)” の例文
その時の君は早や中学をえようとするほどの立派な青年であった。君は一夏はお父さんを伴って来られ、一夏は君ひとりで来られた。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
一月いちげつ二十九日に保は十九歳で師範学校の業をえ、二月六日に文部省の命を受けて浜松県に赴くこととなり、母を奉じて東京を発した。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
かなり裕福な商家であったが、次男坊で肌合の変っていた三四郎は、W大学の英文科をえると、教師になって軽々かるがる諸国行脚の途についた。
寒の夜晴れ (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
そのうち復一は東京の中学をえ、家畜かちく魚類の研究に力を注いでいる関西のある湖の岸の水産所へ研究生に入ることになった。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
文政二年齢十九の時江戸に出で昌平黌に入り古賀侗庵こがとうあんに従って学び、業えて後尾張徳川家に仕え市ヶ谷の藩邸に住していた。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
男も女も学生生活をえて家庭の人になると、にわかに栄養が良くなったように色が白く、肉づきが豊かになり、体質に変化が起るものだが
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
訊問じんもんえてのち、拘留所に留置せられしが、その監倉かんそうこそは、実に演劇にて見たりし牢屋ろうやていにて、しょうの入牢せしはあたかも午前三時頃なりけり。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
敏司の家は裕福な官員ではあるが、当の男はまだ学士にもならぬ医者の卵、業をえて開業するのは先の遠い話である。
当時の選科生というものはじめなものであった、私は何だか人生の落伍者となったように感じた。学校をえてからすぐ田舎の中学校に行った。
或教授の退職の辞 (新字新仮名) / 西田幾多郎(著)
思ったよりも長篇なので、前後半日と中一日を丸潰まるつぶしにしてようやく業をえて考えて見ると、中々骨の折れた作物である。
もっとも、この青年が中学をえて大学へ進んだころには、エフィム・ペトローヴィッチも、天才的な教育者も、すでにあの世の人となっていた。
郷里の小学を終えて、出京して三輪田女学校をえ、更に英語を学ぶべく彼女はある縁によって葛城の母の家に寄寓きぐうして青山女学院に通って居た。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
石川県の西のはずれ、福井県との境近くに大聖寺だいしょうじという町がある。其処そこ錦城きんじょうという小学校があって、その学校で私は六年間の小学校生活をえた。
簪を挿した蛇 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
「嘘をけ、君が音楽学校の試験なぞを受ける資格があるものかね。第一、中学はえていないし、英語はビイルのレッテルも読めないじゃないか。」
幻影の都市 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
そういうわけで、私は数えどし十五のとき、郷里かみやまの小学校をえ、陰暦の七月十七日、つまり盆の十七日の午前一時ごろ父に連れられて家を出た。
三筋町界隈 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
その少年しょうねんは、りんごのえていたのです。からだよわいので小学校しょうがっこうえると、自分じぶん果樹園かじゅえんいとなむことにしたのです。それで、自分じぶん一人ひとりではさびしいから
子供はばかでなかった (新字新仮名) / 小川未明(著)
絵を習う順序としては梅の枝とか鳥とかをえてでないと人物は習えないものとしてあったのであります。
雷同性に富む現代女流画家 (新字新仮名) / 上村松園(著)
期間はだいたい三年ときめておりますけれど、五年でも六年でも、主人が蘭学をえるまでは辛抱します。
菊屋敷 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
小説を書くためには学校生活を遣るよりも中学をえた上直ちに上京して鴎外氏なり露伴氏なりの門下生になりたいと思うが周旋をしてくれぬか、と言って遣った。
子規居士と余 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
こんな状態がかなり長く続いてその中に私はどうにか中学をえ専門学校に通うようになりました。
歪んだ夢 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
ことに私が学校をえて「女中部屋」の住人となってからはなおさらそうであった。私はよく金を持って買い物につかわされた。「いち」の立つ日などは必ずそうであった。
梓が大学の業をえて、仏文の手紙の姫、年紀としは二ツ上の竜子に迎えられて、子爵の家をぐ頃には、地主の交替か、家主の都合か、かの隠家の木戸は釘附くぎづけ〆切しめきりとなって
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
彼は冤罪を叫んで控訴したが、家には一銭の貯えもない、空閨数年いかでか守りえるべき。
支倉事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
今年の二月、私は満二年の療養生活をへやうとする最後の時期に、M博士の所謂試験的感冒に罹つた、これを無事に切り抜ければ胸の方は全快といふ折紙がつくわけである。
風邪一束 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
一八九三年に彼女は二十六歳で物理学の学科をえ、翌年には数学をもえましたが、引続いて物理学の教室に通い、リップマン教授の指導を受けながら研究に従事しました。
キュリー夫人 (新字新仮名) / 石原純(著)
それは、うらやましさよりも、いたましさに胸がつまる。僕は、何ごとも、どっちつかずにして来て、この二年間で法科の課程を三分の一、それも不充分にしかえていない。
虚構の春 (新字新仮名) / 太宰治(著)
丁度「いろは」をえる頃からででもあったろうか、何でも大層眼を患って、光を見るとまぶしくてならぬため毎日々々戸棚の中へ入って突伏して泣いて居たことを覚えて居る。
