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凝
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ぢつ
ふりがな文庫
“
凝
(
ぢつ
)” の例文
「息をしだしたな、これで暫く来んわい。」と平七は
独語
(
ひとりご
)
つて、平三に背を向けて立つたまゝ、矢張り
凝
(
ぢつ
)
と網の中を見つめて居た。
厄年
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
軈てお八重も新太郎に伴れられて歸つて來たが、坐るや否や先づ
險
(
けは
)
しい眼尻を一層險しくして、
凝
(
ぢつ
)
と忠太の顏を睨むのであつた。
天鵞絨
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
そしてまた發作前の常習慣の、何も彼も腹立たしい、苛ら/\した、神經的の衝動を鎭制しようと云ふ風に、
凝
(
ぢつ
)
と燃える火に見入つてゐた。
奇病患者
(旧字旧仮名)
/
葛西善蔵
(著)
梅の花びらが散りこぼれてくると、子供はいかにも不思議さうに
凝
(
ぢつ
)
と立ち止まつて眼を視張つてゐた。周子はその
態
(
さま
)
をしげしげと打ち眺めて
父を売る子
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
「ハツハツハツ、物を理詰めに考へただけの事さ。五日四晩お前が駈け
摺
(
ず
)
り廻る間、俺は
凝
(
ぢつ
)
として自分の
臍
(
へそ
)
と相談をした」
銭形平次捕物控:103 巨盗還る
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
▼ もっと見る
しかし
昔馴染
(
むかしなじみ
)
と言ふやうな、又は昔の恋人と言ふやうな単純な気分ではなかつた。
凝
(
ぢつ
)
として見詰めて立つた彼の前に、かの女の頭はおのづから下つた。
ある僧の奇蹟
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
娘
(
むすめ
)
は
歩
(
あゆ
)
みながら私の顏を
凝
(
ぢつ
)
と見入ツた。あゝ其の意味深い
眼色
(
めいろ
)
!私は何んと云ツて其を
形容
(
けいやう
)
することが出來やう。
虚弱
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
瞳
(
ひとみ
)
も
据
(
すわ
)
らず、
血
(
ち
)
の
褪
(
あ
)
せた
男
(
をとこ
)
の
顏
(
かほ
)
を、
水晶
(
すゐしやう
)
の
溶
(
と
)
けたる
如
(
ごと
)
き
瞳
(
ひとみ
)
に
艶
(
つや
)
を
籠
(
こ
)
めて
凝
(
ぢつ
)
と
視
(
み
)
ると、
忘
(
わす
)
れた
状
(
さま
)
に
下
(
した
)
まぶち、
然
(
さ
)
り
氣
(
げ
)
なく
密
(
そ
)
と
當
(
あ
)
てた、
手巾
(
ハンケチ
)
に
露
(
つゆ
)
が
掛
(
かゝ
)
かつた。
艶書
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
頭脳
(
あたま
)
で分らない事を、胃の腑に相談でもするらしく、
凝
(
ぢつ
)
と首を
傾
(
かし
)
げて考へ込んだが、多くの場合
頭脳
(
あたま
)
で判らない事は、胃の腑でも掻いくれ見当が立たないものだ。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
顫へてゐる私の眼の前には白い蛾の
粉
(
こな
)
のついた大きな
掌
(
てのひら
)
と十本の指の間から
凝
(
ぢつ
)
と睨んでゐる黒い眼、………蠶の卵の
彈
(
はぢ
)
く音、繭を食ひ切る音、はづんだ生殖の
顫
(
ふる
)
へ
思ひ出:抒情小曲集
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
併
(
しか
)
し
品
(
ひん
)
の好い
一寸見
(
ちよいとみ
)
には三十二三と想はれるが、
凝
(
ぢつ
)
と
向
(
むか
)
へば小
皺
(
じわ
)
の寄つた、若作りの婦人である。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
其処には二十歳位の女の半身がある。代助は眼を
俯
(
ふ
)
せて
凝
(
ぢつ
)
と女の顔を見詰めてゐた。——
