)” の例文
彼女のものじしない近代女性振りも、すべて職業上の促しによるものだ。なんのことはない、訪問慣れというやつだ。それをなんだ。
メフィスト (新字新仮名) / 小山清(著)
足立さんはそれから静かに理を分けてまるで三歳児みつごに言い聞かすように談すと野郎もさすがに理に落ちたのか、私の権幕にじたのか
駅夫日記 (新字新仮名) / 白柳秀湖(著)
彼女が無言のまま、見はっている両眼は、何か願うもののようであったが、彼女はそばへ近づくのをじ恐れているような様子だった。
岡はじながらもその目から自分の目をそらす事ができないようにまともに愛子を見て見る見る耳たぶまでをまっにしていた。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
娘たちはずおずしていて、気圧けおされたささやきで答えるばかりだった。娘たちはやはり夫人を恐がっていた。前よりいっそう恐がっていた。
いと高き價を拂ひて武器を新にしたるクリストの軍隊が、旗のうしろより、遲く、ぢつゝ、まばらになりて進みゐしころ 三七—三九
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
「はあどうかあんしたんべか、お内儀かみさん」勘次かんじ怪訝けげん容子ようすをしてかつつらいやなことでもいひされるかとあんずるやうにづ/\いつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「自分の名刺がありませんので……」さう言つて、ものぢた子供のやうに微笑しながら、彼はその名刺を裏がへし、そこに
聖家族 (旧字旧仮名) / 堀辰雄(著)
のみならず井底の蛙かもしくはめくら、蛇にじずの類であろう。こうした大勢に対して死に物狂いの反撃をしてみたくなった。
探偵小説の真使命 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
物の影にじたがる癖がついている。影を自分から拡大して、そのまた拡大した影に、自分から酵母を加えて驚きたがる癖が出来たようです。
大菩薩峠:30 畜生谷の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
生業せいぎょうということにかかわっていれば、らちもないことにもおどろくばかばかしさを主人はふかく感じた。細君さいくんもでてきて
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
しかして自分らの水游ぎを戒むるとて、母がいつも通し蛇が水游ぐ児の肛門より入りてその腸を食い、前歯を欠いて口より出ると言うを聞きじた。
手を動かし足を動かす一刹那いつせつなに、今にも又、不公平な運命の災厄さいやくがこの身の上に落ちかゝりはしないかとぢ恐れ、維持力がなくなるのであつた。
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
しかし無反省な愛執に目をおおわれた庸三にも、このもない葉子の悪戯いたずらには、目を蔽っているわけには行かなかった。彼は少し興奮していた。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
それを聞くと、一番近くの石造の顔はびっくりして眼を見張ったように思われ、口をぽかんとけ下顎をだらりと下げて、じ恐れたように見えた。
悪しきを見過ぐすものからじ。弱きもの詮無し。照る日に、このあかきに、何づる、人びと。五月さつきの、白雲のいゆきしづけ松むら、その姿思へや。
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
が、彼女は、づいて、すぐ逃げ出す。風が、ぱっと来て、蝋燭の火をゆすぶり、消してしまったからである。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
「はははは、じけづいたのかね。軽機といっても大したことはないよ、相手がおどろいてくれればいいだけのことだ」
暗号音盤事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
意外な人のかたちに鬼のいる島だとづき、恐ろしさが先に立って、わけもなく逃げにかかったのだといった。
藤九郎の島 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
それだのに、あなたはまるで物にじた小馬のように汗を流してふるえているのを見ると、どうも錯覚らしいですな。
檀家総代、世話人、寺男の一隊が、住職から小僧を交えて、グルリと本尊の大師像を取囲み、ずながら次第に深くなる夜を迎えているのでした。
のみならずかえって金の力で、それらの頭をさげさせようとする。——盲目めくらへびじずとはよく云ったものですねえ
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
智力は人生の眼です、これがなければ愛も盲目の愛であり、生活も蛇にじない盲人の妄動になってしまいます。
婦人改造と高等教育 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
無数の人が宿直とのいをする。しかしやっぱり盗まれてしまう。鼓賊こぞく、鼓賊とこう呼んで、江戸の人達はじ恐れた。
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
あなたの番になると、あなたは、じずおくせず明快に、「高飛びの熊本秋子です」と名乗って着席しました。ぼくには、その人怖じしない態度が好きだった。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
