天明五年十一月、三日の夜の深更であった。宵の間にかくれた月の後、空には星ばかりが繁くまばたき、冬の寒さをいや増しに思わせ、遠くで吠え立てる家護りの犬の、声さえ顫えて聞こえなされた。 大江戸の町々は寝静まり、掛け行燈には火影さえなく、夜を警し …
著者 | 国枝史郎 |
ジャンル | 文学 > 日本文学 > 小説 物語 |
初出 | 「東京日日新聞」1933(昭和8)年11月7日~1934(昭和9)年4月20日 |
文字種別 | 新字新仮名 |
読書目安時間 | 約6時間22分(500文字/分) |
朗読目安時間 | 約10時間36分(300文字/分) |