文芸的な、余りに文芸的な
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
さうしてその都度、葉裏が白く光る——それを
凝
(
ぢつ
)
と見つめて居ても……。彼を見つけた犬どもが、いそいそ野面から飛んで帰つて、両方から飛び
縋
(
すが
)
る。それを避けようと身をかはしても……。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
戸口
(
とぐち
)
から
第
(
だい
)
一の
者
(
もの
)
は、
瘠
(
や
)
せて
脊
(
せ
)
の
高
(
たか
)
い、
栗色
(
くりいろ
)
に
光
(
ひか
)
る
鬚
(
ひげ
)
の、
眼
(
め
)
を
始終
(
しゞゆう
)
泣腫
(
なきは
)
らしてゐる
發狂
(
はつきやう
)
の
中風患者
(
ちゆうぶくわんじや
)
、
頭
(
あたま
)
を
支
(
さゝ
)
へて
凝
(
ぢつ
)
と
坐
(
すわ
)
つて、一つ
所
(
ところ
)
を
瞶
(
みつ
)
めながら、
晝夜
(
ちうや
)
も
別
(
わ
)
かず
泣
(
な
)
き
悲
(
かなし
)
んで、
頭
(
あたま
)
を
振
(
ふ
)
り
太息
(
といき
)
を
洩
(
もら
)
し
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
お八重は身體を捻つて背中合せに腰掛けた商人體の若い男と、頭を押
接
(
つ
)
けた儘、眠つたのか眠らぬのか、
凝
(
ぢつ
)
としてゐる。
天鵞絨
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
罪人の様に、羞恥と悔恨とにぶる/\身を震はしながら
凝
(
ぢつ
)
と畳の目を見つめて居た。思はず涙がさしぐんで来た。
世の中へ
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
かう言つた女はまた顔を
赧
(
あから
)
めた。かれは深く心を動かされずには居られなかつた。かれは
凝
(
ぢつ
)
と女を見詰めた。
ある僧の奇蹟
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
日が射してまぶしいもので、頭からすつぽりとかひまきを被つたまゝ
凝
(
ぢつ
)
と小便を怺へてゐた。硝子戸も障子も惜し気なく明け放されて、蝉が盛んに鳴いてゐた。
スプリングコート
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
白粉の凄まじい
大崩落
(
だいほうらく
)
、
春雨
(
はるさめ
)
に逢つた大
雪崩
(
なだれ
)
のやうなのを、平次は世にも眞顏で
凝
(
ぢつ
)
と見詰めて居ります。
銭形平次捕物控:048 お藤は解く
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
……
日
(
ひ
)
を
隔
(
へだ
)
てたカアテンの
裡
(
うち
)
なる
白晝
(
まひる
)
に、
花園
(
はなぞの
)
の
夢
(
ゆめ
)
見
(
み
)
る
如
(
ごと
)
き、
男
(
をとこ
)
の
顏
(
かほ
)
を
凝
(
ぢつ
)
と
見
(
み
)
て
艶書
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
それから
暫時
(
しばらく
)
経
(
た
)
つて、殆素つ裸の俄作りの
戯奴
(
ヂヤウカア
)
は外の出窓に両脚を
恍惚
(
うつとり
)
と投げ出して居た。而して今霊岸島の屋根瓦の波の上にくるくると落ちかかる真赤な太陽の光を
凝
(
ぢつ
)
と眺めて居る。
桐の花
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
泣きたくなるのを漸く辛抱して、
凝
(
ぢつ
)
と疊の目を見てゐる辛さ。九時半頃になつて、
漸々
(
やう/\
)
『疲れてゐるだらうから』と、裏二階の六疊へ連れて行かれた。
天鵞絨
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
それから舟を網の台の方へ𢌞し、二人共舳に立つて、綱の入口や中央を
凝
(
ぢつ
)
と眺め入つた。暫く注視して居たが入つて来る様子がないので、平三は眼を前方に転じた。
厄年
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
