)” の例文
杉の葉でない、ざさ笠印かさじるしとしたまぎれない菊池方の兵が、すでに、味方同士で激闘しているのが、そこかしこに見られ出している。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
茶色ちゃいろ表紙ひょうしに青いとじ糸を使い、中のかみ日本紙にほんし片面かためんだけにをすったのを二つりにしてかさねとじた、純日本式じゅんにほんしき読本とくほんでした。
くまと車掌 (新字新仮名) / 木内高音(著)
ひだりれたところに応接室おうせつしつ喫煙室きつえんしつかといふやうな部屋へやまどすこしあいてゐて人影ひとかげしてゐたが、そこをぎると玄関げんかんがあつた。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
あるとし台風たいふうおそったとき、あやうくこぎになろうとしたのを、あくまで大地だいちにしがみついたため、片枝かたえだられてしまいました。
曠野 (新字新仮名) / 小川未明(著)
かれはてぬぐいに包んださかなのばこを後生大事に片手にぶらさげ、昼のごとく明るい月の町をひとりたんぼ道へさしかかった。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
こんなものはいっていたろうかと思って、いそいで出してみましたら、それは四つにったはがきぐらいの大さのみどりいろの紙でした。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
そしてそれが水上すいじょうわたってむこうへえたとおもうと、幾匹いくひきかの猟犬りょうけん水草みずくさの中にんでて、くさすすんできました。
鉢形鍋形の土噐に外面のくすぶりたる物有る事は前にも云ひしが、貝塚發見はつけんの哺乳動物の長骨中ちやうこつちうには中間より二つにくだきたる物少からず。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
わたしたちはとぼとぼほねって歩いた。目を開けてはいられなかった。じくじくぬれた着物がこおりついたまま歩いて行った。
かまおもしをしてしまうと、こんどはまた、おにわからえだをたくさんあつめてて、ちいさくっては、おかまの下にれました。
山姥の話 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
間もなくその足音は、勘太郎の隠れている天井の下の炉端に近づいた。そしてどさりと炉端にあぐらをかく音がする。木のえだる音がする。
鬼退治 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
家にいる時は、まだわたしは短い上着を着て、えりのカラーをしていたのだが、実はそれがいやでならなかったのである。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
かわつつみたとき、紋次郎君もんじろうくん猫柳ねこやなぎえだってかねにささげた。ささげたといっても、かねのそばにおいただけである。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
「大変なことが起ったのだよ。『れた紫陽花あじさい』君、例のマッチ箱が日本人の手に渡ったため、わが第A密偵区は遂に解散にまで来てしまった」
流線間諜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
現世的げんせてき執着しゅうじゃくなかで、わたくしにとりて、なによりもるのにほねれましたのは、まえもうすとおり矢張やはり、けた両親りょうしんたいする恩愛おんあいでございました。
更科山さらしなやまの月見んとて、かしこにまかり登りけるに、おおいなるいわにかたかけて、ひじれ造りたる堂あり。観音を据えたてまつれり。鏡台とか云う外山とやまに向いて、)
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
女の子供などは往々おうおうそのくき交互こうごに短くり、皮でつらなったまま珠数じゅずのようになし、もてあそんでいることがある。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
まちには、病院びょういん新院長しんいんちょういての種々いろいろうわさてられていた。下女げじょ醜婦しゅうふ会計かいけい喧嘩けんかをしたとか、会計かいけいはそのおんなまえひざって謝罪しゃざいしたとか、と。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
たうげうへからむら小學校せうがくかうかよ生徒せいとがありました。ちかいところからかよほか生徒せいとちがひまして、子供こどもあし毎日まいにちたうげうへからかよふのはなか/\ほねれました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
しかし一七日いちしちにちの後には、藻に頼もしい道連れができた。それはかの千枝松で、彼は烏帽子りの子であった。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
天秤棒に肩を入れ、えいやっと立てば、腰がフラ/\する。膝はぎくりとれそうに、体は顛倒ひっくりかえりそうになる。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
岸にはやなぎがその葉を水面にひたしてさざなみをつくっている。細い板橋が川のがったところにかかっている。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
真紅まっかになった面をあげて、キラリと光った眼に一生懸命の力を現わして老主人の顔を一寸見たが、たちまちにしてくずれ伏した。髪は領元えりもとからなだれて、末は乱れた。
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「ねえ、ゴテルのおばあさん、うしてあんたのほうが、あの若様わかさまより、引上ひきあげるのにほねれるんでしょうね。若様わかさまは、ちょいとのに、のぼっていらっしゃるのに!」
宗助そうすけ玄關げんくわんから下駄げたげてて、すぐにはりた。えんさき便所べんじよまがつてしてゐるので、いとゞせま崖下がけしたが、うらける半間はんげんほどところ猶更なほさら狹苦せまくるしくなつてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「そんなりでかめへんいうたんやけど、浴衣ゆかたがけでは失礼やいいなさって、着物着かえてなさったのんで、……」と、そないいいながら夫の様子うかごうてますと、かばん傍に置いて
