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夜寒
ついて
話しがある。(
猿どのの
夜寒訪ひゆく
兎かな)で、
水上さんも、
私も、
場所はちがふが、
兩方とも
交代夜番のせこに
出てゐる。
ゆうべ一しょに泊る
筈の
小金奉行が病気
引をしたので、寂しい
夜寒を一人で
凌いだのである。
傍には骨の太い、がっしりした
行燈がある。
灣口を
出づるまで、
私は
春枝夫人と
日出雄少年とを
相手に
甲板上に
佇んで、
四方の
景色を
眺めて
居つたが、
其内にネープルス
港の
燈光も
微かになり、
夜寒の
風の
身に
染むやうに
覺えたので