“撫子”のいろいろな読み方と例文
読み方(ふりがな)割合
なでしこ95.6%
とこなつ3.3%
カーネーション1.1%
(注)作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
「あら、お店の前の袖垣に、朝顔の咲いた、撫子なでしこの綺麗だった、千草煎餅の、知っていますとも——まあ、お見それ申して済まないことねえ。」
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
白桔梗しろききょう、桔梗の花が五つ六つ。白っぽけた撫子なでしこの花が二つ三つ。芝生しばふの何処かで、䗹〻〻じじじと虫が鳴いて居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
ここにはいつか庭から折らせて源氏が宮様へ贈ったのと同じ時の物らしい撫子なでしこの花の枯れたのがはさまれていた。大臣は宮にそれらをお見せした。
源氏物語:09 葵 (新字新仮名) / 紫式部(著)
ここらあたりは、スカンジナビアかどこか、北欧の景色に似ているという、薄白く霧のかかっている草野原で、土地の女の子が撫子なでしこをつんでいる。
貞操問答 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「——(釈玉——)とだけ、あとは、白い撫子なでしこを含んだように友染の襟にかくれていますが、あなたは、そのあとを御存じでしょうかしら。」
露萩 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「貴方、その欄干にかかりました真蒼まっさおな波の中に、あの撫子とこなつの花が一束流れますような、薄い紅色の影の映ったのを、もしか、御覧なさりはしませんか。」
浮舟 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
博士 存じております。竜胆りんどう撫子とこなつでございます。新夫人にいおくさまの、お心が通いまして、折からの霜に、一際色がえました。若様と奥様の血のおもかげでございます。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
白衣びやくえかすかに、撫子とこなつ小菊こぎくの、藤紫地ふじむらさきぢ裾模様すそもやう小袖こそでを、亡体ばうたいけた、のまゝの、……友染いうぜんよ。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そのうちに、一枚の菩提樹リンデンの葉チューリップの上に落つるを見、更に歩むうち、今度は広々とした池に出会いて、そのほとりに咲く撫子カーネーションを見るに、みな垂れ下がるほどおおいなるはなびらを持てり。
潜航艇「鷹の城」 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
それから、撫子カーネーションの垂れ下がるほどおおいなるはなびら——というところは、第一、撫子カーネーションには肉化インカーネーションの意味もあり、また、巨きな瓣を取り去ろうとするがなし得ない——というところは、その肉化した瓣が、膨れるのをおそれていたからなんです。
潜航艇「鷹の城」 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)