トップ
>
凝乎
>
じっ
ふりがな文庫
“
凝乎
(
じっ
)” の例文
が、今こうやって雄大な写真を眺めながら
凝乎
(
じっ
)
とカ氏の説明に耳を傾けていると、さすがに私の認識も幾分改まってくるのを覚えた。
ナリン殿下への回想
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
黄昏
(
たそがれ
)
——その、ほのぼのとした
夕靄
(
ゆうもや
)
が、地肌からわき
騰
(
のぼ
)
って来る時間になると、私は何かしら
凝乎
(
じっ
)
としてはいられなくなるのであった。
腐った蜉蝣
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
機会
(
きかい
)
を
見
(
み
)
て
私
(
わたくし
)
はそう
切
(
き
)
り
出
(
だ
)
しました。すると
姫
(
ひめ
)
はしばらく
凝乎
(
じっ
)
と
考
(
かんが
)
え
込
(
こ
)
まれ、それから
漸
(
ようや
)
く
唇
(
くちびる
)
を
開
(
ひら
)
かれたのでございました。——
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
その顔を、
凝乎
(
じっ
)
と見ると、
種々
(
いろん
)
な苦労をするか、今朝はひどく
面窶
(
おもやつ
)
れがして、先刻洗って来た、
昨夕
(
ゆうべ
)
の白粉の痕が青く
斑点
(
ぶち
)
になって見える。
別れたる妻に送る手紙
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
木乃伊の顔に注いだ視線を、もはや
外
(
そ
)
らすことが出来なくなった。彼は、
磁石
(
じしゃく
)
に吸寄せられたように、
凝乎
(
じっ
)
と身動きもせず、その顔に見入った。
木乃伊
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
▼ もっと見る
「ありがとう。子供の顔ったら悲しそうで見ていられないわ。あら、あの金魚屋さんは、
凝乎
(
じっ
)
と先刻からふしぎそうにあたいの顔を見ている、……」
蜜のあわれ
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
其方の声がぴたと止まったら、
何
(
どう
)
なすったかと思って見ると、彼の可厭な学生が其の顔を
凝乎
(
じっ
)
と見て居るのでした。
昇降場
(新字新仮名)
/
広津柳浪
(著)
しかしそれでも初夏の朝々にこの声を耳にしては、心自ら浮き浮きして、
凝乎
(
じっ
)
としていられぬとは馬鹿にしたもうな、江戸ッ児にはありがちのことだ。
残されたる江戸
(新字新仮名)
/
柴田流星
(著)
枯れ
芒
(
すすき
)
のなかから、背中だけ出していたのであるから、よほどの大物にちがいあるまい。体を東南に向け、首だけ西南へ向けて、
凝乎
(
じっ
)
と私らをにらんでいる。
香熊
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
お留伊を迎えに来た少女が、薬湯を
嚥
(
の
)
む
刻
(
とき
)
だと云って入って来た。……老人は苦しげに身を起して薬湯を
啜
(
すす
)
ると、話し疲れたものか暫く
凝乎
(
じっ
)
と眼をつむっていた。
鼓くらべ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
彼は同じ食卓に就いて居る一人の
年増
(
としま
)
の貴婦人を
凝乎
(
じっ
)
と
瞶
(
みつ
)
めて居た。美人であるから
許
(
ばか
)
りではない。
乗合自動車
(新字新仮名)
/
川田功
(著)
「どんな物かは、夫れは後で分るだろう、
兎
(
と
)
に
角
(
かく
)
私
(
わし
)
は今、
頻
(
しき
)
りに今夜の試験方法を考えて居るのだ」と、快活なる伯爵は小首を傾けて、
凝乎
(
じっ
)
と窓から外を眺めて居る
黄金の腕環:流星奇談
(新字新仮名)
/
押川春浪
(著)
それは美しい韻律をもって、例えば夢のからくりのようにいとも快い刺激を鼓膜に与えた。彼は尻を立てた黒猫のような格好で、忘我の中に、そのまま
凝乎
(
じっ
)
と
蹲
(
うずくま
)
っていた。
自殺を買う話
(新字新仮名)
/
橋本五郎
(著)
凝乎
(
じっ
)
と睨みつめた手近な器具に、心がぢり/\と焼きつけられて、私の手の影のやうなものがそれを掴むらしくみえる——割れる——響——その刹那のひやりとした気持なぞを
脱殻
(新字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
今日半日仰いで来たこの山は近づけば近づくだけ、いよいよ大きく、いよいよ寂しくのみ眺められ、立ちどまって
凝乎
(
じっ
)
と仰いでいるといつか自分自身も凍ってゆく様な心地になって来るのであった。
みなかみ紀行
(新字新仮名)
/
若山牧水
(著)
露月は
凝乎
(
じっ
)
と相手を眺めて
艶容万年若衆
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
凝乎
(
じっ
)
と眼を注ぎ
檻の中
(新字新仮名)
/
波立一
(著)
見守っていた印度人たちはまた急いで駆け寄って手を貸そうとしたら、少年から
母国
(
カッチ
)
語で注意されて恐縮したように
凝乎
(
じっ
)
と眺めていた。
ナリン殿下への回想
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
三度紀昌が
真面目
(
まじめ
)
