)” の例文
またうしてられる……じつ一刻いつこくはやく、娑婆しやば連出つれだすために、おまへかほたらばとき! だんりるなぞは間弛まだるツこい。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
田舎にれてきた自分らがこの中で暮らすことはきまりの悪い恥ずかしいことであると、二人の女は車からりるのに躊躇ちゅうちょさえした。
源氏物語:19 薄雲 (新字新仮名) / 紫式部(著)
そのひかりの中にかすかに人らしい姿すがたえたので、保名やすなはほっとして、いたあしをひきずりひきずり、岩角いわかどをたどってりて行きますと
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
女房も女房なり亭主も亭主也、男女同権也どだんじようけんなり五穀豊穣也ごこくほうじようなり、三銭均一也せんきんいつなり。これで女房が車からりて、アイと駄賃だちんを亭主に渡せば完璧々々くわんぺき/\/\
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
日本人は昨夜蒸気車に乗り車中安眠するを得ず大に疲れたるに、此処ここに着して暫時も休息せしめず車よりりてただちに又船に乗らしむ。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
宗助そうすけ二人ふたり七條しちでうまで見送みおくつて、汽車きしやまでへやなか這入はいつて、わざと陽氣やうきはなしをした。プラツトフオームへりたときまどうちから
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
秘密のボタンを今押しましたから。そら床もろとも、りだしたでしょう。しっかり卓子につかまっていなさいといったのは、ここなんだ。
私が勢のいゝ返事をすると、おふさは子供のやうな笑顏をしてりて行つたが、それから大分つても容易に門口かどぐちりんの音がせぬ。
金魚 (旧字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
電車でんしゃって、こしろすと、ひとりごとをしました。そとくらくなって、ただまち燈火あかりほしのように、きらきらしているばかりです。
夕焼けがうすれて (新字新仮名) / 小川未明(著)
青年は橋の一にたたずみて流れのすそを見ろしぬ。くれないに染めでしかえでの葉末にる露は朝日を受けねど空の光を映して玉のごとし。
わかれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
かれはよろめいたが、また座に直り、しばらくして、今度は十分に警戒しながら、先刻の問いを繰返した。今度は棒がりて来なかった。
悟浄出世 (新字新仮名) / 中島敦(著)
私は懐中電燈を置くと、わざと座敷の中から眼をらして何んにも見なかったように、さも忙しそうに、早々と崖をりはじめた。
腐った蜉蝣 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
餓ゑた時程人のかしこくなる時はない。渠は力の抜けた足を急がせて、支庁坂をりきつたが、左に曲ると両側の軒燈ともしび明るい真砂町の通衢とほり
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
わたしぢやない!おまへだ!——でもわたしぢやない、甚公じんこうりてくんだ——さァ甚公じんこう旦那だんなつたよ、おまへ煙突えんとつりてけッて!
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
丁度土手伝いにダラ/\りに掛ると、雨はポツリ/\降って来て、少したつとハラ/\/\と烈しく降出しそうな気色けしきでございます。
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
船頭せんどうくら小屋こやをがらつとけてまたがらつとぢた。おつぎはしばらつててそれからそく/\とふねつないだあたりへりた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
どうして、この絶壁ぜっぺきりるかと見ていると、宮内は、さすがに武士ぶしだけに、いざとなると、おそろしいほど胆気たんきがすわっている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「土蔵のまえが急にぱっと明るくなりまして、かみなり様がおりになったようでしたから、なにか間違いでもないかと存じまして……」
半七捕物帳:34 雷獣と蛇 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
梯子段はしごだんの二三段を一躍ひととびに駈上かけあがつて人込ひとごみの中に割込わりこむと、床板ゆかいたなゝめになつた低い屋根裏やねうら大向おほむかうは大きな船の底へでもりたやうな心持こゝろもち
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
其内そのうちに和田三造さんと大隅さんとが平岡氏夫婦を案内して馬車をりるのが見えた。自分達もレスタウランを出て皆さんと一緒に成つた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
だが梯子段はしごだんりるには下りたが、登るのはよほどの苦痛で咳入せきいり、それから横になって間もなく他界の人となってしまった。
松井須磨子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
戦いが止むとどうなるかというと、馬からりて遊牧の民となる。もしくは農業の民となる。うえると直ちに馬に跨り賊となる。
東亜の平和を論ず (新字新仮名) / 大隈重信(著)
庫裡くりの方では、何か事があるらしく、納所坊主なつしよばうずや寺男なぞが忙しさうにして働いてゐるのを、横目に見つゝ、二人は石段のくちに立つた。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
