“じっ”のいろいろな漢字の書き方と例文
語句割合
31.5%
28.0%
凝然11.5%
凝乎10.5%
7.3%
5.6%
1.4%
0.7%
不動0.3%
0.3%
(他:8)2.9%
(注)作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
私は夢中に町の中を歩きながら、自分の室にじっすわっている彼の容貌ようぼうを始終眼の前にえがき出しました。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その男が、烏のくちばしから落しました奥様のその指環を、てのひらに載せまして、じっと見ていましたのでございます。
紅玉 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
じったが、狭い座敷で袖が届く、女房は、くの字に身を開いて、色のうつるようてのひらに据えて俯向うつむいた。
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
お職人が念のために、分け目をじっると、やっこ、いや、少年の助手が、肩から足の上まで刷毛はけを掛ける。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
表の通りを白いむっちりした二の腕を露わして掃いている、若い細君らしいのが、凝然じっと私どものあとを見送ったりしていた。
或る少女の死まで (新字新仮名) / 室生犀星(著)
が、再び家の中へ引き返した釘抜藤吉は台所の板の間に凝然じっと棒立ちになって、天井を見上げたまま動こうとはしなかった。
老エフィゲニウスの言葉は途絶えて、しばらくは凝乎じっと眼頭を抑えていました。そして我々も、言葉なくうな垂れていたのです。
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
其方の声がぴたと止まったら、どうなすったかと思って見ると、彼の可厭な学生が其の顔を凝乎じっと見て居るのでした。
昇降場 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
ああ、時ならぬ、簾越すだれごしなる紅梅や、みどりに紺段々だんだら八丈の小掻巻を肩にかけて、お夏はじっとしていた。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
もし地球の運転が逆になったらかえって宙を飛ぶのが並のもので下にじっとしているのが怪物ばけものになるかも知れない。
大きな怪物 (新字新仮名) / 平井金三(著)
また、さびしい、室の裡に物思いに沈んで、じっと下を見つめて、何事をか考えている、青い顔の年老としとった女があろう。
夕暮の窓より (新字新仮名) / 小川未明(著)
今度は藤尾の方で、返事をする前に糸子をじっと見る。針は真逆まさかの用意に、なかなかひとみうちには出て来ない。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
動かずにいる体が少し寒さを感じて来た頃、心あてにじっと見詰めていた方向から、水桶を重そうに背負った男の姿がにじみ出した。
木曽駒と甲斐駒 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
眠ることの出来ない孤独の我が心を、じっとして淋しくしているだけの忍耐が出来なかった。
感覚の回生 (新字新仮名) / 小川未明(著)
源助、宮浜の児を遣ったあとで、天窓あたま引抱ひっかかえて、こう、風の音を忘れるようにじっと考えると、ひょい、と火をるばかりに、目に赤く映ったのが、これなんだ。
朱日記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
誰一人じっとしているものは無い。
私はすぐ節穴から離れようとしたが、そうすれば節穴が明るい記帳場のひかりを透すであろうと思って、わざと不動じっとしていた。
性に眼覚める頃 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
ツイ口を滑らして、宮尾敬一郎は首を縮めました。美しい英子姫の瞳が、非難するともなく、自分の方をじっと見詰めて居るのです。
判官三郎の正体 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
いっ寂然じっとしていた方がい。
先刻さっきから覚めてはいるけれど、尚お眼をねむったままでているのは、閉じた眶越まぶたごしにも日光ひのめ見透みすかされて、けば必ず眼を射られるをいとうからであるが、しかし考えてみれば、斯う寂然じっとしていた方がましであろう。
お杉は消えかかる焚火を前にして、かたえの岩に痩せた身体をせかけたまま、さながら無言のぎょうとでも云いそうな形で晏然じっと坐っていた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
あなた僕の履歴を話せっておっしゃるの? 話しますとも、じっき話せっちまいますよ。
忘れ形見 (新字新仮名) / 若松賤子(著)
勉が寝不足で蒼く乾いた顔を洗う間、祖父じっちゃんは草箒で格子の前あたりをちっと掃き、掃除のすんだ部屋へ上って坐った。
小祝の一家 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
それから出かけるまで時間があっても、勉は殆ど誰とも口をきかなかった。縁ばたに近い方へ腹這いになって本を読んだ。思い出したように祖父じっちゃんに向って、
小祝の一家 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
と七輪の上で、火の気ににぎやかな頬が肅然じっと沈んだ。
古狢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
出血死は第二週に少数例が観察された。突然じっ血、吐血、下血、創傷再出血を起こして死亡した。これは還流血液中の血小板が破壊され、出血性素因を生じたものと思われる。兎での実験がある。
長崎の鐘 (新字新仮名) / 永井隆(著)
しばらくしてから、弱々しい娘の顔はもとのように晴れかかってすこしの曇りのない色に戻った。父はそれを静乎じっと眺めていたが、やっと落着いてそして娘に言った。
みずうみ (新字新仮名) / 室生犀星(著)
能登守は静粛じっとして聞いていたけれども、座中にはもう聞くに堪えない者が多くなって、雲行きが穏かでないのを、太田筑前守が、この時になってようやく調停がましき口を利き出しました。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)