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撫子
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なでしこ
ふりがな文庫
“
撫子
(
なでしこ
)” の例文
中
(
なか
)
に
咲
(
さ
)
いたやうな……
藤紫
(
ふじむらさき
)
に、
浅黄
(
あさぎ
)
と
群青
(
ぐんじやう
)
で、
小菊
(
こぎく
)
、
撫子
(
なでしこ
)
を
優
(
やさ
)
しく
染
(
そ
)
めた
友染
(
いうぜん
)
の
袋
(
ふくろ
)
を
解
(
と
)
いて、
銀
(
ぎん
)
の
鍋
(
なべ
)
を、
園
(
その
)
はきら/\と
取
(
と
)
つて
出
(
で
)
た。
銀鼎
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
庭の
桔梗
(
ききょう
)
の紫
揺
(
うご
)
き、
雁来紅
(
けいとう
)
の葉の紅
戦
(
そよ
)
ぎ、
撫子
(
なでしこ
)
の淡紅
靡
(
なび
)
き、
向日葵
(
ひまわり
)
の黄
頷
(
うなず
)
き、夏萩の
臙脂
(
えんじ
)
乱れ、蝉の声、虫の
音
(
ね
)
も風につれて
震
(
ふる
)
えた。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
女郎花
(
おみなえし
)
、
撫子
(
なでしこ
)
それから何というか紫のまるい花と白とエンジ色のまことにしゃれた花と。それがコップにさして机の上にあります。
獄中への手紙:03 一九三六年(昭和十一年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
ふと、寝がえりを打つと、すぐ自分の鼻の先に、
撫子
(
なでしこ
)
に似た真っ赤な花が咲いていた。それは、
都人
(
みやこびと
)
の彼には、名も知れない花だった。
俊寛
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
撫子
(
なでしこ
)
、とりどりに取り散らし、
色襲
(
いろがさ
)
ねの
品評
(
しなさだ
)
めに、今から憂き身を
窶
(
やつ
)
し合うなど、およそ持明院派の公卿で笑いの洩れぬ門はなかった。
私本太平記:05 世の辻の帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
われ等が曙の色を認めたのは、もう森林を通りぬけて
桔梗
(
ききょう
)
や
撫子
(
なでしこ
)
や
女郎花
(
おみなえし
)
の咲き誇っている平原の中を行きつつある時であった。
富士登山
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
母親は二階の
床
(
とこ
)
の間に、
燃
(
も
)
ゆるような
撫子
(
なでしこ
)
と薄紫のあざみとまっ白なおかとらのおと
黄
(
き
)
いろいこがねおぐるまとを
交
(
ま
)
ぜて
生
(
い
)
けた。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
美しい色をした
撫子
(
なでしこ
)
ばかりを、
唐撫子
(
からなでしこ
)
、
大和
(
やまと
)
撫子もことに優秀なのを選んで、低く作った
垣
(
かき
)
に添えて植えてあるのが
夕映
(
ゆうば
)
えに光って見えた。
源氏物語:26 常夏
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
東風
(
こち
)
菫
(
すみれ
)
蝶
(
ちょう
)
虻
(
あぶ
)
蜂
孑孑
(
ぼうふら
)
蝸牛
(
かたつむり
)
水馬
(
みずすまし
)
豉虫
(
まいまいむし
)
蜘子
(
くものこ
)
蚤
(
のみ
)
蚊
(
か
)
撫子
(
なでしこ
)
扇
燈籠
(
とうろう
)
草花 火鉢
炬燵
(
こたつ
)
足袋
(
たび
)
冬の
蠅
(
はえ
)
埋火
(
うずみび
)
俳諧大要
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
南岸は崖になつてゐるが、北の岸は低く河原になつて、
楊柳
(
やなぎ
)
が密生してゐる。水近い礫の間には可憐な
撫子
(
なでしこ
)
が處々に咲いた。
鳥影
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
が、どこかその顔立ちにも、痛々しい
窶
(
やつ
)
