“蜩”のいろいろな読み方と例文
読み方(ふりがな)割合
ひぐらし79.5%
かなかな17.8%
かな/\1.4%
せみ1.4%
(注)作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
「や、山の上でひぐらしが鳴かあ、ちょッ、あいつが二三度鳴くと、直ぐに起きやあがる。花屋の女は早起だ、半日ここに居てたまるもんかい。」
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
Sサナトリウムを囲み、森を奏でるようなひぐらしを抜けて、彼は闇に白く浮いた路を歩いていた。その路は、隣りのG——町に続いていた。
鱗粉 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
けふもまたれて、ひぐらしいてゐるとかうおもつてゐて、しばらつてのちよく/\ると、それはほんとに
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
つづいて二百二十日の厄日やくびもまたそれとはほとんど気もつかぬばかり、いつに変らぬ残暑の西日にひぐらしの声のみあわただしく夜になった。
雨瀟瀟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
森にひぐらしの声が、聞える時分に、ふと汗ばんだわきのあたりに、涼しい風が当って目がさめると、芳太郎もぼんやりした顔をして、起き直っていた。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
窓際に差し出ている碧桐あおぎりの葉が黄色くむしばんで、庭続きのがけの方の木立ちにかなかないていた。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
暑い、暑い、くつわ虫が啼く、かなかなが啼く、くわつと外光が眼ににじむ、陰気な鶏頭がまた真赤に心のどん底から笑ひ出す。
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
金色こんじきに秋の日射の斜なし澄みとほる中、かなかなは啼きしきるなり、きて啼き刻むなり、二つ啼き、一つ啼き、また、こもごもに啼きはやむなり。
観相の秋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
山に遠くかなかなの沈む音をききながら峠を降ると、路は今迄とはまるで別な平凡な風景に変つてきた。
黒谷村 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
時として君は黒い覆面をかけ、手中に見えざるピストルを閃めかし、盗心を神聖視し、憔悴しては銀製の乞食となつて彷徨さまよひ歩るき、消え失せんとしては純金のかなかなの声を松の梢に聴いた。
愛の詩集:03 愛の詩集 (新字旧仮名) / 室生犀星(著)
あたま映画フイルムがキラキラキラキラひつくりかへる、かな/\が鳴く、お百度参りが泣く、三味線が囃し立てる。
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
目下の錯乱した官能には最早や轡虫とかな/\と、隣家の自鳴鐘めざましときりぎりすとの区別さへつかぬほど昼と夜とが顛倒され、色触の世界にも何時しか夏と冬とが入れ代つて了つてゐる。
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
おほとりの大を以てしてもせみの小を以てしても、同じくこの限を破ること能はざるなり。
人生に相渉るとは何の謂ぞ (新字旧仮名) / 北村透谷(著)