ちひ
)
さくなつて
墜
(
お
)
ちてゆき、
見
(
み
)
えなくなつてしまふと、その
時
(
とき
)
こそ
得意
(
とくい
)
さうに
羽
(
はね
)
を
反
(
そ
)
らして、カラカラと
空
(
そら
)
のまん
中
(
なか
)
で、
笑
(
わら
)
ふのだつた。
火を喰つた鴉
(新字旧仮名)
/
逸見猶吉
(著)
日本の文学は源平以後地に
墜
(
お
)
ちて
復
(
また
)
振はず、殆んど消滅し
尽
(
つく
)
せる際に当つて芭蕉が俳句において美を発揮し、消極的の半面を開きたるは彼が非凡の才識あるを証するに足る。
俳人蕪村
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
『その
理由
(
わけ
)
は』と
云
(
い
)
つてグリフォンは、『それは
何時
(
いつ
)
でも
蝦
(
えび
)
と一
緒
(
しよ
)
に
舞踏
(
ぶたう
)
をする。
其故
(
それゆゑ
)
皆
(
みん
)
な
海
(
うみ
)
の
中
(
なか
)
へ
放
(
はふ
)
り
込
(
こ
)
まれる。それで
長
(
なが
)
い
道程
(
みちのり
)
を
墜
(
お
)
ちて
行
(
ゆ
)
かなければなりませんでした。 ...
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
墜
常用漢字
中学
部首:⼟
15画
“墜”を含む語句
墜落
失墜
撃墜
墜下
乱墜
墜道
突墜
墜児
隕墜
自墜落
空花乱墜
激墜
既墜
扇墜
小墜道
射墜
墜葉
墜落物
墜緒
墜入