)” の例文
「あれは、ただとおくからながめているものです。けっして、あのはなみずうえちてきたとてべてはなりません。」とおしえました。
赤い魚と子供 (新字新仮名) / 小川未明(著)
すると其時そのとき夕刊ゆふかん紙面しめんちてゐた外光ぐわいくわうが、突然とつぜん電燈でんとうひかりかはつて、すりわる何欄なにらんかの活字くわつじ意外いぐわいくらゐあざやかわたくしまへうかんでた。
蜜柑 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
そのうつくしいそらうばはれてゐたを、ふと一ぽん小松こまつうへすと、わたし不思議ふしぎなものでも見付みつけたやうに、しばらくそれにらした。
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
もりおくまいには、毎日まいにち木枯こがらしがいて、ちつくすと、やがてふかゆきもりをもたにをもうずめつくすようになりました。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
しかしわたくしは三かわらしいものをわたったおぼえはない……閻魔様えんまさまらしいものにった様子ようすもない……なになにやらさっぱりちない。
もと直立ちよくりつしてゐたもので、たかさは七八十尺しちはちじつしやくもあつたものですが、二百年程前にひやくねんほどまへかみなりちたゝめにれたのだといふことでありました。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
めてそんなものが一ぷくでもあつたらとおもつた。けれどもそれ自分じぶん呼吸こきふする空氣くうきとゞくうちには、ちてゐないものとあきらめてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
さうしてきまつた理窟りくつ反覆はんぷくしてかせてるうちにはころりとちてしまふといふ呼吸こきふ内儀かみさんはつてるのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
くてぞありける。あゝ、何時いつぞ、てんよりほしひとつ、はたとちて、たまごごといしとなり、水上みなかみかたよりしてカラカラとながる。
妙齢 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
しかししつ比較的ひかくてきひろつくられるのが通常つうじようであるから、みぎのようなものゝちてさうな場所ばしよからとほざかることも出來できるであらう。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
ゆうべの夢見ゆめみわすれられぬであろう。葉隠はがくれにちょいとのぞいた青蛙あおがえるは、いまにもちかかった三角頭かくとうに、陽射ひざしをまばゆくけていた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
くだるわ、/\、/\。ながれは何處どこまでつてもきないのかしら?『いままでにわたしいくマイルちたかしら?』とあいちやんは聲高こわだかひました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
大臣だいじんの子は小さなかばの木の下を通るとき、その大きな青い帽子ぼうしとしました。そして、あわててひろってまた一生けんめいに走りました。
『ボズさん!』とぼくおもはず涙聲なみだごゑんだ。きみ狂氣きちがひ眞似まねをするとたまふか。ぼくじつ滿眼まんがんなんだつるにかした。(畧)
都の友へ、B生より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
七十幾つとか言つても、まだ飛んだ達者な婆さんでしたが、夜更よふけに急にお産があるといふ使で出かけたつきり、堀へちて死んでゐたのを
翌日日暮れに停車場へ急ぐとちゅうで、自分はいねを拾ってる、そぼろなひとりの老婆ろうばを見かけた。見るとどうも新兵衛の女房らしい。
落穂 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
たずねて村役人むらやくにんいえへいくと、あらわれたのは、はなさきちかかるように眼鏡めがねをかけた老人ろうじんでしたので、盗人ぬすびとたちはまず安心あんしんしました。
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
かきはまたなしきりとちがつて、にぎやかなで、とうさんがあそびにたびなにかしらあつめたいやうなものがしたちてました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
こういわれて、おとこはこなかあたま突込つっこんだ途端とたんに、ガタンとふたおとしたので、小児こどもあたまはころりととれて、あか林檎りんごなかちました。
りにつてやつちるなんてよつぽどうんわるいや‥‥」と、一人ひとりはまたそれが自分じぶんでなかつたこと祝福しゆくふくするやうにつた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
反抗がいやなら嫌で、もっといていればよかったろうと思われたに違いない。暴風も一過すれば必ず収まるものである。
「どこかふくの下にでもまぎれこんではおらんかな、え? ひょっとしたら、長靴ながぐつの中にナイフがちてるかも知れんぞ、え?」
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
電話の内容は、首領を驚かせるに充分だったと見えて、彼は右手で机をおさえ、辛うじてくずちようとする全身をささえている様子だった。
人造人間殺害事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そしてのこつた四分しぶんさんあめからえだえだからみきながれて、徐々じよ/\地面じめんち、そこにあるられるのです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
そんなおしゃべりをしていますと、突然とつぜん空中くうちゅうでポンポンとおとがして、二がんきずついて水草みずくさあいだちてに、あたりのみずあかそまりました。
のびやかで、ひっぱりげるような調子ちようしが、あるてんまでつて、ぴったりとちつきよくをさまつてゐるではありませんか。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
