志保は庭へおりて菊を剪っていた。いつまでも狭霧の霽れぬ朝で、道をゆく馬の蹄の音は聞えながら、人も馬もおぼろにしか見えない。生垣のすぐ外がわを流れている小川のせせらぎも、どこか遠くから響いてくるように眠たげである、……露でしとどに手を濡らしな …
著者 | 山本周五郎 |
ジャンル | 文学 > 日本文学 > 小説 物語 |
初出 | 「菊屋敷」産報文庫、大日本雄辯會講談社、1945(昭和20)年10月 |
文字種別 | 新字新仮名 |
読書目安時間 | 約1時間14分(500文字/分) |
朗読目安時間 | 約2時間3分(300文字/分) |