)” の例文
「もうあなた様、手のつけられぬ乱暴者でござりましての、伜があんな人間とつきうたため、わたしどもまで、どれほど泣きを見たことやら」
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
二つのものが純一無雑の清浄界しょうじょうかいにぴたりとうたとき——以太利亜の空はおのずから明けて、以太利亜の日は自から出る。
幻影の盾 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
故に夫婦家にるは人間の幸福快楽なりというといえども、本来この夫婦は二個の他人のあいうたるものにして、その心はともかくも、身の有様ありさまの同じかるべきにあらず。
日本男子論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
そでうただけのえにしでも、一生の生き死にを、一緒にせねばならぬこともありまさあね——わたしが、お前さんが、どんな大望を持っているか、それを知って、かずならぬ身でも
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
Y子さんはモデル女の中では美人かも分れしませんけど、光子さんの方がもっと美人で、その絵エの感じにうてるとしましたら、光子さんモデルにしても差支さしつかいないではあれしませんか。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
昔孔子老耼ろうたんを見て帰り三日かたらず、弟子問うて曰く、夫子ふうし老耼を見て何をただせしか、孔子曰く、われ今ここにおいて竜を見たり、竜はうて体を成し散じて章を成す、雲気に乗じて陰陽は養わる
彼女は始終、自分を外がわにおいて、良人と里方の者との融和を見ながら、ただきょううているような姿であった。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「僕リヽーとは屁までうた仲や」などゝ、嫌味いやみめかして云つたものだが、十年の間も一緒に暮らしてゐたとすれば、たとひ一匹の猫であつても、因縁の深いものがあるので、考へやうでは
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
しかし縫之助秀正がいま見たものは、昨日までは至尊しそんと仰がれた君と三人の妃が、わずかにし入る日光の下に相擁あいようして八寒の獄をいたわりうている姿だった。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)