)” の例文
土地とちにて、いなだは生魚なまうをにあらず、ぶりひらきたるものなり。夏中なつぢういゝ下物さかなぼん贈答ぞうたふもちふること東京とうきやうけるお歳暮せいぼさけごとし。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
この世に無用の長物ちょうぶつは見当らぬ。いわんや、その性善にして、その志向するところ甚だ高遠なるわが黄村先生にいてをやである。
花吹雪 (新字新仮名) / 太宰治(著)
原田氏はらだし星亨氏ほしとほるし幕下ばつか雄將ゆうしやうで、關東くわんとうける壯士さうし大親分おほおやぶんである。嶺村みねむら草分くさわけ舊家きうけであるが、政事熱せいじねつ大分だいぶのきかたむけたといふ豪傑がうけつ
わがくにける三階建さんがいだて勿論もちろん二階建にかいだて大抵たいてい各階かくかいはしらとこ部分ぶぶんおいがれてある。すなはとほはしらもちひないで大神樂造だいかぐらづくりにしてある。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
この神苑の花が洛中らくちゅうける最も美しい、最も見事な花であるからで、円山公園の枝垂桜しだれざくらが既に年老い、年々に色褪いろあせて行く今日では
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
アヽ、梅子さん、何卒どうぞ我国にける、社会主義のマザアとなつて下ださい、マザアとなつて下ださい、是れが篠田長二畢生ひつせいの御願であります
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
自分はつまずきもし、失望もし、迷いもした。しかし大体にいて彼女を救おうとした自分の方針を過まらなかったつもりだと書いた。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
思えばしかしこう盲信したのは私のはなはだしい軽率で、私自身の過去の事実にいて、最もかく信ずべからざる根拠が与えられていたのである。
生涯のある時期にいて、教師をするということは、僕にとって予定されていたことかも知れません、とにかく、やってみるつもりです。
冬日記 (新字新仮名) / 原民喜(著)
「信濃町」事件(というほどのことではないかも知れないが)にける先生の不審な態度も思いあわすことをめるわけには行かなかった。
階段 (新字新仮名) / 海野十三(著)
当時とうじわたくしりましては、んだ良人おっとうのがこのける、ほとんど唯一ゆいいつ慰安いあんほとんど唯一ゆいいつ希望きぼうだったのでございます。
姉のつみにも、ふさわしい婿むこでもさがしてやりましょう。酒飲みの養父ちちにも、少しはうまい酒も飲ませて上げられるでしょう。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
生徒虐待ぎゃくたいとか云ってたちまちに問題をひき起すのであろうが、寺子屋の遺風の去らない其の当時にあっては、師匠が弟子を仕込む上にいて
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
いましも船首甲板せんしゆかんぱんける一等運轉手チーフメート指揮しきしたに、はや一だん水夫等すいふら捲揚機ウインチ周圍しゆうゐあつまつて、つぎの一れいとも錨鎖べうさ卷揚まきあげん身構みがまへ
仁宗立ってそのとし崩じ、仁宗の子大位にくに及びて、ついに反す。高煦の宣徳帝せんとくていけるは、なお燕王の建文帝に於けるが如きなり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
形は奇禍ですが、心持にいては立派な自殺です。たゞ自動車の偶然の衝突があの人の死を、二三日早めたのに過ぎないのです。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
日本石器時代の研究はただに日本の地にける古事を明かにする力を有するのみならず人類學じんるゐがくに益を與ふる事も亦極めて大なり。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
お源は負けぬ気性だから、これにはむっとしたが、大庭家にけるお徳の勢力を知っているから、さからっては損と虫をおさえて
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
俗界ぞくかいける小説せうせつ勢力せいりよくくのごとだいなればしたがつ小説家せうせつかすなはいま所謂いはゆる文学者ぶんがくしやのチヤホヤせらるゝは人気じんき役者やくしやものかづならず。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
あたかも私のそういう長い不在を具象ぐしょうするような、この高原にけるさまざまな思いがけない変化、それにつけても今更いまさらのように蘇って来る
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
これは、後程のちほど彼女が出逢ったある危機にける、想像を絶した冷静さにちょうしても、外に判断の下し方はない様に見えるのだ。
お勢登場 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「はい、過日、鉄砲的場にきまして勝負の折にも、三之丞が勝つべきところでござりました。あの負は負でございませぬ」
備前名弓伝 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
しかるに五・一五事件以来ファッシズム殊に〔軍部〕内にけるファッシズムは、おおうべからざる公然の事実となった。
二・二六事件に就て (新字新仮名) / 河合栄治郎(著)
ケレルマンがその著『日本にける散歩』のうちで、日本の或る女について「欧羅巴ヨーロッパの女がかつて到達しない愛嬌をもって彼女はこびを呈した{4}」
「いき」の構造 (新字新仮名) / 九鬼周造(著)
あるいは敵を前にいてそんな優長な事が出来るかという人もありましょうけれども敵を前において物を食べるような事は毎日あるものでありません。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
