)” の例文
「暇なく上下すればそのが疲れやすい。一連では念仏を申し、一連では数をとって積る処の数を弟子にとれば緒が休まって疲れません」
法然行伝 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「毎朝だからな、毎朝穿かせちゃ、やれねえぜ。覚えときな、英さん」と、いちど結んだをまた解いて、穿き方を教えてくれた。
「呆れましたな。旦那のような変り種はへそ切って初めてでございますよ。まさかあっし共をからかうんじゃござんすまいね」
ついにゴンゴラ総指揮官の勘忍袋かんにんぶくろが切れ、警衛隊に命令して、金博士をオムスク酒場から引き立て、官邸へ連れて来させたのであった。
それぞれ、旗さしものを側近く引き寄せ、かぶとをしめて、馬の腹帯をかたくして、出陣の命令を今かいまかと待ちわびているのであった。
が、勘忍かんにんぶくろのが切れた。じぶんは、どうなってもよかった。乱心といわれても、切腹でも、そんなことは、かまっていられなかった。
元禄十三年 (新字新仮名) / 林不忘(著)
次にスサノヲの命が天照らす大神の左の御髮にいておいでになつた大きな勾玉まがたまの澤山ついている玉のをおけになつて
⦅えい、くそ、なんて物分りの悪い婆あだろう!⦆とチチコフは、そろそろ堪忍袋のを切らせながら、肚の中で呟やいた。
大賽銭箱だいさいせんばこの前に立つと、赤い紙入を出して、小銭をつまんでポイと投げ、鈴のに心持触れて、双掌もろてを合せたまま、ひた拝みに拝み入るのでした。
あれほど犬に対してしんぼうのいい親方も、一度ならずわたしにはかんにんのを切ったこともあった。かれはさけんだ。
南方諸島において、最初にこの美しい宝の貝をに貫いて頸に掛けていたのは、君々すなわち厳粛なる宗教女性であった。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
驚破すわといふ時、綿わたすじ射切いきつたら、胸に不及およばず咽喉のんど不及およばずたまえて媼はただ一個いっこ朽木くちきの像にならうも知れぬ。
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
もし仮名遣、手爾波抔てにはなどを学ばんと思はば俳書にかずして普通の和書に就け。『古言梯こげんてい』『ことば八千衢やちまた』『ことばたま
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
例えば縦縞の着物に対して横縞の帯を用いるとか、下駄げた木目もくめまたは塗り方に縦縞が表われているときに横縞を用いるとかいうような場合である。
「いき」の構造 (新字新仮名) / 九鬼周造(著)
をもって中央にて三に結成し、その上に飯櫃めしびつふたを載せ、三人各三方より相向かいて座し、おのおの隻手あるいは両手をもって櫃の蓋を緩くおさえ
妖怪玄談 (新字新仮名) / 井上円了(著)
それに付けたは街まで引っ張り置き、誰でもこれを引いて鳴らすを得、その緒長きは一パラサンに達すとある。
くずの材料は朝鮮から入るといいますが、にするわざは掛川で為されます。昔ははかまかみしも素地きじとして主に織られましたが、今はほとんど皆襖地ふすまじであります。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
草鞋わらじの新しいのが、上り口にある。さっき婆さんがら下げてたのは、大方これだろう。自分は素足すあしの上へ草鞋を穿いた。かかとへ通してぐっと引くと
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
んでもその社には錆びた二つ三つのはさみを置き、そのがんほどきに切ったらしい、女の黒髪の束にしたのを数多たくさんかねのに結びつけてあったのを憶えている。
宇賀長者物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
産婆は自分の世話をするおしまいの湯をつかわせて、涼風の吹く窓先に赤子を据え、剃刀かみそりへそを切って、米粒と一緒にそれを紙に包んで、そこにおくと
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
その深い罪のお詫びは、仮令たとえ、このはかない玉のが絶えましてもキットお側に付添うて致します。……お別れしたくない……子供の事を呉々くれぐれもお願いします。
キチガイ地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
今も向こうで聞いておれば、白萩様をむごたらしい松葉いぶしになされるとか。松葉燻しもよいけれど、もしもその時白萩様のたまが切れたらどうなされます。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
伝馬への本船からのへそのごとき役を努めていた綱は今一方はずされ、どちらも延ばされた。波田はすぐに、船首の方の綱をも、うまくはずすことができた。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
鶴見がなつかしがるのは、これがその正体である。明治八年三月十五日出生隼男と明記した包の中から干乾ひからびて黒褐色を呈したものがあらわれる。へそである。
何でも古い黄八丈きはちじょうの一つ身にくるんだまま、の切れた女の草履ぞうりを枕に、捨ててあったと云う事です。
捨児 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
この世の乱れも近づいたようにおびえていた平安朝末期の人の心もいつかゆるんで、再び昔ののびやかな気分にかえると、そのゆるんだたまを更にゆるめるように
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
