)” の例文
白鳥はくちょうは、注意深ちゅういぶかくその広場ひろばりたのであります。そして、そこに、一人ひとり少年しょうねんくさうえにすわって、ふえいているのをました。
港に着いた黒んぼ (新字新仮名) / 小川未明(著)
さて、屋根やねうへ千人せんにんいへのまはりの土手どてうへ千人せんにんといふふう手分てわけして、てんからりて人々ひと/″\退しりぞけるはずであります。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
階段をり、階下の校舍の一部を横切り、それから二つのドアを音を立てないやうにうまけて、まためて、別の階段の所まで來た。
雁の童子と仰っしゃるのは、まるでこのごろあったむかしばなしのようなのです。この地方にこのごろりられました天童子てんどうじだというのです。
雁の童子 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
するととりりてたので、二十にんこなひきおとこは、そうががかりで、「ヨイショ、ヨイショ!」とぼうでもって石臼いしうすたかげました。
しかし十一時過ぎにこの家を出て、無縁坂をぶらぶらりながら考えて見れば、どうもまだその奥に何物かが潜んでいそうである。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
この時阿遲志貴高日子根あぢしきたかひこねの神まして、天若日子がを弔ひたまふ時に、天よりり到れる天若日子が父、またその妻みな哭きて
何度なんど何度なんど雄鷄おんどりえだのぼりまして、そこからばうとしましたが、そのたびはねをばた/″\させてりてしまひました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
是がもし『琉球神道記』以下に伝うるごとく、天よりり来たった始祖男女の故郷だとすれば、そことニルヤとのつながりはどう付くか。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
ここの家は、五代の末期、そうの太祖の時代に地方へりたもので、祖先の柴世祖さいせいそは、帝位にあった幼君だった。時に契丹きったんとの大戦あり。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『えゝ、』彼女は、高い階段きざはしの先を見上げた。その高い階段きざはしは、また先の方に暗くなつて、登つただけ、再びりなければならなかつた。
幸福への道 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
松源まつげん伊予紋いよもん申付まうしつけます、おや御両人様おふたりさんからお年玉としだま有難ありがたうございます、只今たゞいますぐに、わたし元日ぐわんじつからふく/\です事よ。としたりてく。
七福神詣 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
この夕、出でて見て、向ひ見て、丸木橋妻とわたりて、また見れば、まだかがやけり。その薄刈る人もあり、また負ひてるもあり。
観相の秋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
勘次かんじはしつて鬼怒川きぬがはきしつたとききりが一ぱいりて、みづかれ足許あしもとから二三げんさきえるのみであつた。きしにはふねつないでなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
霜がりていそうな寒い夜を帰ってゆく途すがら、彼は対象の分らない漠然とした感激に包まれた。何物もない自分自身がいとおしかった。
反抗 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
下界げかいものとしてはあま靈妙いみじい! あゝ、あのひめ女共をんなども立交たちまじらうてゐるのは、ゆきはづかしい白鳩しらはとからすむれりたやう。
そう西山は大きな声で独語しながら、けたたましい音をたてて階子段を昇るけはいがしたが、またころがり落ちるように二階からりてきた。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
はちはそれにとまつてしばらをつと氣配けはいうかゞつてゐるらしかつたが、それが身動みうごきもしないのをると、死骸しがいはなれてすぐちかくの地面ぢべたりた。
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
うちのか、よそのか、かさなりたゝんだむねがなぞへに、次第低しだいびくに、溪流けいりうきしのぞんで、通廊下かよひらうかが、屋根やねながら、斜違はすかひにゆるのぼり、またきふりる。……
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
下へりて玄関へ出た時、僕は母を送って来るべきはずの吾一の代りに、千代子が彼女のあといて沓脱くつぬぎからあがったのを見て非常に驚ろいた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
登る時には長い時間と多くの汗水とをついやさせた八溝山も、そのおりる時はすこぶる早い。しかしり道も決して楽ではなかった。
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
藁積わらぐまなどには白くしもり、金色にさしてくる太陽の光が、よい一日を約束していたが、二十年も正月といえば欠かさず一緒に出かけた松次郎が
最後の胡弓弾き (新字新仮名) / 新美南吉(著)
「ウン、それで何かを見ていたんだ。そして、風船からり様として、繩梯子に足をかけるかかけないに、突然弾丸の様に墜落してしまったんだ」
地獄風景 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ふとくびすかえして、二あしあしあるきかかったときだった。すみ障子しょうじしずかにけて、にわった春信はるのぶは、蒼白そうはくかおを、振袖姿ふりそですがた松江しょうこうほうけた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
