“ぢつ”のいろいろな漢字の書き方と例文
語句割合
42.1%
凝然15.8%
12.3%
凝乎8.8%
3.5%
3.5%
3.5%
1.8%
泰然1.8%
1.8%
端然1.8%
静粛1.8%
靜乎1.8%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
軈てお八重も新太郎に伴れられて歸つて來たが、坐るや否や先づけはしい眼尻を一層險しくして、ぢつと忠太の顏を睨むのであつた。
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
○こんな事を考へて、恰度秒針が一囘轉する程の間、私は凝然ぢつとしてゐた。さうして自分の心が次第々々に暗くなつて行くことを感じた。
歌のいろ/\ (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
先刻さつきから見て居るのよ、成程能く似て居ると思つて感心して居るのよ。」と女は言つて笑を含んでぢつと僕の顏を見て居る。
少年の悲哀 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
この虫はかうして身動きもせず凝乎ぢつとしたまま、今、静かに空気の神秘にふれて居るのであつた。
『然うなすつた方が可いわ、小母さん。』と智惠子は俯向いたお利代の胸の邊をぢつみつめた。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
『あゝ、しんど。……此頃はちよツとも歩きまへんよつて、ちいと歩くと、ぢつきに疲勞くたぶれますのや。』
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
そらんでかぜのないで、尾花をばなぢつとしてうごかなかつたのに。……
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そして、急に眞面目な顏をしてぢつと男の顏を見ながら、『眞箇よ。私石女うまずめなんですもの。子供を生まない女は女ぢやないんでせう?』
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
『靜子さん。』と清子は、ぢつと友の俯向うつむいた顏を見ながら、しんみりした聲で言つた。『私よく知つてるわ。貴女の心を!』
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
風雨を睨んで彼程の大揉の中に泰然ぢつと構へて居たといふが、其一念でも破壊るまい、風の神も大方血眼で睨まれては遠慮が出たであらう歟、甚五郎このかたの名人ぢや真の棟梁ぢや
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
何程仕事の大事ぢやとて昨日の今日は疵口の合ひもすまいし痛みも去るまじ、泰然ぢつとして居よ身体を使ふな、仔細は無けれど治癒なほるまでは万般よろづ要慎つゝしみ第一と云はれた御医者様の言葉さへあるに
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
燥々いら/\しながら立つて毛布ケツトをはたいた、煙草シガアの灰が蛇の抜殻のくづるる様にちる、私は熱湯の中に怖々おづ/\身体からだを沈める時に感ずる異様な悪感に顫へながら強ひて落着いた風をしてぢつと坐つて見た。
新橋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
硬い唐筵の上に、しびれをきらして端然ぢつと坐つて居なければならなかつた。最初机の前に座蒲団が置いてあつたので、私は何心なく、何等の顧慮もなく、当然の様にその上へ坐つて居た。
世の中へ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
一刻も早く解決したいとあせつて車の上で静粛ぢつとして居るのが堪へ切れぬ様になつた。
「一所に下りて行つたらば好いだらう、此先に休場もあるから」と云つても猶動かない、疲れたやうな顏色をして靜乎ぢつと立つてゐる。
(旧字旧仮名) / 吉江喬松吉江孤雁(著)