な顔をして同じ問を
繰返
(
くりかえ
)
した時、始めて主人の顔に
驚愕
(
きょうがく
)
の色が現れた。彼は客の眼を
凝乎
(
じっ
)
と見詰める。
名人伝
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
そして
不図
(
ふと
)
気
(
き
)
がついて
見
(
み
)
ると、
見
(
み
)
も
知
(
し
)
らぬ
一人
(
ひとり
)
の
老人
(
ろうじん
)
が
枕辺
(
まくらべ
)
に
佇
(
た
)
って、
凝乎
(
じっ
)
と
私
(
わたくし
)
の
顔
(
かお
)
を
見
(
み
)
つめて
居
(
い
)
るのでございます。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
そういう父の眼に何が映ったか? 娘はただ
凝乎
(
じっ
)
としているばかりで、何をも知らなかった。知ろうとすることが自然に誰からも許されようとはしなかった。
みずうみ
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
どうしても
凝乎
(
じっ
)
としてはいられなくなって、あてもない道を、まだ肌寒い風に吹き送られ
乍
(
なが
)
ら、防風の砂丘を越えて、野良犬のように
迂路
(
うろ
)
つき廻るのであった。
腐った蜉蝣
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
やがてすうっと襖が
開
(
あ
)
いて、衣擦れの音がして、
枕頭
(
まくらもと
)
の火鉢の傍に黙って坐った。私は独で擽られるような気持になって
凝乎
(
じっ
)
と堪えて蒲団を被ったまゝでいた。
別れたる妻に送る手紙
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
鮎、
鯎
(
うぐい
)
、
鮠
(
はや
)
などが淵の中層で、ぐうぐうやっている。魚類のことであるから、
鼾
(
いびき
)
声は聞こえないが、尾も鰭も微動だにさせないで、ゆるやかに流れる水に
凝乎
(
じっ
)
としているのである。
飛沙魚
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
各箇
(
いくつ
)
かの団体の、いろいろの彩布の大旗小旗の、それが朝風に飜って居る勇しさに、
凝乎
(
じっ
)
と
見恍
(
みと
)
れてお居でなさった若子さんは、色の黒い眼の
可怖
(
こわ
)
い学生らしい方に押されながら、私の方を見返って
昇降場
(新字新仮名)
/
広津柳浪
(著)
私は恐い顔をして
凝乎
(
じっ
)
とあの人を見つめる。
脱殻
(新字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
凝乎
(
じっ
)
と、絶えず
青べか日記:――吾が生活 し・さ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
そして鏡を見ながら
凝乎
(
じっ
)
と考え
耽
(
ふけ
)
ったが、想えば
白粉
(
おしろい
)
、口紅、そして香水……そうしたものに遠ざかってからすでに一年と七カ月。
令嬢エミーラの日記
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
二つ枕をならべた押し絵のような夜の静かさ、殆ど同じいくらいと言っていい世にも稀れな二つの寝顔、お俊はきよ子の方を向いて
凝乎
(
じっ
)
と澄んだ眼をすえた。
童話
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
いつかは来る
滅亡
(
ほろび
)
の前に、それでも
可憐
(
かれん
)
に花開こうとする
叡智
(
ちえ
)
や
愛情
(
なさけ
)
や、そうした数々の
善
(
よ
)
きものの上に、師父は絶えず
凝乎
(
じっ
)
と
愍
(
あわ
)
れみの
眼差
(
まなざし
)
を
注
(
そそ
)
いでおられるのではなかろうか。
悟浄歎異:―沙門悟浄の手記―
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
身
(
み
)
には
平袖
(
ひらそで
)
の
白衣
(
びゃくい
)
を
着
(
き
)
て、
帯
(
おび
)
を
前
(
まえ
)
で
結
(
むす
)
び、
何
(
なに
)
やら
絵
(
え
)
で
見覚
(
みおぼ
)
えの
天人
(
てんにん
)
らしい
姿
(
すがた
)
、そして
何
(
な
)
んともいえぬ
威厳
(
いげん
)
と
温情
(
おんじょう
)
との
兼
(
か
)
ね
具
(
そなわ
)
った、
神々
(
こうごう
)
しい
表情
(
ひょうじょう
)
で
凝乎
(
じっ
)
と
私
(
わたくし
)
を
見
(
み
)
つめて
居
(
お
)
られます。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
何とも言えない独り居り場に困っているというような顔をして私の顔を
凝乎
(
じっ
)
と見ている。
別れたる妻に送る手紙
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
……その日、地上では研究所の所員たちが、この不具者の黒吉が、一体どんな「飛下り振り」をするか、と
固唾
(
かたず
)
をのんで、爆音を青空に流して快走する銀翼を
凝乎
(
じっ
)
と見詰めていた。
夢鬼
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