少年時代 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
いてみると小学校をえただけで、或る工場の見習工をしていたと云うのだが、機械の名称などもよく知って居り、知らないのもぐ覚え込んでしまう珍らしい若者であった。
ことしの春に中学をえたれば、あくる年の春には美術学校の入学試験をうけんといい、その準備のために川端画学校に通いいたるに、かりそめの感冒が大いなるわざわいの根を作りて
それから新規蒔き直しに眼科の専攻をえて二年後に帰朝の途につきましたが、私はよく/\不忠に生れついていると見えまして、船が神戸に着かない中に殿様には病毒が脳に上って
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
よくよく貧乏びんぼうしたので、蝶子が小学校をえると、あわてて女中奉公じょちゅうぼうこうに出した。
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
当時大学をえたばかりで、東京から前橋の支局へ支局員として赴任してきた。
利根川の鮎 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
書記官と聞きたる綱雄は、浮世の波に漂わさるるこのあわれなるやっこと見下し、去年哲学の業をえたる学士と聞きたる辰弥は、迂遠うえん極まる空理の中に一生を葬る馬鹿者かとひそかに冷笑あざわらう。
書記官 (新字新仮名) / 川上眉山(著)
神学の課程をえますと、つづいてしゅじゅの雑務に従事しましたが、牧師長の人たちはわたしがまだ若いにもかかわらず、わたしを認めてくれまして、最後に聖職につくことを許してくれました。
長男は中学をえて、高等学校の試験を受けようとしている。この四月には末の子も小学校を卒業するのだ。自分では元気なつもりでも、身の周りを振り返ってみるとやっぱり年齢は取ったのだ。
五階の窓:03 合作の三 (新字新仮名) / 森下雨村(著)
三年間の夜学をえて免状を貰った時も、これで明日から苦しいおもいをしず、銀行がひけさえすれば楽々と手足が延ばせるという安心があったばかりだ。別に学力が増したとも考えられなかった。
果樹 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
「俺は学問をしたんだ。第四級までえたんだ。酒は飲まない。」
その二は既に高等専門の学業をもへ志さだまりて後感ずる事ありて小説を作るものなり。桜痴福地おうちふくち先生は世の変遷に経綸けいりんの志を捨て遂に操觚そうこの人となりぬ。
小説作法 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
が、生家の暮らし向きが思わしくないので、尋常じんじょう小学をえてから五条の町へ下女奉公に出たりしていた。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
余等が千歳村にして程なく、時々遊びに来る村の娘の中に、あかぬけした娘が居た。それがいさちゃんであった。彼女は高等小学をえ、裁縫さいほう稽古けいこに通った。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
最近東京に於て結成された瑪瑙座めのうざと言う新しい劇団の出資者で、大月と同じ大学をえた齢若い資産家であるが、不幸にして一人の身寄みよりをも持たなかった代りに
花束の虫 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
いま、正吉しょうきちさんは、中学ちゅうがくの二年生ねんせいで、吉雄よしおさんは、今年ことし中学ちゅうがくえてうえ学校がっこうはいったのであります。
幼き日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
苦しみもなく大学をえたような次第で、要するに何の益するところもなく、私は学生時代を回顧して、むしろ読者諸君のためにいましめとならんことを望むものである。
私の経過した学生時代 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
富美子は吉村教授の旧友の娘である、実家は宮城県亘理わたり郡の長瀞という山村の豪家で、彼女は女学校をえるとすぐ上京し、片町坂の教授の家から女子大へ通学していた。
花咲かぬリラ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
築地明石町あかしちょうに山の井光起みつおきといって、府下第一流の国手がある、年紀としはまだわかいけれども、医科大学の業をえると、ぐ一年志願兵に出て軍隊附になった、その経験のある上に
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
藤村は旧幕臣で、浜松中学校の業をえ、遠江国中泉なかいずみで小学校訓導をしていたが、外国語学校で露語生徒の入学を許し、官費を給すると聞いて、その試験を受けに来たのである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
太祖の詔、可なることはすなわち可なり、人情には遠し、これより先に洪武十五年こう皇后の崩ずるや、しんしんえん王等皆国に在り、しかれども諸王はしりてけいに至り、礼をえて還れり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
かの国にて世を終らんかなどの事をさえ打ち明くるに至りければ、妾もまたその情に撃たれつつ、御身おんみは妾と異なりて、財産家の嫡男ちゃくなんに生れ給い、一度ひとたび洋行してミシガン大学の業を
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
この旅は私ひとりでなく小諸から二人の連があった。いずれも私の家に近いところの娘達で、I、Kという連中だ。この二人は小諸の小学をえて、師範校の講習を受ける為に飯山まで行くという。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
中学一年の筈であったが、小学校をえてからは通学を中止していた。小学校の六年間も半分は欠席しており、欠席中は家に居らずに野宿して放浪し、盗み食いをしたり、乞食をしているらしかった。
犯人 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)