幸福への道こうふくへのみち
『上れますか。』 高い、こまかい階段の前に、戀人の聲が、彼女の弱い歡樂の淡絹をふりおとした。 彼女は、立止まつた、その瞬間、いま賑かな街を俥で飛んで來た、わづか十五分間の、眩惑されるやうな日のなかの、うれしさの心まどひが、彼女の心の底に常に …