素地そじ)” の例文
陶戸すえどの中の久米一は、素地そじを寄せて一心不乱にへらをとった。ミリ、ミリ、彼の骨が鳴って、へらの先から血がしたたりはしまいかと思われる。
増長天王 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
後に鈴木君が、社会党随一の財政経済通になったのも、四十年前のこの修業が素地そじになったのではあるまいか。
誤ったにもせよなんらかの実験、なんらかの推理のあらかじめ素地そじをなしたものが、必ずあったはずと思う。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
五寸余りの素焼の泥人形——鼻の形、脣の形、それから、白い、大きい眼が、薄気味悪く剥き出していて、頭髪さえ描いてない、素地そじそのままの、泥人形であった。
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
島に事触の渡って行ったことは考えにくいが、或いは別に海上の宣伝方法があったものか、またはこれを招致するに適するような、特殊な信仰の素地そじがあったのか。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
天下併呑へいどんの競望と素地そじとを、秀吉に与えてしまったものだ、と説いている。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
常識なり信仰素地そじなりがあったものと見なければならぬ。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
いわば天孫降臨説の素地そじを準備していたのである。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)