“艶”のいろいろな読み方と例文
旧字:
読み方(ふりがな)割合
つや35.1%
えん21.1%
なま14.0%
なまめ13.2%
あで7.6%
なまめか2.2%
つやや2.0%
あでや1.4%
あだ0.7%
いろ0.7%
(他:15)2.0%
(注)作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
“艶”を含む作品のジャンル比率
文学 > 日本文学 > 小説 物語16.1%
文学 > 日本文学 > 詩歌4.5%
文学 > 日本文学 > 評論 エッセイ 随筆0.9%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
倭文子は涙ぐんだ目に、遙かなる憧れの色をたたえて、つややかにほほ笑むのみで一言いちごんも口を利かなかった。……
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「私は人がいものですから」と甲斐は云った、「他人のつやごとまでかぶせられるようで、いつもよく迷惑をいたします」
貴女きじょらしい端厳さなどは欠けていたかもしれぬが、美しくて、えんで、若々しくて男の心を十分にく力があった。
源氏物語:10 榊 (新字新仮名) / 紫式部(著)
月が明るく中天に上っていて、えんな深夜に上品な風采ふうさいの若い殿上人の歩いて行くことははなやかな見ものであった。
源氏物語:30 藤袴 (新字新仮名) / 紫式部(著)
眼の中には、彼女の柔い白い肉体が、人魚のように、なまめかしい媚態びたいを作って、何時までも何時までも、浮んでいた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
社の裏の方は、細い道があって、そこには玉やという貸席や、堅田という鳴物師などが住んでいるなまめかしい空気があった。
赤味の勝った友禅の振り袖、着崩れてかえってなまめかしく、びんなどもほつれて頬へも額へも、幾筋か毛がかかっていた。
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
白小袖の上に紫縮緬の二つ重ねを着、天鵞絨やろう羽織に紫の野良帽子をいただいた風情は、さながら女のごとくなまめかしい。
藤十郎の恋 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
竜宮劇場の舞台からあでやかな赤星ジュリアの歌を聴いているような気持で、あの悲鳴入りの口笛を聴き過ごすことはできない。
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
堂をめぐって、幕舎は幾つもあるが、そこの一つの蔭には、あでに粧った子づれの女性と、平服の侍が一人その側にひかえていた。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこには年の若い傾城けいせいが一人、なまめかしいひざを崩したまま、斜めにたれかの顔を見上げている。
誘惑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そこへしどけなく乱れた袴やうちぎが、何時もの幼さとは打つて変つたなまめかしささへも添へてをります。
地獄変 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
青くつややかなるまろき石のおおいなる下よりあふるるをの口に受けて木の柄杓ひしゃくを添えあり。
一景話題 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
中ざしキラキラとさし込みつつ、円髷まるまげつややかなる、もとわが居たる町に住みて、亡き母上とも往来ゆききしき。
清心庵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「まあ、恐れ入ります」と藤さんは坐る。灯火ともしびに見れば、油絵のようなあでやかな人である。顔を少し赤らめている。
千鳥 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
「さあこの盃で呑むがよい。そちがあでやかに酔った顔を久しぶりでわしは見たいのじゃ」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その中には、森啓之助が人しれず気に病んでいるところのあだな女と合羽をかぶった仲間ちゅうげんも、混雑にまぎれて後ろ向きに座をしめていた。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
少し神經質な青白い顏、紅いくちびるが不思議にあだめいて、凉しい眼が非凡な魅力でした。
女童めわらはにほふ人づゑ肩触りてはずむぬくみのいろひ母めく
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
きやしやにいろめく肉づきと、
晶子詩篇全集拾遺 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
エンにといふ聯想は、後から出た事で、「言へば言ひえに」或は「言へばえ言はに」の略せられた形であつた。
えは艶の字の意味ではないが、恐らくは、えンにとエンの音とが似てゐるところから聯想して、更に濃厚にえンにの意味を出さうとして来たからであらう。
古代中世言語論 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
うるはしき花の笑ひもながめて過ぎぬ。
新らしき悲しみにうつる時 (新字旧仮名) / 漢那浪笛(著)
うるはしき花の笑ひもながめて過ぎぬ、
恋しき最後の丘 (新字旧仮名) / 漢那浪笛(著)
綾衣は起って仏壇の燈明をかき立てると、白地に撫子なでしこを大きく染め出したはでな浴衣が裾の方から消えて、痩せた肩や細った腰が影のようにほの白く浮いて見えた。
箕輪心中 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
しかしはでな浮名を好まないたちであるのと、もうひとつには自分よりも年下の、しかも大工の丁稚あがりを情夫おとこにしているということが勤めする身の見得みえにもならないので、お園は自分がいよいよ自由の身になるまでは、なるべく六三郎との仲をひとには洩らしたくないと思っていた。
心中浪華の春雨 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
さへぎるはつきしたがひてゑんいよ/\ゑんならんとする雨後春山うごしゆんざんはなかほばせ
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ゑんなる夏 夢を埋め、
秋 なげかひ (新字旧仮名) / 漢那浪笛(著)
あてなるかなや、
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
夢の世を夢よりもあでやかながめしむる黒髪を、乱るるなと畳めるびんの上には、玉虫貝たまむしかい冴々さえさえすみれに刻んで、細き金脚きんあしにはっしと打ち込んでいる。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
機械とはたやしづけき鉄削る旋盤のかくもいろひ澄みつつ
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
成程女は氏なくして玉の輿という、生来うまれつきの美しさ、しとやかさ、すこやかさ、それらがやがて地位なり、財産というものなのだ。
頸飾り (新字新仮名) / ギ・ド・モーパッサン(著)
しろ百合はそれその人の高きおもひおもわはにほ紅芙蓉べにふようとこそ
みだれ髪 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
相愛あいあいしていなければ、文三に親しんでから、お勢が言葉遣いを改め起居動作たちいふるまいを変え、蓮葉はすはめて優にやさしく女性にょしょうらしく成るはずもなし
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
薔薇ばらの花はかしらに咲て活人は絵となる世の中独り文章而已のみかびの生えた陳奮翰ちんぷんかんの四角張りたるに頬返ほおがえしを附けかね又は舌足らずの物言ものいいを学びて口によだれを流すはつたなしこれはどうでも言文一途いっとの事だと思立ては矢もたてもなく文明の風改良の熱一度に寄せ来るどさくさ紛れお先真闇まっくら三宝荒神さんぽうこうじんさまと春のや先生を頼みたてまつ欠硯かけすずりおぼろの月のしずくを受けて墨摺流すりながす空のきおい夕立の雨の一しきりさらさらさっと書流せばアラ無情うたて始末にゆかぬ浮雲めがやさしき月の面影を思いがけなく閉籠とじこめ黒白あやめも分かぬ烏夜玉うばたまのやみらみっちゃな小説が出来しぞやと我ながら肝をつぶしてこの書の巻端に序するものは
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)