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
柳原やなぎはら土手どてひだりれて、駕籠かごはやがて三河町かわちょうの、大銀杏おおいちょうしたへとしかかっていた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
玄竹げんちく今夜こんやつて其方そち相談さうだんしたいことがある。怜悧りこう其方そち智慧ちゑりたいのぢや。…まあ一さんかたむけよ。さかづきらせよう。』とつて、但馬守たじまのかみつてゐたさかづきした。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
左の足を乳牛にゅうぎゅうむねあたりまでさし入れ、かぎの手にった右足のひざにバケツを持たせて、かた乳牛にゅうぎゅうのわきばらにつけ、手も動かずからだも動かず、乳汁にゅうじゅうたきのようにバケツにほとばしる。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
でも肌身はだみけがしたとなれば、をつととのなかふまい。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
れよとばかり手をたたいて、がねのような声で叫んだ。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
道すがら枝折しおり々々としばはわが身見棄みすてて帰る子のため
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
りがよろしくないと思いながら申し上げてみます
源氏物語:05 若紫 (新字新仮名) / 紫式部(著)
えだれば、ぱっと
桜さく島:春のかはたれ (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
おじいさんは、ひざをって、うやうやしくあおたまてのひらうえせてながめていましたが、そのなかから、一つ、一つけはじめました。
ひすいを愛された妃 (新字新仮名) / 小川未明(著)
(おれはいま何をとりたてて考える力もない。ただあの百合はれたのだ。おれの恋は砕けたのだ。)ガドルフは思いました。
ガドルフの百合 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
あの男はからだを悪くして、もうほかの仕事ができなくなっている。かたわのからだでは食べてゆくだけにほねれるのだ。
くじに当たった男は新平しんぺいというわかい力持ちの男だった。りょうに行って穴熊あなぐまりにしたことのある男で、村でも指りの度胸のいい男であった。
鬼退治 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
もどかしく思って、ぐッと手をおしこもうとすると、ポキリとれたものがある。見ると、それはろうそくではないか。
くまと車掌 (新字新仮名) / 木内高音(著)
海蔵かいぞうさんはくるしそうにわらって、そとてゆきました。そして、みぞのふちで、かやつりぐさって、かえるをつっていました。
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
うん、なかなかおもいのでほねれたよ。だがこれですぐべては、たのしみがなくなっておもしろくないなあ。
物のいわれ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
湯浴ゆあみ、食事なども、終ってから、王進は、荘主あるじ太公たいこうに会った。頭巾ずきんをかぶり、白髯はくぜんは膝にたれ、道服に似たものを着、柔かそうな革靴かわぐつをはいている。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たぶんこんな大きな牡丹は、今日こんにち日本のどこを捜しても見つからぬであろう。もし果たしてそうだとすれば、これは日本一の牡丹であるとがみをつけてよかろう。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
段々小さくなって遠見の姿は、谷一ぱいの吹雪に消えたり見えたりして居たが、一本檜の処まで来ると、見かえりもせず東へれて、到頭とうとう見えなくなってしもうた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「よく、見てみよう」かれはじゃくを机の上からとって、それをのばしながら、机の上にあがった。
怪星ガン (新字新仮名) / 海野十三(著)
だって、格別かくべつ用事ようじもないのに、折角せっかく私達わたくしたちかしたはなえだごとったり、なにかするのですもの……。
わたくしはきっとこんどは瑞典スウェーデン北極星ほっきょくせい勲章くんしょうもらおうとおもっておるです、その勲章くんしょうこそはほね甲斐かいのあるものです。しろい十字架じかに、くろリボンのいた、それは立派りっぱです。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
製作形状せいさくけいじやう等に付ては土器の事を言ふりに細説さいせつすべけれど、大概たいがいを述ぶれば其全体ぜんたいは大なる算盤玉そろばんだまの如くにしてよこ卷煙草まきたばこのパイプをみぢかくせし如き形のぎ出し口付きたり。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
袖子そでこほうでもよくその光子みつこさんをって、ひまさえあれば一緒いっしょがみたたんだり、お手玉てだまをついたりしてあそんだものだ。そういうとき二人ふたり相手あいては、いつでもあの人形にんぎょうだった。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
みぎ白壁町しろかべちょうへのみちひだりれたために、きつねにつままれでもしたように、方角ほうがくさえもわからなくなったおりおり彼方かなた本多豊前邸ほんだぶぜんてい練塀ねりべいかげから、ひたはしりにはしってくるおんな気配けはい
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)