さうは思つたものの、
凝
(
ぢつ
)
と悩まし気に、深刻気に、眼を
凝
(
こら
)
し口を引きしめてゐる藤田の表情を眺めてゐると、妙に圧迫されたり、また彼が偉いもののやうに思はれたりした。
或る日の運動
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
眼で
叱
(
しか
)
つて、奧の方を
凝
(
ぢつ
)
と見て居ると、六疊の床に掛けた、
壽
(
じゆ
)
老人を畫いた安物の大幅が動いて、その後ろから、
匕首
(
あひくち
)
を持つた、巾着切の辰三が、ヌツと顏を出したではありませんか。
銭形平次捕物控:307 掏られた遺書
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
上
(
あが
)
り
口
(
ぐち
)
の
電信
(
でんしん
)
の
柱
(
はしら
)
を
楯
(
たて
)
に、
肩
(
かた
)
を
曲
(
くね
)
つて、
洋傘
(
かうもり
)
の
手
(
て
)
を
柱
(
はしら
)
に
縋
(
すが
)
つて、
頸
(
うなじ
)
をしなやかに、
柔
(
やはら
)
かな
髢
(
たぼ
)
を
落
(
おと
)
して、……
帶
(
おび
)
の
模樣
(
もやう
)
の
颯
(
さつ
)
と
透
(
す
)
く……
羽織
(
はおり
)
の
腰
(
こし
)
を
撓
(
たわ
)
めながら、
忙
(
せはし
)
さうに、
且
(
か
)
つ
凝
(
ぢつ
)
と
覗
(
のぞ
)
いたが
艶書
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
昼の蝋燭が鼻の
真向
(
まつかう
)
にしんみりと光り輝く、眼と眼とが
凝
(
ぢつ
)
とその底から吸ひ付くやうに差覗く……つくづくと
陰影
(
かげ
)
と霊魂と睨み会つたまま底の底から自愛と憐憫の心とが切々と滲み出る。
桐の花
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
定老爺は、暫く
凝
(
ぢつ
)
と此女乞食を見てゐたが、『村まで行つたら
可
(
よ
)
がべえ。醫者樣もあるし巡査も居るだア。』
二筋の血
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
大きな鋏を開いて
凝
(
ぢつ
)
と差寄せた瞬間の彼の神経の鋭さ、その沈着と大胆と、それから一息に根元からチヨキンと切り落した瞬間の神的決断と、人間性の無意識的快感これを思ふと恐ろしくなる。
神童の死
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
微風もなく、暑さが
凝
(
ぢつ
)
と停滞してゐるばかしなので、蜻蛉の影が砂地にはつきり写つた。——宮田は沖を悠々と泳いでゐた。彼は、そんなに泳げないので、浮標の近所で、腕を結んで逆さまに浮んだ。
スプリングコート
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
孫三郎は深々と腕を
拱
(
こまぬ
)
いて、疊の縁を
凝
(
ぢつ
)
と見詰めて居ります。
銭形平次捕物控:098 紅筆願文
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
それまで一度も言葉を交した事のない人から、
恁
(
か
)
う言はれたので、私は思はず顏を上げると、藤野さんは、
晴乎
(
ぱつちり
)
とした眼に柔かな光を湛へて、
凝
(
ぢつ
)
と私を
瞶
(
みつ
)
めてゐた。
二筋の血
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
女は、居たゝまれなささうな格好で
凝
(
ぢつ
)
と膝を視詰めた。
父を売る子
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
××さんは三十幾つかになつて始めて書いたのだ。吾々は決して無理に書く必要はない。書ける時期が来れば自然に書ける、その時こそほんとのものが出来るのだ。それよりも
凝
(
ぢつ
)
と考へよう、勉強しよう、さうして時期を
若い作家と蠅
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
凝
常用漢字
中学
部首:⼎
16画
“凝”を含む語句
凝然
凝視
凝結
凝乎
混凝土
凝固
凝塊
凝滞
凝集
三上水凝刀自女
凝脂
凝灰岩
思凝
凝議
凝坐
煮凝
凝固土
凝如
凝着
唐太常凝菴
...