“夜寒:よさむ” の例文
“夜寒:よさむ”を含む作品の著者(上位)作品数
泉鏡花7
岡本綺堂7
北原白秋6
吉川英治6
芥川竜之介5
“夜寒:よさむ”を含む作品のジャンル比率
文学 > 日本文学 > 詩歌1.4%
文学 > 日本文学 > 小説 物語0.8%
文学 > 日本文学 > 日記 書簡 紀行0.5%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
小座敷の行燈の下で、客と主人が向かい合った。もう寝ようとしたところを叩き起こされて、春の夜寒よさむが半七の襟にしみた。
半七捕物帳:56 河豚太鼓 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ゆうべ一しょに泊るはず小金こがね奉行が病気びきをしたので、寂しい夜寒よさむを一人でしのいだのである。
護持院原の敵討 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
たとへば小さき花の夜寒よさむにうなだれ凋めるが日のこれを白むるころ悉くおきかへりてその莖の上にひらく如く 一二七—一二九
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
綿入れの節句もあしたに迫って、その夜寒よさむをよび出すようながんの声が御船蔵おふなぐらの屋根のあたりで遠くきこえた。
両国の秋 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ひややかすさまじ朝寒あささむ夜寒よさむ坐寒そぞろさむ漸寒ややさむ肌寒はださむしむ
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
それだけである。それに殿でんノ法印良忠が、宮のわきにしていた。人払いした客殿の灯の外は、夜寒よさむの虫声だけだった。
従って昼のほてりのまださめやらぬような陽気の年もあれば、けて夜寒よさむの気が身にみるような年もある。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
夜寒よさむの細い往来わうらい爪先上つまさきあがりにあがつてくと、古ぼけた板屋根の門の前へ出る。
漱石山房の秋 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
夜寒よさむの細い往来わうらい爪先上つまさきあがりにあがつてくと、古ぼけた板屋根の門の前へ出る。
東京小品 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
私はそれをたもとへ入れて、人通りの少ない夜寒よさむ小路こうじを曲折してにぎやかな町の方へ急いだ。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼らが長火鉢ながひばちの前で差向いにすわり合う夜寒よさむの宵などには、健三によくこんな質問を掛けた。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
 夜更けぬ。梢をわたる風の音遠く聞こゆ、ああこれ武蔵野の林より林をわたる冬の夜寒よさむこがらしなるかな。雪どけの滴声軒をめぐる
武蔵野 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
ナンシイ市を過ぎて仏蘭西フランスの国境を離れた汽車の中で二人は初秋はつあき夜寒よさむを詫びた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
「御前様、蜜柑をとの御意ださうに承はりましたが、この頃の夜寒よさむ如何いかがで御座りませうな。」
木賃きちん夜寒よさむの枕にも、雨の夜の苫船とまぶねからも、夢はこのところに宿るであろう。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その頃わたしはちっとばかり俳句をひねくっていたので、夜寒よさむの一句あるべきところなどとも思った。
怪獣 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
きみるや、夜寒よさむふすまうすければ、うらみふか後朝きぬ/″\も、そでつゝまばしのぶべし。
五月より (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
はへいたことはふまでもなからう。ねずみがそんなに跋扈ばつこしては、夜寒よさむ破襖やぶれぶすまうしよう。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
九月の末でも、ここらでは火鉢を引寄せたいくらいの夜寒よさむが人に迫ってくるように感じられました。
青蛙堂鬼談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
かれらは夜寒よさむを凌ぐために焚き火をして、その煙りに窒息したのではないかともおもわれたが、ふたりは松葉などを燃やした覚えはないと云い張っていた。
半七捕物帳:24 小女郎狐 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
秋の夜寒よさむも近づいたとはいいながら、綾の小袖を三枚もかさねて、錦の敷蒲団の上に坐っている四十あまりの大男は、館のあるじの高武蔵守師直であった。
小坂部姫 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
わたしは夜寒よさむの裏通りに、あかあかと障子へ火のうつつた、或家の玄関を知つてゐる。
わが散文詩 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
はるかなるひと旅路たびぢの果てにして壱岐いき夜寒よさむ曾良そらは死にけり
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
火鉢ひばちの火はいつか灰になって、夜寒よさむがひそやかに三人の姉妹にはいよっていた。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
もし夜寒よさむが甚しければ、少し離れた瓦斯煖炉ガスだんろにも赤々と火が動いてゐる。
漱石山房の秋 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
もし夜寒よさむが甚しければ、少し離れた瓦斯煖炉ガスだんろにも赤々と火が動いてゐる。
東京小品 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
くちごもって、お綱は、フイと心に何ものかをえがく様子である——打出うちでヶ浜の夜寒よさむから、月夜の風邪かぜはいっそう根深いものとなったらしい。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
趣味として夜寒よさむの粥を感ずる能力を持たない彼は、秋のよいの冷たさを対照に置く薄粥うすがゆの暖かさを普通の俳人以上に珍重してすする事ができた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
時雨ふる冬の夜寒よさむに啼くかけ赤羽根橋あかばねばしを我がわたるなり
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
大阪の町方には、河内かわち和泉いずみ、あの辺の田舎いなかから年期奉公ぼうこうに来ている丁稚でっちや下女が多いが、冬の夜寒よさむに、表の戸をめて
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
時々表を通る薄歯の下駄の響がえて、夜寒よさむがしだいに増して来る。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ふすまには猫の物む大きかげ夜寒よさむひそかに吾れもみをる
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