殊に、はやぶさのような三次のまなざしを見ただけでも、そんな手軽いコケおどしにじて、後へ引っ返すようななまやさしい食いつめ者でないことは分り過ぎている。
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
君、君、盲人めくら蛇にじずとは君のことだよ。そりゃあ成る程、君に取ってはこの女は世界一の宝だろう。
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
『火持ちはいいが、なんしろ危ないで……よっぽど気を付けんと火のやうなかないものはない……』
(新字旧仮名) / 金田千鶴(著)
羊のようにじすくんでいたふたりの心もゆるんで、お艶、弥生、はじめて若い女らしく笑いあった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「なあに風の又三郎など、っかなぐなぃ。いっつも何だりかだりって人だますぢゃぃ。」
ひかりの素足 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
さりながら今より思い合わすれば、如何いか盲目めくらへび物にじずとはいいながら、かかる危険きわまれる薬品を枕にしてくも安々とねむり得しことよと、身の毛を逆竪さかだつばかりなり。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
私などが今まで生きてゐた間の世界は、波瀾はなはだしかつた世であつて、恐しい世であつたのだが、めくらヘビにぢずといつたやうな有樣で、恐しとも感ぜずに過して來た。
新しくもならぬ人生 (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
とおほめになつて、うちに少々しよう/\のこつてゐたもの褒美ほうびらせました。もちろんひめ難題なんだいにはふるひ、「赫映姫かぐやひめおほがたりめ」とさけんで、またと近寄ちかよらうともしませんでした。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
もうそばへ来そうなものと、閑耕教頭が再び、じろりと見ると、お妙は身動きもしないで、じっと立って、ろうたけた眉が、雲の生際に浮いて見えるように俯向うつむいているから、威勢にじて
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
彼女はおけを地面に置き、髪の中に手を差し入れて、静かに頭をかき初めた。じ恐れて決断に迷ってる子供によく見る態度である。もうそこはモンフェルメイュの村ではなく、野の中だった。
おらちは物にじるような落ちつかない態度で、二人の前に出て来た。
馬妖記 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
じ恐れて、ともすれば逃げ腰をしている土人たちを叱りつけ、また四マイルばかりの道を昨日の場所まで来てみて、さて驚いたことには! なるほど無智ではありながらも、蒙昧もうまいではありながらも
令嬢エミーラの日記 (新字新仮名) / 橘外男(著)
山県公は孔明ほどの人物ではないけれども、やはり世間ではその名に聞きじして恐るる事甚だしい。即ちこれ死せる孔明生ける仲達を走らすのたぐいである。勢力の中心はもはや今日移動しつつある。
劣らずに口では小侍たち、猛りつづけてはいたが、十五郎の思わざる豹変ひょうへんにいささかじ気づいたらしい容子でした。真赤な髑髏どくろ首もこの際この場合、相当に六人の肝を冷やしていると見えるのです。
たんまりおもうけになった上、今じゃあ、御息女を公方くぼうさまの、御妾おめかけに、差し出しなすったとかで、いよいよ天下の切れ者、土部三斎さまの名を聴けば、大老、老中もを振うとかいうことですが
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
見るにおいて後に来る者はおどろき先にでし者はじ恐れん
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
と文一君は勘定かんじょうをして、もうがついた。
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
盲目めくらへびじずというところがあった。
戦雲を駆る女怪 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
コレラぢて綺麗きれいに住める女かな
五百句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
人目をぢて なれはそも
ぢつつひしれぬ。
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
「自分の名刺がありませんので……」そう言って、ものじた子供のように微笑しながら、彼はその名刺を裏がえし、そこに
聖家族 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
それほどに無邪気な可憐な恋でありながら、なお親にじ兄弟に憚り、他人の前にて涙も拭き得なかったのは如何に気の弱い同志であったろう。
野菊の墓 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
庸三は何かしら悪い予感もあったが、しばしばのゴシップにもついていたので、とかく落ち着けない気分だった。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「そんでもれこたはあ、なくつてもなほつからえゝつてくすりよこしたんだぞ」與吉よきちすこあひだへだてゝづ/\いつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)