この女の素性にける彼の疑はますます暗くなりぬ。夫有つまもてる身の我は顔に名刺を用意せるも似気無にげなし、まして裏面うらに横文字を入れたるは、猶可慎なほつつましからず。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
しかし、梶には、この街にいてのヨハンの特殊な地位を考えぬ以上は、まだそこに呑み込めぬものが残って来た。
罌粟の中 (新字新仮名) / 横光利一(著)
知的直観とは純粋経験にける統一作用そのものである。生命の捕捉である。即ち技術の骨の如きもの、一層深く言へば美術の精神の如きものである。
愛と認識との出発 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
実業家が地震や天国の談話はなしを聞いた所で仕方がないが、彼等は学者に勝手な事を喋舌しやべらしていて、そしてあとから
料理に対する食器の存在は人間にける着物の存在でしょう。着物なしでは人間が生活出来ないように、料理も食器なしでは独立することは出来ません。
近作鉢の会に一言 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
学芸会にける学生劇の背景製作などをいつも引きうけて居たといふ事であり、故郷の両親が初めは反対してゐたのに遂に画家になる事を承認したのも
智恵子抄 (新字旧仮名) / 高村光太郎(著)
外が外れたばかりでない、自分の技能ぎのうが自分の思ツてゐた半分はんふんも出來てらぬことを證據しようこ立てられた。此の場合にける藝術家は、敗殘困憊はいざんこんぱひ將軍しやうぐんである。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
こゝいてか滿座まんざこと/″\拍手はくしゆ喝釆かつさいしました、それはしん王樣わうさま其日そのひおほせられたうちもつとたくみみなるお言葉ことばでした。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
宗教の必要が現在にいて認めていられるか、未来に於いて認めて行かれるかと云うことなんぞを思って見ようもなく、一切無頓著でいるのではあるまいか。
かのように (新字新仮名) / 森鴎外(著)
上官。私は決心いたしました。この饑餓陣営の中にきましては最早もはや私共の運命はさだまってあります。戦争のためにでなく飢餓の為に全滅ぜんめつするばかりであります。
饑餓陣営:一幕 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
それゆえか、少青年期間にける氏は、かなりな美貌びぼう持主もちぬしであったにかかわらず、単に肉欲の対象以上あまり女性との深い恋愛関係などは持たなかった相です。
では全然無茶苦茶むちやくちやかと云ふと、かならずしもまたさうではない。少くとも僕の架上かじやうの書籍は僕の好みを示してゐる。或はいろいろの時期にける好みの変遷を示してゐる。
蒐書 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
よるいろにそのみどりくろずみ、可愛かあいらしい珊瑚珠さんごじゆのやうなあかねむたげではあるけれど、荒涼くわうりやうたるふゆけるゆゐ一のいろどりが、自然しぜんからこの部屋へやうつされて
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
是にいて、使者還り来て曰く、墓所に到りて視れば、かためうづめるところ動かず。すなはち開きて屍骨かばねを見れば、既にむなしくなりたり。衣物きもの畳みてひつぎの上に置けり。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
時雄は京都嵯峨さがける女の行為にその節操を疑ってはいるが、一方には又その弁解をも信じて、この若い二人の間にはまだそんなことはあるまいと思っていた。
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
神の働き——われ等は、地上生活中にけるよりも、遥かに多く神の働きにつきて知ることができた。
「夜が更けたと申して、拙者にいては、毛頭かまわぬ——ときどき、晩酌が長引き出すと、夜を徹して飲むことがある位だ。だが、お初どの、そなたの方に——」
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
この場合にもこちらの予備が出来てゐず、支那にけるその方面の大家の名などが幾人も出てくるのであるが、やはりぼんやりとして聞いてゐるといふ有様であつた。
露伴先生 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
たゞし、資本しほんは一めんいておほいに國家的こくかてきであるから國際戰爭こくさいせんさうおこり、したがつてまた國家的こくかてき社會主義者しやくわいしゆぎしやもあり、コスモポリタンにざる心理しんりはたらきがそこにる。
もしこれ等の答解にして完全だったら、吾人ごじんはそのどっちを聞いても好いのである。なぜなら芸術にける形式と内容の関係は、鏡に於ける映像と実体の関係だから。
詩の原理 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
作家は材料を研究室の中に閉じ籠めてはならない。それをあるがままの環境に置き、その環境との自然的な有機的な交流にいて、その生態を捉えなければならない。
チェーホフの短篇に就いて (新字新仮名) / 神西清(著)
その目的は我日本国中にける気品の泉源、智徳の模範たらんことを期し、これを実際にしては居家きょか、処世、立国の本旨を明にして、之を口に言うのみにあらず、躬行きゅうこう実践
恋は盲目だということわざもあるが、お繁さんにける予に恋の意味はない筈なれども、幾分盲目的のところがあったものか、とにかく学生時代の友人をいつまで旧友と信じて
浜菊 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
その学界にける活動は非常に盛んであったので、有力な会員たちが集まって科学の問題について討論をなし、また機関紙を発行して学問の進歩を大いに促進させたのでした。
ロバート・ボイル (新字新仮名) / 石原純(著)
隷使れいしされたといったがいずれのときにいても民衆の上に傑出せる英雄が生ずるのである。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)