れが見えて、
撫子
(
なでしこ
)
を散らしためりんすの帯さえ、
派手
(
はで
)
な紺絣の単衣の胸をせめそうな気がしたそうです。
妖婆
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
これに
騎
(
の
)
りて須坂を出ず。足指漸く
仰
(
あお
)
ぎて、遂につづらおりなる山道に入りぬ。ところどころに清泉
迸
(
ほとばし
)
りいでて、野生の
撫子
(
なでしこ
)
いと
麗
(
うるわ
)
しく咲きたり。
みちの記
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
……その風
薫
(
かを
)
る橋の
上
(
うへ
)
、ゆきつ、もどりつ、
人波
(
ひとなみ
)
のなかに交つて見てゐると、
撫子
(
なでしこ
)
の花、
薔薇
(
ばら
)
の
花
(
はな
)
、
欄干
(
らんかん
)
に溢れ、
人道
(
じんだう
)
のそとまで、瀧と溢れ出る。
牧羊神
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
床の間の花瓶には
撫子
(
なでしこ
)
がしおらしく生けてあって、壁には一面の琴が立ててあったが、もう眼が
眩
(
くら
)
んでいるお蝶には何がなにやら
能
(
よ
)
くもわからなかった。
半七捕物帳:07 奥女中
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
英雄豪傑の
汗馬
(
かんば
)
のあとを、
撫子
(
なでしこ
)
の咲く河原にながめて見ると、人は去り、山河は残るという
懐
(
おも
)
いが、詩人ならぬ人をまでも、詩境に誘い易いのであります。
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
馬車の中に置き忘れたのだらうと思つてた物が出たので、僕もふと絵具いじりがして見たくなつて、
此
(
この
)
頃はホテルの窓で
間
(
ま
)
があると
林檎
(
りんご
)
や
撫子
(
なでしこ
)
を
描
(
か
)
いて居る。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
芭蕉
(
ばしょう
)
、
芙蓉
(
ふよう
)
、
萩
(
はぎ
)
、
野菊
(
のぎく
)
、
撫子
(
なでしこ
)
、
楓
(
かえで
)
の枝。雨に打たれる
種々
(
いろいろ
)
な植物は、それぞれその枝や茎の強弱に従って
或
(
ある
)
ものは地に伏し或ものはかえって高く
反
(
そ
)
り返ります。
監獄署の裏
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
さては遠きに倦みたる眼を伏せて、
羊腸
(
やうちやう
)
たる山路の草かげに
嫋々
(
なよ/\
)
と靡ける
撫子
(
なでしこ
)
の花を憐れむも興あるべし。
松浦あがた
(新字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
その時、正太は床の間にある
花瓶
(
かびん
)
を持出して、直樹が持って来た百合だの
撫子
(
なでしこ
)
だのの花で机の上を飾った。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
冬は朝にゆふべに、淡い靄が必ずこの松原の松の根がたに漂うて居る。十二月には椿が咲いて——その頃まで
撫子
(
なでしこ
)
も咲いてゐるが——やがて春になる。春もいゝ。
沼津千本松原
(新字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
どうか書斎の窓の
撫子
(
なでしこ
)
の
鉢植
(
はちうえ
)
に、あなたのハンカチをおかけ下さいまし、それを合図に、私は、何気なき一人の訪問者としてお邸の玄関を訪れるでございましょう。
人間椅子
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
白根葵
(
しらねあおい
)
、
小岩鏡
(
こいわかがみ
)
、白い花の
撫子
(
なでしこ
)
、
日光黄菅
(
にっこうきすげ
)
、白花石楠などが花盛りで、一見お花畑のようである。
此処
(
ここ
)
から瞰下すると幽ノ沢の全渓が雪で埋められているのが分った。
利根川水源地の山々
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
中で柳模様は好んで
画
(
えが
)
かれた画題であって、その変化が多い。この外
