“素地”のいろいろな読み方と例文
読み方(ふりがな)割合
したじ30.8%
きじ26.9%
そじ23.1%
きぢ11.5%
しらき3.8%
そち3.8%
(注)作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
彼の熱意が孫権をして翻然ほんぜんと心機一転させたものか、或いはすでに孫権の腹中に、魏を見捨てる素地したじができていたに依るものであろうか。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しいてあるといえばあるともいえましょう。一部の陰謀や火ツケで出来るものではありません。全土に素地したじができているから始まったことなのです。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
平生から彼を軽蔑けいべつする事において、何の容赦も加えなかった津田には、またそういう素地したじを作っておいた自覚が充分あった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
特に今出来るもので美しいのは「飯鉢はんばち」と呼んでいるもので、素地きじの上に白土をかけ、これに緑と飴色とのくすりを垂らします。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
顔や肌の素地きじ天性うまれつきだから、どんなに磨いたところで、しれていますが、しかし心の化粧は、すればするほど美しくなるのです。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
あまり濃く紅をつけたり、顔一面に厚く白粉を塗ったがために、せっかくの素地きじがかくれて、まるでお化けのように見えることがあります。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
五寸余りの素焼の泥人形——鼻の形、脣の形、それから、白い、大きい眼が、薄気味悪く剥き出していて、頭髪さえ描いてない、素地そじそのままの、泥人形であった。
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
島に事触の渡って行ったことは考えにくいが、或いは別に海上の宣伝方法があったものか、またはこれを招致するに適するような、特殊な信仰の素地そじがあったのか。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
陶戸すえどの中の久米一は、素地そじを寄せて一心不乱にへらをとった。ミリ、ミリ、彼の骨が鳴って、へらの先から血がしたたりはしまいかと思われる。
増長天王 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこで素地きぢを洗ひ出す必要があつたのであらうが、當今の芝居で見るやうな、場違ひの、エロつぽいものも澤山あつたものと思へる。
凡愚姐御考 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
村とはいふものの、途方もなく惨めな部落だつたので! 素地きぢのままで何も塗つてない丸太小屋が十軒ほど、そこここと原つぱのまんなかに剥き出しに突つ立つてゐたきりぢや。
下女が善意に私をかばうて一言何か口を挟むと母が顔を曇らせぷり/\怒つて、「いゝや、あの子は産れ落ちるとから色が黒かつたい。あれを見さんせ、くびのまはりと来ちや、まるきり墨を流したやうなもん。日に焼けたんでも、あかでもなうて、素地きぢから黒いんや」と、なさけ容赦もなく言ひ放つた。
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
木も素地しらきよりは黒で塗つたものが多く、一時の日本橋、柳橋、両国橋、永代橋など、皆これでないものはない。
東京の風俗 (新字旧仮名) / 木村荘八(著)
十歳の神童になる代りに、百代の英雄音楽家としての素地そちを築き上げることが出来たのである。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
音楽家としての素養そようが、一朝一夕には得難えがたいことを知ると、ライプチッヒ大学の音楽学生として、良師ワイリングの下に六か月の大精進だいしょうじんを続け、和声学と対位法の大体を修得して、自分の翼で飛ぶ素地そちを作ったのである。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)