)” の例文
平衡へいこうを保つために、すわやと前に飛び出した左足さそくが、仕損しそんじのあわせをすると共に、余の腰は具合よくほう三尺ほどな岩の上にりた。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
現に此方こちらの広海さんでは懇意な牛乳屋に特約なすって飲料にする牛乳はろし相場即ち一升二十五銭でお買入れになりますし
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
それは、朱墨しゅずみろす丸硯まるすずりだった。萩の簀戸すどを突き破った硯は、箪笥たんすにぶつかって、彼女の坐っている側におどった。
夕顔の門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
感激した時の癖として、園はその樹を見るごとに、右手を鍵形に折り曲げて頭の上にさしかざし、二度三度物を打つように烈しく振りろすのだった。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
肥桶こいたごを台にしてぶらりと下がる途端拙はわざと腕をぐにゃりとろしてやりやしたので作蔵君は首を縊りそこなってまごまごしておりやす。
琴のそら音 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
園は大通りの暗闇の中に立って真黒な地面を見つめながら、右の腕をはげしく三度振りろした。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
三枚にろして火の上できます。ねぎを油でいためておいて別に美味しい煮汁をこしらえて鯛と葱を
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
大戸がりて——
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たなの上から、うすぺらな赤い石鹸を取りろして、水のなかにちょっとひたしたと思ったら、それなり余の顔をまんべんなく一応撫で廻わした。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
時計はもう五時に近い。山のなかばはたださえ薄暗くなる時分だ。ひゅうひゅうと絶間なく吹きろす風は、吹くたびに、黒い夜を遠い国から持ってくる。
二百十日 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その時二人の頭の上にさがっている電灯がぱっといた。先刻さっき取次に出た書生がそっとへやの中へ入って来て、音のしないようにブラインドをろして、また無言のまま出て行った。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
御常はまた飯櫃おはち御菜おかず這入はいっている戸棚に、いつでも錠をろした。たまに実家の父が訪ねて来ると、きっと蕎麦そばを取り寄せて食わせた。その時は彼女も健三も同じものを食った。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
役所やくしよではようかなかつた。ふでつて頬杖ほゝづゑいたまゝなにかんがへた。時々とき/″\不必要ふひつえうすみみだりにろした。烟草たばこ無暗むやみんだ。さうしては、おもしたやう窓硝子まどがらすとほしてそとながめた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
かねて差し込んであるかぎをかちゃりと回すと、じょうは苦もなくりた。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「もう大丈夫だいぢやうぶでせう」とこたへた。二人ふたり氷嚢こほりぶくろひたひからろした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)