かなかな)” の例文
金色こんじきに秋の日射の斜なし澄みとほる中、かなかなは啼きしきるなり、きて啼き刻むなり、二つ啼き、一つ啼き、また、こもごもに啼きはやむなり。
観相の秋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
かなかなと共にとつぷり落ちた夜の太さに堪らない気持がして、かねて馴染の居酒屋へ酔ひに行こうかとも思案したけれども、尚満ち足らぬ気持があつたので
黒谷村 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
古城は川瀬に何をなげく、今もかなかなのなく森のまち、昔の行事は次第に廃れて、わづかに旧家の中に名残をとどめるばかりだ、何時か、あれら風雅も午睡の夢や物語となるであらう。
仙台の夏 (新字旧仮名) / 石川善助(著)
時として君は黒い覆面をかけ、手中に見えざるピストルを閃めかし、盗心を神聖視し、憔悴しては銀製の乞食となつて彷徨さまよひ歩るき、消え失せんとしては純金のかなかなの声を松の梢に聴いた。
愛の詩集:03 愛の詩集 (新字旧仮名) / 室生犀星(著)
窓際に差し出ている碧桐あおぎりの葉が黄色くむしばんで、庭続きのがけの方の木立ちにかなかないていた。そこらが古くさく汚く見えた。お庄は自分の古巣へ落ち着いたような心持で、低い窓に腰かけていた。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
かなかな
青い眼の人形 (新字新仮名) / 野口雨情(著)
暑い、暑い、くつわ虫が啼く、かなかなが啼く、くわつと外光が眼ににじむ、陰気な鶏頭がまた真赤に心のどん底から笑ひ出す。
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
山に遠くかなかなの沈む音をききながら峠を降ると、路は今迄とはまるで別な平凡な風景に変つてきた。
黒谷村 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
かなかなの啼き連るるなり。二つなり。啼き連るるなり。その二つ啼きやめばまた、こなたより啼きしきるなり。ただ一つ啼きしきるなり。孟宗の片日射なり。山松の遠日射なり。
かなかなの啼き連るるなり、二つなり、啼き連るるなり。その二つ啼きやめばまた、こなたより啼きしきるなり、ただ一つ啼きしきるなり。孟宗の片日射なり、山松の遠日射なり。
観相の秋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
時として君は黒い覆面をかけ、手中に見えざるピストルを閃めかし、盗心を神聖視し、憔悴しては銀製の乞食となつて彷徨さまよひ歩るき、消え失せんとしては純金のかなかなの声を松の梢に聴いた。
かなたには輝りきらふ海、こなたにはわたる山霧、山ぎりに山の施餓鬼のほとほとに果つる頃なり。金色こんじきに秋の日射の斜なし澄みとほる中、かなかなは啼きしきるなり。きて啼き刻むなり。
かなしければ昼と夜とのけぢめなしくつわ虫鳴くかなかなの鳴く
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
かなしきは気まぐれごころ宵のまに朝の風たちかなかなの啼く
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
かぎろひの夕莢雲ゆふさやぐもかなかなの啼くも早しつつあり
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
かぎろひの夕莢雲ゆふさやぐもかなかなの啼くも早しつつあり
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
なんとせうぞの。かなかなきん線条はりがねふるはす声も
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
つと来り、かなかななげく。
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
鳴きしきるかなかな、あはれ
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)