賢彌は、
凝乎
(
じっ
)
と老爺の顔を見た。
岩魚
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
灯を点けることも忘れ
窓掛
(
カーテン
)
を引くことも忘れて、
凝乎
(
じっ
)
と私は椅子に
凭
(
もた
)
れていたが、「旦那様、お食事のお仕度が整いましてございます」
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
それきりかれはうとうとと眠り込んだかと思うと突然起きあがって、おあいの顔を
凝乎
(
じっ
)
とながめたり、ぼんやりした
行燈
(
あんどん
)
をみつめたりした。そして気がつくと
蛾
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
そうして、外からの侵入者に警戒するような・幾分敵意を含んだ目で、私の方を
凝乎
(
じっ
)
と見ている様子である。あれは誰だと、若い女に聞けば、ワタシノダンナサンノオ母サンと答えた。
環礁:――ミクロネシヤ巡島記抄――
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
その
傍
(
そば
)
の岩の上には、あの、ネネが、前よりも一層美しくなったように思われるネネが、
喪心
(
そうしん
)
したように突立って、手を握りしめ、帽子を飛してしまった
頭髪
(
かみのけ
)
を塩風に
靡
(
なび
)
かせながら、
凝乎
(
じっ
)
と
腐った蜉蝣
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
帳場格子の中に頬杖突いて
凝乎
(
じっ
)
とこちらのほうを眺めております親父の顔なぞが、
竦然
(
ぞっ
)
とするほど青
褪
(
ざ
)
めた恐ろしい人相に映りましたり
蒲団
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
松岡は蝋燭の火かげで、ずるずると長い影を引いたものが、階段裏からくびれているのを目に入れた。女の顔は向うむきに隠れていた。動かず
凝乎
(
じっ
)
としていた。
三階の家
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
絶望的な哀願をもう一度繰返すと、急に、
慍
(
おこ
)
ったような固い表情に変り、眉一つ動かさず
凝乎
(
じっ
)
と見下す。今や胸の真上に蔽いかぶさって来る真黒な重みに、最後の悲鳴を挙げた途端に、正気に返った。
牛人
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
「…………」私は
凝乎
(
じっ
)
と亭主の面を
凝視
(
みつめ
)
た。「僕も今それを考えているところなのだよ。昨日もあすこで逢ってしまったが……」
逗子物語
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
あそこの山にしろ
凝乎
(
じっ
)
と眺めていると人の顔になる、だからわしはさびしいことなどは少しもないのだ。
あじゃり
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
三人の中には
怯
(
お
)
ず怯ずと兵員たちの腰に
佩
(
お
)
びた剣に触ってみるものもあれば、不思議そうに靴に眼を留めて、
凝乎
(
じっ
)
と眺めている者もある。
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
もう村人の声もしない、
爆
(
は
)
ぜる音ばかりが続き、
凝乎
(
じっ
)
としては熱風で息が
窒
(
つ
)
まりそうだった。
野に臥す者
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
老エフィゲニウスの言葉は途絶えて、しばらくは
凝乎
(
じっ
)
と眼頭を抑えていました。そして我々も、言葉なくうな垂れていたのです。
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
こうなると一人きりでいることに気が負け、私も出かけて見たくもなったが、いままで
凝乎
(
じっ
)
としていたのに、いまさら諸君の後を追うわけにゆかず、酒はさびしく既に
苦
(
にが
)
くさえあった。
我が愛する詩人の伝記
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
「
畏
(
かしこ
)
まりました」と意外にハッキリした返事であった。そして意を決したように書類を押しやって、私の顔を
凝乎
(
じっ
)
と見守った。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
私はそれを
凝乎
(
じっ
)
と見詰めていると不思議にこの雪駄を盗み出したことが、非常に恐ろしい罪悪のように暫くでも持っていてはならないような、追っ立てられるような不安と焦躁とを感じ始めた。
性に眼覚める頃
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
これを片付けて机の上をサッパリとしてしまわなければ、落ち付いて
凝乎
(
じっ
)
とものも考えられぬような気がしていたのであった。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
凝
常用漢字
中学
部首:⼎
16画
乎
漢検準1級
部首:⼃
5画
“凝”で始まる語句
凝
凝視
凝然
凝結
凝固
凝議
凝脂
凝塊
凝集
凝滞