あでや)” の例文
旧字:
高貴の姫君と申しましても恥ずかしからぬあでやかさ、それに、生花、和歌、茶の湯、曲舞くせまい、小鼓、何んでも出来て、その上才智も人に勝れ
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
プーンと洩れてくる酒の薫り、朱の塗膳、銀の銚子、衣桁いこうの乱れぎぬ、すべてがなまめいて取り散らされている中に、御方は男と向い合ってあでやかな笑顔を微酔に染めていた。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
薄化粧した御顔のすこし上気のぼせて耳の根元までもほんのり桜色に見える御様子のあでやかさ、南向に立廻した銀屏風びょうぶ牡丹花ぼたんの絵を後になすって、御物語をなさる有様は、言葉にも尽せません。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
泣いた後でお化粧を直した上にトランプの勝負に上気していたから、殊にあでやかに見えた。清之介君は恍惚となって、意見をしようとして反対あべこべに取っちめられたことも何も彼も忘れてしまった。
女婿 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
灯火ともしびに見れば、油絵のようなあでやかな人である。顔を少し赤らめている。
千鳥 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
「これはあでやか、あでやか。……大したもんですねえ、とど助さん」
お勘、アッハッハッ、女勘助、男とは見えぬあでやかさ、寛永寺の坊主などいやな眼をして、さぞ見送ることだろうな。
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「いや、いつ見てもあでやかだの。一つまいろうか」
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一人はあでやかな色若衆、一人は裸体の雲助姿、いや面白い対照とりあわせじゃ——何、山道に迷ったとな? この雪に野宿をしようとか? なかなか風流の心掛けじゃの。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
あでやかな色の大振り袖、燃え立つばかりの緋の扱帯しごき刺繍ぬいをちりばめた錦の帯、姿は妖嬌たる娘ではあるが頭を見れば銀の白髪、顔を見れば縦横のしわ、百歳過ぎた古老婆が
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「さあこの盃で呑むがよい。そちがあでやかに酔った顔を久しぶりでわしは見たいのじゃ」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「おりますおります、あでやかなもので。あっ、笑いましてございます」
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「いるぞいるぞ! おっ、笑った。ううむ、どうも、あでやかなものだ」
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)