そのうちに一名がふと、聞き耳をてて、遠心的な眼をうつつにした。誰も彼も急に口をつぐんで夜寒よさむの壁を見まわした。どこかで嬰児あかごの泣き声が遠くしていた。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ふすまには猫の物む大きかげ夜寒よさむひそかに吾れもみをる
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
荒れはてし壁のくづれの柱根はしらねにおなじ夜寒よさむのこほろぎの啼く
礼厳法師歌集 (新字旧仮名) / 与謝野礼厳(著)
この日ごろ近き空地あきちに來てさやぐ軍馬ありけり風の夜寒よさむ
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
吊棚にい寄りくぐもる数のとり夜寒よさむは見居り竈火かまどびの揺れ
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
この日ごろ近き空地あきちに来てさやぐ軍馬ありけり風の夜寒よさむ
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
伝吉は夜寒よさむ田舎道いなかみちを山のかげにある地蔵堂へ行った。
伝吉の敵打ち (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
縁の下にはこおろぎが鳴いて、この頃の夜寒よさむが人々の襟にしみた。
この詩人の身うちには年わかき血あたたかくめぐりて、冬の夜寒よさむも物の数ならず、何事も楽しくかつ悲しく、悲しくかつ楽し、自ら詩作り、自ら歌い、自ら泣きて楽しめり。
(新字新仮名) / 国木田独歩(著)
てもこりと居るは畳目のけばをかひろふ夜寒よさむあかり
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
眼にとめて月のをさなさいふこゑはまかる人らしかど夜寒よさむ
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
はやり風はげしくなりし長崎の夜寒よさむをわが子に行かしめず
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
この夜寒よさむとどと襲へば戸はあけて眼をこすりをらす我なり将軍
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
なんのために夜寒よさむを甲板に出て来たか葉子は忘れていた。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
『——遠路、事多い中を、よう訪ねてもった。これは、徒然つれづれにわが身がうたもの、そなたは、いとど寒がり性であるそうな、夜寒よさむをふせぎ、よう身をいとうて下され』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しばらく佇んで見守っていたが、屋台のあるじが夜寒よさむの不景気を歎くように、悲しく細ぼそと夜啼よなきそばの叫び声を呼びつづけているばかりで、ついにひとりも客は這入らなかった。
老中の眼鏡 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
印旛沼しろき明りのとほどほに葦鴨啼けり月の夜寒よさむ
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
さるどのの夜寒よさむひゆくうさぎかな)で、水上みなかみさんも、わたしも、場所ばしよはちがふが、兩方りやうはうとも交代夜番かうたいよばんのせこにてゐる。
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
——新とも旧とも片のつけられないこの一塊ひとかたまりの配合を、なおの事夢らしくよそおっている肌寒はださむ夜寒よさむ闇暗くらやみ、——すべて朦朧もうろうたる事実から受けるこの感じは
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
病人と撞木しゆもくに寝たる夜寒よさむかな
澄江堂雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
足さすり手さすりぬる夜寒よさむかな
六百句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
つれなき風、からき夜寒よさむ
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
停車場に夜寒よさむの子守旅の我
六百句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
ころも打つ夜寒よさむの袖や
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのうちだんだんけるにしたがって、たださえあばらのことですから、そとつめたいかぜ遠慮えんりょなく方々ほうぼうからはいんで、しんしんと夜寒よさむにしみます。
安達が原 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
そうして此の二人も豊内記がしるす隼人正と同じように、九月下旬の夜寒よさむの風にふるえながら、往還おうかんの人の眼におびえながら、勝ち誇った関東方の軍勢や落ち行く敗兵の群がる街道を、幾日かかゝって上ったのであろう。
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
さて、つまみ、ちがへ、そろへ、たばねと、大根だいこのうろきのつゆ次第しだいしげきにつけて、朝寒あさざむ夕寒ゆふざむ、やゝさむ肌寒はだざむ夜寒よさむとなる。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
やぶ山茶花さざんかときれいな小川と、まして茶荘や寮構りょうがまえの多いここらあたり、礼者や太神楽だいかぐらの春めきもなく、日ねもす消えぬ道ばたの薄氷から早くもシンと身にみる夜寒よさむの闇がただようています。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
うちに言ってやったところでだめなのは知れているし、でき合いを買う余裕もないので、どうかして今年の冬はこれで間に合わせるつもりで、足のほうに着物や羽織やはかまをかけたが、日ごとにつのる夜寒よさむをしのぐことができなかった。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
が、夜寒よさむしろに焼尽して、塚のしるしの小松もあらず……荒寥こうりょうとして砂に人なき光景ありさまは、祭礼まつりに地震して、土の下に埋れた町の、壁の肉も、柱の血も、そのまま一落の白髑髏しゃれこうべと化し果てたる趣あり。
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
着飾きかざった芸者たちがみがき上げた顔をびりびりするような夜寒よさむに惜しげもなく伝法でんぽうにさらして、さすがに寒気かんきに足を早めながら、ばれた所に繰り出して行くその様子が、まざまざとものの音を聞いたばかりで葉子の想像には描かれるのだった。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
月稍〻西に傾きて、草葉に置ける露白く、桂川の水音かすかに聞えて、秋の夜寒よさむに立つ鳥もなき眞夜中頃まよなかごろ、往生院の門下に蟲と共に泣き暮らしたる横笛、哀れや、紅花緑葉の衣裳、涙と露にしぼるばかりになりて、濡れし袂につゝみかねたる恨みのかず/\は、そも何處までも浮世ぞや。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
が、櫛巻くしまきの髪に柔かなつやを見せて、せなに、ごつ/\した矢張やっぱ鬱金うこんの裏のついた、古い胴服ちゃんちゃんこを着て、身に夜寒よさむしのいで居たが、其の美人の身にいたれば、宝蔵千年ほうぞうせんねんよろいを取つて投懸なげかけた風情ふぜいがある。
貴婦人 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)