取調べの町人は情けある人とて一夜の猶予ゆうよを与えられ候まま、父に手あつく仕えし上、暁け方眠りにつくを待ちてたまち、返す刀にて自らも冥途めいどの旅に上り候。
手槍を取って庭に降り立つとき、数馬は草鞋わらじ男結おとこむすびにして、余った緒を小刀で切って捨てた。
阿部一族 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
よし、とばかり刀のをとってたすきにかけ、はかま股立ももだちを取りながら先方の浪人を見ると、その身構えがまるで素人しろうとだ。掛け声勇ましくこちらは飛び込んで行った。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
それは大沼枕山の遺族を訪問した時、わたくしは特に許されて枕山が誕生の時のへそ書を見た。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
彼女は宿六とマダムの交際の真相については露いささかも知らないのだから、貧苦に追われて流浪十幾年、積年のうらみ、重なる無礼、軽蔑、カンニンブクロのが切れた。
オモチャ箱 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
見ず知らずの連中とのへそ切って初めての交際やのおかげで、たちまち頭がカーッとなった。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
お蘭の玉のを、いつあの白痴がいて行ったか、自分が婿を貰い、世の常の女の定道に入るとすれば、この世のどこかの隅であの白痴がついくずれてしまうようないたましさを
みちのく (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
練習帆船ことまるに乗り組んでいたとき、私たちの教官であった、中川倉吉なかがわくらきち先生からきいた、先生の体験談で、私が、腹のそこからかんげきした、一生わすれられない話である。
無人島に生きる十六人 (新字新仮名) / 須川邦彦(著)
あやしいと云うので、床板ゆかいたをめくって見るとさまざまの物をかくしてあった。訴人そにんの男の云う通り緋のでくくった袴も、長刀も出て来た。その外に、一つの古い仮面が出て来た。
女強盗 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
几帳きちょうひもが動いて触れた時に、十三げんの琴のが鳴った。それによってさっきまで琴などをいていた若い女の美しい室内の生活ぶりが想像されて、源氏はますます熱していく。
源氏物語:13 明石 (新字新仮名) / 紫式部(著)
私は日記帳を茶の間の押入の用箪笥ようだんすの抽出(私以外には用のない、誰も手を触れることのない抽出)の、へそ書だの父母の古手紙だのの重ねてある一番下に突っ込んでおいて
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
おしのお長の手枕にはじまって、絵に描いた女が自分に近よって、狐がいたちほどになって、更紗の蒲団の花が淀んで、ふなが沈んで針がうずまって、下駄のが切れて女郎蜘蛛が下って
千鳥 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
已に覚期かくごをした様であったが、年と共にたまあらたに元気づき、わずかに病床を離るゝと直ぐ例の灌水かんすいをはじめ、例の細字さいじの手紙、著書の巻首かんしゅに入る可き「千代かけて」の歌を十三枚
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
人から聴けばへそせんじ、牛蒡ごぼうの種もいいと聴いて摺鉢すりばちでゴシゴシとつぶした。
競馬 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
柏原富次は鞄と傘と、の切れた泥下駄をいっしょくたに胸にかかえていた。
白い壁 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
女の子は赤い草履ぞうり、男の子は白い緒の草履、お弁当はみんな揃えてお寿司すしの折詰を学校からあつらえ、お菓子や飲料のみもののことまで世話人をめたところが、あいにくその日は朝から曇って
将士しょうしは、ひたいから流れてかぶとのしのびのにつららになったあせをヒキもぎり、がりがりかんでかわきをとめながら戦った。食うものがすくないので、しかたなく馬をほふってたべねばならなくなった。
三両清兵衛と名馬朝月 (新字新仮名) / 安藤盛(著)
ただ一枚の写真だけが私の生命のだったのです。
悪魔の聖壇 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
「しかし勝ってかぶとを締めるんです」
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
たまの惜しき盛りに 立つきり
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
故郷ふるさとほぞに泣くとしの暮
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
ほぞ切っての大奮発。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
そして、静かに、がった烏帽子えぼしをむすび直すあいだに、薄い自嘲と度胸をすえた太々ふてぶてしさとを、どこやらにたたえていた。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
与八も奇異なる思いをしながら、それをほどいて見ると、守り袋が一つと、涎掛よだれかけが一枚ありました。その守り袋を開いて見るとへそです。
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)