木立生ひ繁るをかは、岸までりて、靜かな水の中へつづく。薄暗うすぐらい水のなかば緑葉りよくえふを、まつさをなまたのなかば中空なかぞらの雲をゆすぶる。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
どうもこれは奇態だと思って馬からりてそこへ行って尋ねますとこれはアルチュ・ラマのテントではない、その奥さんの親の家だという。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
先づ、今を去る十五六年前、欧洲大戦の幕がりた、そのすぐあとの、陸にも海にもまだ血腥ちなまぐさい印象の数々を残してる時代を思ひ出して下さい。
けむり(ラヂオ物語) (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
僕は前に穂高山はもちろん、やりたけにも登っていましたから、朝霧のりた梓川の谷を案内者もつれずに登ってゆきました。
河童 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
白絣しろがすりを着てメリンスの帯をめた子は、それにも頓着せず、急いで川のしたの方にりて行つた。其処そこにはもう十六になる兄が先に行つて居た。
(新字旧仮名) / 田山花袋(著)
馬車のうしろには、乗客が乗りりするとき足を掛ける小さい板がついていた。松次郎はそれにうまくびついて、うしろ向きに腰をかけた。
最後の胡弓弾き (新字新仮名) / 新美南吉(著)
不測の運命に臨んでいる身と思いながら段〻りてまいりまして、そうしてようやく午後の六時頃に幾何いくらか危険の少いところまで下りて来ました。
幻談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
王子はやはり高いところへあがるのがすきでしたが、ちゃんとそのみちをこしらえてからあがるので、少しもあぶないことはありませんでした。
強い賢い王様の話 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
(忙がわし気に戸口にき、戸を開け、外に向きて呼ぶ。)おい。マッシャ。(間。梯子はしごく足音留る。)マッシャ。
ト勇み立ちて、黄金丸まづ阿駒の死骸なきがらを調理すれば、鷲郎はまた庭にり立ち、青竹を拾ひ来りて、罠の用意にぞ掛りける。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
そして水が退くと一緒に、いつの間にかまたもとの位置に帰つてゐる。丁度鳰鳥かいつぶりの浮巣が潮の差引さしひきにつれてあがつたりりたりするやうな工合に……
右手向うの小高い丘の上から、銃を片手に提げ、片手に剣鞘を握って、斥候がりて来た。彼は、銃が重くって、手が伸びているようだった。
渦巻ける烏の群 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
(塔を眺め)そろそろ日が暮れると見えて、塔の上の湿った影が、だんだん下へりて来る。あの影の下りきらぬ中に、私は機を織らねばならぬ。
レモンの花の咲く丘へ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ほばしら、電柱、五月鯉さつきのこいさおなどになるのが、奇麗に下枝をろされ、殆んど本末の太さの差もなく、矗々すくすくと天を刺して居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
土堤下から畑のくろに沿うて善ニョムさんは、ヨロつく足を踏みしめ上ってくると、やがて麦畑の隅へ、ドサリともっころした。——ヤレ、ヤレ——
麦の芽 (新字新仮名) / 徳永直(著)
浅井は、りものなどのした時、蒼い顔をしてふさぎ込んでいるお増に言ったが、お増はやはりその気になれずにいた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
ここに、御船に入れたる楯を取りて、り立ちたまひき。かれ其地そこに號けて楯津たてづといふ。今には日下くさか蓼津たでづといふ。
これを終へてから、私はまだ暫くぐづ/\してゐた。露がりたので花の群はとりわけ甘い香を放つて、非常にあたゝかくなごやかな、こゝろよい夕暮であつた。
自分から見ると殆ど理由のない恐怖だが、あの刹那あの崖の上に立っている松の木からたれちていたのだろう。
彼は誰を殺したか (新字新仮名) / 浜尾四郎(著)
きやくさまは此處こゝにとしめしたるまゝ樓婢ろうひいそきたり障子しやうじそと暫時しばしたゆたひしがつべきことならずと
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「なんぞもんでもしたんかいな」いうと、黙って首振って、「あて、もう死ぬ、死ぬ、……助けてほしい」と、ほんまに消えてしまいそうな虫の息で
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
さうして其が乾くと、谷の澱みに持ちりて浸す。浸してはさらし、晒しては水に潰でた幾日の後、筵の上で槌の音高くこも/″\、交々こも/″\と叩き柔らげた。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
向島の言問ことといの手前を堤下どてしたりて、うし御前ごぜんの鳥居前を小半丁こはんちょうも行くと左手に少し引込んで黄蘗おうばくの禅寺がある。
伴うて間毎々々まごと/\にはり向の物置部屋へ案内したり爰には數十人の與力よりき同心どうしんばんをなし言語同斷の無禮を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「みよ子はどうしてぢつとしてをるのぢや、早うりて来んと、又お祖母ばああんに叱られるぢやないか?」
父の帰宅 (新字旧仮名) / 小寺菊子(著)
三人が村を出た時は、まだ河の流れに朝霧がかかって、河原かわらの石の上には霜が真白まっしろりていました。
三人の百姓 (新字新仮名) / 秋田雨雀(著)
モミの木は、どこかの中庭について、ほかの木といっしょに車からろされたとき、はじめて、われにかえりました。ちょうどそのとき、そばで人の声がしました。