わたくしいそいでいわからりてそこへってると、あんたがわず巌山いわやまそこに八じょうじきほどの洞窟どうくつ天然てんねん自然しぜん出来できり、そして其所そこには御神体ごしんたいをはじめ
こういいながらはしの下にりて、なみってみずうみの中にはいって行きました。藤太とうだもそのあとからついて行きました。
田原藤太 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
で、冬の朝など、日が出る前に寝台から飛びり、手で時間を見る。指の先を時計の針に触れてみるのである。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
なぜならば彼らは山国の住民で日夜山をのぼりする。それもただ降り昇りするだけでなくて、重い荷物を背負って急いで降り昇りする程強い人民である。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
「では、行つて來ます」と警官はヘルメットを手に取りながら挨拶し、巡警を從へて甲板からりて行つた。
参詣の人が二人三人と絶えずあがりする石段の下には易者の机や、筑波根つくばね売りの露店が二、三軒出ていた。
深川の唄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「それではお先きにりまして、バスを止めて待たせて置きますから」と彼は大いにサービスしてくれた。
東北の家 (新字旧仮名) / 片山広子(著)
お粂は兄をうながして表へ出ると、暑いと云っても旧暦の七月の宵はおいおいにけて、夜の露らしいものが大屋根の笹竹にしっとりとりているらしかった。
半七捕物帳:35 半七先生 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
その冬はひどく寒くて、永い間きびしい霜がり、烈しい風が吹いた。そして、可哀そうな父が春まで持ち越しそうにもないことは、初めからよくわかっていた。
上野の停車場へりさえすれば、目の前に金のもうかる仕事が御意のままにころがって居ると思って居る。
農村 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
壁の大阪土の中に掘穴を塗り込んで、それをりれば地下の銭庫かなぐらへ抜けられるように仕組んであった。
吾人はかかる文壇を軽蔑けいべつしよう。詩人から文壇の方にり、彼等に巻き込まれて行くのでなく、逆に文壇を吾人の方に、詩的精神の方に高く引きあげて教育しよう。
詩の原理 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
ときまつたくその一組ひとくみ空中くうちゆうあがり、それからあいちやんのうへりてました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
丁度ちやうど、その砂山の上に来た時、久米くめは何か叫ぶが早いか一目散いちもくさんに砂山をりて行つた。
微笑 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
それでも仲々階下したにさへしぶつて、二人限きりになれば何やら密々ひそ/\話合つては、袂を口にあてて聲立てずに笑つてゐたが、夕方近くなつてから、お八重の發起で街路へ出て見た。
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
目覚めると、庭芝のうへ、やはらかな雨がりてゐる。目にしみる、いろどり。睡つてゐる芝艸。——みてゐると、ぽたり、それへ凌霄のうぜんかづらの花がこぼれおちた。緑中一点紅。
(新字旧仮名) / 高祖保(著)
この時岩かどにとまりいたる兀鷹はげたか空を舞い、矢のごとく海面うみづらり魚を捕えたちさる。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
私は裾を端折はしよつてり仕度をしながら、いかにも酒ずきらしいこの爺さんに言つた。
梅雨紀行 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
樽野は、背中に陽を浴びた丘の頂きに差しかゝると、其処から突然崖になつて瞰下される草木の深い急な斜面をアケビの蔓をたぐりながら転落する石のやうに素早く駆けり始めた。
籔のほとり (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
「棧はひとりでりるんですね、——これぢや下手人は内の者と限らないわけで」
すなわちそれは、数時間、人生から「りて」居るのである。それに耐え切れず、車中でウイスキーを呑み、それでもこらえ切れず途中下車して、自身の力で動き廻ろうともがくのである。
『井伏鱒二選集』後記 (新字新仮名) / 太宰治(著)
牀といふは卓の一端の地上に敷ける藁蓆わらむしろなり。その男は何やらん一座のものに言置き、「ヂツセンチイ、オオ、ミア、ベツチイナ」(り來よ、やよ、我戀人)と俚歌ひなうた口ずさみて出行きぬ。
と、訶和郎は卑弥呼を抱いたまま草の上に転落した。しかし、彼は窪地の中にりると、彼女のたてのようにひれ伏して矢を防いだ。矢に射られた鹿の群れは、原の上を狂い廻って地に倒れた。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
あるいは今いったとおりツバメが低くりてそれにふれるだけである。
五階食堂ございます。ええ、六階、七階、あとは終点まで急行で御座います。途中おりの方は御乗換おのりかえをねがいます。ありませんか。では三十八階でございます。どなたもこれまでで御座います。
遊星植民説 (新字新仮名) / 海野十三(著)
玄子げんし器具きぐなどかつぎ、鶴見つるみにて電車でんしやり、徒歩とほにて末吉すゑよしいた。