撰
(
えら
)
ばれた画はあるいは
撫子
(
なでしこ
)
、あるいは桐、または竹、鶴、
藤
(
ふじ
)
、
蒲公英
(
たんぽぽ
)
、
菖蒲
(
あやめ
)
、あるいは波、文字等。
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
しかしそういう日に
撫子
(
なでしこ
)
を飾りにすることも空想なれば、次の句の弁慶の宮とても実在ではない。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
思い切って大柄な
籠目崩
(
かごめくず
)
しのところどころに、
萩
(
はぎ
)
と、
撫子
(
なでしこ
)
と、白抜きの波の模様のあるもので、彼女の持っている衣裳の中でも、分けて人柄に
篏
(
は
)
まっているものであったが
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
与平治
(
よへいじ
)
茶屋附近虫取
撫子
(
なでしこ
)
の盛りを過ぎて開花するところより、一里茶屋に至るまで、
焦砂
(
せうさ
)
を
匂
(
にほ
)
はすに花を以てし、夜来の宿熱を
冷
(
ひ
)
やすに刀の如き
薄
(
すゝき
)
を以てす、
雀
(
すゞめ
)
おどろく
茱萸
(
ぐみ
)
に
霧の不二、月の不二
(新字旧仮名)
/
小島烏水
(著)
その画会では四種の三幅対と、
撫子
(
なでしこ
)
を描いた二曲
屏風
(
びょうぶ
)
とが、彼の自信のある作であった。
おれの女房
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「
山賤
(
やまがつ
)
の垣は荒るとも」などと云う古歌を思い出されてか、そんな
撫子
(
なでしこ
)
なんぞとあわれな名をいつのまにかお附けになっていられるのも、本当に心憎いほどなお思いやりだこと。
ほととぎす
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
二つの眼を四つに映し、顔の代りに煎餅みたいなものを見せてくれる鏡、それから最後に、聖像の後ろへ束にして差しこんである
香
(
にお
)
い草と
撫子
(
なでしこ
)
だが、こいつはすっかり
干乾
(
ひから
)
びているので
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
含
(
ふく
)
めど
愛
(
あい
)
らしき
雨
(
あめ
)
の
撫子
(
なでしこ
)
しほれて
床
(
ゆか
)
し三
郎
(
らう
)
の
心
(
こゝろ
)
何
(
なん
)
と
知
(
し
)
らねど
優子
(
いうこ
)
の
文
(
ふみ
)
を
五月雨
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
町はずれの怪しげな
饂飩
(
うどん
)
屋に入って、登山の支度をし、秩父街道をすこしいって、上影森村の辺から左へ間道を抜けると、
愈
(
いよいよ
)
山麓の
樹立途
(
こだちみち
)
は爪先上りとなり、色の好い
撫子
(
なでしこ
)
の咲いている
草原
(
くさばら
)
の中に
武甲山に登る
(新字新仮名)
/
河井酔茗
(著)
優雅な
蒲公英
(
たんぽぽ
)
や
可憐
(
かれん
)
な赤まま草を、
罌粟
(
けし
)
や
撫子
(
なでしこ
)
と
優劣
(
ゆうれつ
)
をつけたろう。
かの女の朝
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「飯島の家はともかく、恵那にある土地ってのは、付知川べりのひどい荒地で、水の
涸
(
か
)
れた
磧
(
かわら
)
のつづきに、河原
撫子
(
なでしこ
)
が咲いている写真を見たことがあったわ。あんなもの、財産なんていうのかしら」
あなたも私も
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
ぬしいはずとれなの筆の水の夕そよ墨足らぬ
撫子
(
なでしこ
)
がさね
みだれ髪
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
父は照り母は涙の露となりおなじ
慧
(
めぐみ
)
にそだつ
撫子
(
なでしこ
)
般若心経講義
(新字新仮名)
/
高神覚昇
(著)
尚白にも「よろ/\と
撫子
(
なでしこ
)
残る枯野かな」
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
かげに来て米
炊
(
かし
)
ぐ
泥舟
(
どろぶね
