あだ)” の例文
旧字:
その中には、森啓之助が人しれず気に病んでいるところのあだな女と合羽をかぶった仲間ちゅうげんも、混雑にまぎれて後ろ向きに座をしめていた。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
庭上にね下りようとした平馬をあだっぽく押し止めて、縁側に、スラリとした姿を現した一人の女性——
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
少し神經質な青白い顏、紅いくちびるが不思議にあだめいて、凉しい眼が非凡な魅力でした。
何処どこかに一点のあだを存しておる、其処そこが暮春の怨みに相当するのである。
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
夕されば、少女をとめの姿、つねよりもあだめきて
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
揚羽蝶あげはのちょううるしの紋がはげ落ちた衣裳つづらが荷駄の背に二つばかり、小道具と木戸役らしい男が二人、そして馬の背中の荷物の間にはさまっているあだッぽい女と。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
怨じ顔の目元が、蜜酒の酔いに、うっすりと染まって、言うばかりなくあだだ。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)