その翌日よくじつから、わたくしあさ東雲しのゝめ薄暗うすくら時分じぶんから、ゆふべ星影ほしかげうみつるころまで、眞黒まつくろになつて自動鐵檻車じどうてつおりのくるま製造せいぞう從事じゆうじした。
滞留のあまりに久しければ、さまざまの係累けいるいもやあらんと、相沢に問いしに、さることなしと聞きてちいたりとのたもう。
舞姫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「だけど、あの子はすぐに氷のれ目にでもっこちるぐらいのとこだろうな。」と、ガンは心ぼそくなってきました。
「それだからね、はねよわいものやからだ壯健たつしやでないものは、みんな途中とちうで、かわいさうにうみちてんでしまふのよ」
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
したにゐたひとつなをひきそこなつて、つながぷっつりとれて、うんわるくもしたにあつたかなへうへちてまはしました。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
なげくべきことならずと嫣然につこみてしづかに取出とりいだ料紙りやうしすゞりすみすりながして筆先ふでさきあらためつ、がすふみれ/\がちて明日あす記念かたみ名殘なごり名筆めいひつ
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
国王や家来けらいたちは心配しんぱいしまして、もし高いところからちて怪我けがでもされるとたいへんだというので、いろいろいってきかせましたが、王子は平気でした。
強い賢い王様の話 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
ごみと一しよあななかちてたのを、博士はかせたはむれに取出とりだされたので、これは一ぱい頂戴てうだいしたと、一どうクツ/\わらひ。
博士は、ちつきをとりもどしていた。科学者かがくしゃらしく、ちみつに頭を働かし、このふしぎな透明人間とうめいにんげん秘密ひみつをできるかぎりさぐりだしてやろうと考えていた。
秋深うして萬山ばんざんきばみつ。枕をそばだつれば野に悲しき聲す。あはれ鐘の音、わづらひの胸にもの思へとや、この世ならぬひゞきを、われいかにきくべき。
清見寺の鐘声 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
気楽きらくなるものは文学者ぶんがくしやなり、うらやましきもの文学者ぶんがくしやなり、接待せつたいさけまぬ者も文学者ぶんがくしやたらん事をほつし、ちたるをひろはぬ者も文学者ぶんがくしやたるをねがふべし。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
しかし、長陣のやつれと、苦慮の憔悴しょうすいは、くちのまわりのひげにも、くぼんでいる眼にもおおい得ないものがある。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
武石は、突然、その懸命な声に、自分が悪いことをしているような感じを抱かせられ、窓からすべちた。
渦巻ける烏の群 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
彼はふと此の頃めっきりけた母の顔を眼に浮べ、まあこれでこんどの事はあたりさわりのないように一先ずきそうな事に思わずほっとしていたものの
菜穂子 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
奴隷は眼脂めやにかたまった逆睫さかまつげをしばたたくと、大きく口を開いて背を延ばした。弓は彼の肩からすべちた。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
りのこつなさへせきとほざけられて、なにかしらつたはなしのありさうなのを、玄竹げんちくがかりにおもひつゝ、かぬこし無理むりからけて、天王寺屋てんわうじや米屋よねや
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
うむその沈着おちついていて気性が高くて、まだ入用ならば学問が深くて腕が確かで男前がよくて品行が正しくて、ああ疲労くたびれた、どこに一箇所ちというものがない若者だ。
書記官 (新字新仮名) / 川上眉山(著)
私はそのあいだに部屋片附けたり、寝台綺麗きれいに直したりして、床の上にってた光子さんの足袋ひろて、——帰りしなに光子さんは私の足袋穿いて行きなさったのんです。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
じんの崖上わづかに一条のささたのみてぢし所あり、或は左右両岸の大岩すであしみ、前面の危石まさに頭上にきたらんとする所あり、一行おおむね多少の負傷をかうむらざるはなし。
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
是等の中には煮焚にたきの爲、温暖おんだんを取らん爲、又は屋内おくないを照さん爲、故意に焚き火せし跡も有るべけれど、火災くわさいの爲屋根のちたる跡も有らん。屋根の事は次項に記すべし。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
それ、ひめせた。おゝ、あのやうなかるあしでは、いつまでむとも、かた石道いしみちるまいわい。戀人こひびとは、なつかぜたはむあそぶあのらちもない絲遊かげろふのッかっても、ちぬであらう。
「私は夜の目もち/\寝ずに看病しているんでございますよ。婆とは何事でしょう?」
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
やまたか白木綿花しらゆふはなちたぎつたぎ河内かふちれどかぬかも 〔巻六・九〇九〕 笠金村
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
藻岩山さうがんざん紫色しゝよくになつてえるだらうとおもひますの、いまころはね、そして落葉松からまつ黄色きいろくなつて、もうちかけてるときですわね。わたしあの、藻岩山さうがんざんに三のぼつたことがあるんですわ。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)