)
の
鉢
(
はち
)
の
撫子
(
なでしこ
)
邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
河原の
撫子
(
なでしこ
)
野口雨情民謡叢書 第一篇
(新字旧仮名)
/
野口雨情
(著)
表紙の
画
(
え
)
の
撫子
(
なでしこ
)
に取添えたる
清書
(
きよがき
)
草紙、まだ
手習児
(
てならいこ
)
の作なりとて
拙
(
つたな
)
きをすてたまわずこのぬしとある処に、
御名
(
おんな
)
を記させたまえとこそ。
三枚続
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
南岸
(
みなみぎし
)
は崖になつてゐるが、北の岸は低く河原になつて、
楊柳
(
やなぎ
)
が密生してゐる。水近い
礫
(
こいし
)
の間には
可憐
(
いたいけ
)
な
撫子
(
なでしこ
)
が処々に咲いた。
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
ここにはいつか庭から折らせて源氏が宮様へ贈ったのと同じ時の物らしい
撫子
(
なでしこ
)
の花の枯れたのがはさまれていた。大臣は宮にそれらをお見せした。
源氏物語:09 葵
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
ここらあたりは、スカンジナビアかどこか、北欧の景色に似ているという、薄白く霧のかかっている草野原で、土地の女の子が
撫子
(
なでしこ
)
をつんでいる。
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
土手にはやはり発戸
河岸
(
がし
)
のようにところどころに赤松が生えていた。しの竹も茂っていた。朝露のしとどに置いた草原の中に
薊
(
あざみ
)
やら
撫子
(
なでしこ
)
やらが咲いた。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
女郎花
(
おみなえし
)
、
撫子
(
なでしこ
)
、女郎花に似て白い花(
男郎花
(
おとこえし
)
とも違う)それにあざみなどが咲き満ちているさまが美しかった。
別府温泉
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
ここには自分の建てた地蔵菩薩、その台座のあとさきに植えた
撫子
(
なでしこ
)
も雪に埋れたのを
掻
(
か
)
き起して、あたり隈なく箒をあて、持って来た香と花とを
手向
(
たむ
)
ける。
大菩薩峠:32 弁信の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「実はね、津の国屋の惣領娘がわずらいつく二、三日まえの晩に、近所の者が外へ出ると、町内の角で一人の娘に逢った。娘は
撫子
(
なでしこ
)
の模様の
浴衣
(
ゆかた
)
を着て……」
半七捕物帳:16 津の国屋
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
白桔梗
(
しろききょう
)
、桔梗の花が五つ六つ。白っぽけた
撫子
(
なでしこ
)
の花が二つ三つ。
芝生
(
しばふ
)
の何処かで、
䗹〻〻
(
じじじ
)
と虫が鳴いて居る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
あの利口さうな女の童は、
撫子
(
なでしこ
)
重
(
がさ
)
ねの薄物の
袙
(
あこめ
)
に、色の濃い袴を引きながら、丁度こちらへ歩いて来る。
好色
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
さては
村雨
(
むらさめ
)
の通つたのか。何となく
明
(
あか
)
るいぞ。
風
(
かぜ
)
のまにまにふはふはと、
撫子
(
なでしこ
)
が匂ふ、夏水仙が匂ふ、
薔薇
(
ばら
)
が匂ふ、土が匂ふ。ルウヴル
宮
(
きゆう
)
の屋根の上、なさけの星も傾いた。
牧羊神
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
下を眺めると
雛罌粟
(
ひなげし
)
や
撫子
(
なでしこ
)
や野菊や矢車草の花の中には青い
腰掛
(
バンク
)
が二つ置かれて居る。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
撫
漢検準1級
部首:⼿
15画
子
常用漢字
小1
部首:⼦
3画
“撫子”で始まる語句
撫子染
撫子貝
撫子模様