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浸
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にじ
ふりがな文庫
“
浸
(
にじ
)” の例文
細身の
蝋塗鞘
(
ろふぬりざや
)
、
赤銅
(
しやくどう
)
と金で
牡丹
(
ぼたん
)
の
目貫
(
めぬき
)
、
柄
(
つか
)
絲に少し血が
浸
(
にじ
)
んで居りますが、すべて華奢で贅澤で、三所物も好みがなか/\に厭味です。
銭形平次捕物控:199 蹄の跡
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
(興奮しつつ、びりびりと傘を破く。ために、
疵
(
きず
)
つき、指さき腕など
血汐
(
ちしお
)
浸
(
にじ
)
む——取直す)——畜生——畜生——畜生——畜生——
山吹
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
悪食
(
あくじき
)
に彷彿すとあるが、ちょうどそれと同じような作用を、このハンカチに
浸
(
にじ
)
んだ毒薬が起しているので、如何に烈しい毒であるかは
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
見ると其の人夫の頭を巻いた衣片には
生
(
なま
)
なました血が
浸
(
にじ
)
んで、衣片の下から
覗
(
のぞ
)
いている頬から下の色は蒼黒くなって血の気が失せていた。
海神に祈る
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
それは、地味な衣裳と無造作な髪の形が、すんなりとしたからだつきに、一種のつゝましい媚態のようなものを
浸
(
にじ
)
み出させていることだつた。
光は影を
(新字新仮名)
/
岸田国士
(著)
▼ もっと見る
だんだん夕暮れて行くあたりの陰影が忍び込んで、そこの空気はぼんやり翳り、長い廊下の彼方に、細まつて円錐形に見え、黝く
浸
(
にじ
)
んで物の輪郭もぼやけてゐた。
間木老人
(新字旧仮名)
/
北条民雄
(著)
見れば秀子は左の
前額
(
ひたい
)
に少しばかり怪我をして血が
浸
(
にじ
)
んで居る、仆れる拍子に何所かで打ったのであろう、余は手巾を取り出し、其の血を拭いて遣ろうとするに
幽霊塔
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
偶然にも、その時計は、その偽りの贈物は、お兄さんの血で、真赤に染められていたのです。衝突のときに、
硝子
(
ガラス
)
が壊れたと見え、血が時計の胴に
浸
(
にじ
)
んでいたのです。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
何日
(
いつ
)
ぞやは障子を開けておいたのが惡いとかいつて、突然手近にあつた子供の
算盤
(
そろばん
)
で細君の
横面
(
よこつら
)
を思ひきり
抛
(
なぐ
)
つた。細君の顏はみる/\腫れ上つた、眼にも血が
浸
(
にじ
)
んで來た。
一家
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
弱い日の光りが、雲に
浸
(
にじ
)
んで、其等の景色をほんのりと明るく見せていたかと思うと、急に風が変って、雨が降って来る。
晩方
(
ばんがた
)
にかけては、空は暗くなって、
霰
(
あられ
)
や、
霙
(
みぞれ
)
なども混って降って来た。
僧
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
地平の彼方に血の
浸
(
にじ
)
む頃
傾ける殿堂
(新字旧仮名)
/
上里春生
(著)
その幹深く枝々を
透
(
すか
)
して、ぼーッと
煤
(
すす
)
色に
浸
(
にじ
)
んだ燈は、影のように障子を映して、其処に
行燈
(
あんどう
)
の
灯
(
とも
)
れたのが遠くから認められた。
露萩
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
私はひどく眠かつたので幾らかよろよろしながらその男の所まで行くと、彼はうつぶせになつて、枕の上にのり出し、片手には赤黒く血の
浸
(
にじ
)
んだガーゼを掴んで喘いでゐるのである。
続癩院記録
(新字旧仮名)
/
北条民雄
(著)
軽い出血があつたと見え、その白つぽい時計の胴に、所々真赤な血が
浸
(
にじ
)
んでゐた。
真珠夫人
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
平次の心には、この不幸な男に対する
憐愍
(
あわれみ
)
が、油のごとく
浸
(
にじ
)
む様子でした。
銭形平次捕物控:056 地獄から来た男
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
ぬしありやまた
新
(
あらた
)
に
調
(
ととの
)
えたか、それは知らない、ただ黒髪の気をうけて、枕紙の真新しいのに、ずるずると女の油が
浸
(
にじ
)
んでいた。
露萩
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
軽い出血があったと見え、その白っぽい時計の胴に、所々真赤な血が
浸
(
にじ
)
んでいた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
畳はかなり新しく、まだほのかに青みを有つてゐたが、処々に破れ目や、赤黒く血の
浸
(
にじ
)
んだ跡等があつた。壁は白塗りであつたが、割れ目や、激しく拳固で撲りつけたらしい跡があつた。
間木老人
(新字旧仮名)
/
北条民雄
(著)
平次の心には、この不幸な男に對する
憐愍
(
あはれみ
)
が、油の如く
浸
(
にじ
)
む樣子でした。
銭形平次捕物控:056 地獄から来た男
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
自分
(
じぶん
)
に
返
(
かへ
)
りました
時
(
とき
)
、
兩臂
(
りやうひぢ
)
と、
乳
(
ちゝ
)
の
下
(
した
)
と、
手首
(
てくび
)
の
脈
(
みやく
)
と
方々
(
はう/″\
)
に
血
(
ち
)
が
浸
(
にじ
)
んで、
其處
(
そこ
)
へ
眞白
(
まつしろ
)
な
藥
(
くすり
)
の
粉
(
こな
)
が
振掛
(
ふりか
)
けてあるのが
分
(
わか
)
りました。
みつ柏
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
そして、最後に、母が刺されたその夜に、身に付けてゐた、白い肌襦袢に、手を触れなければならなかつた。それには、所々血が
浸
(
にじ
)
んでゐた。美奈子は、それに手を触れるのが恐ろしかつた。
真珠夫人
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
その前に彼は立つたが、斜に貼りつけられた貸家札が、黒く風雨に
浸
(
にじ
)
んでゐた。彼は裏へ廻つて見た。水道の来ない時からあつた井戸が、そのままあつた。その井戸でよく面を洗つたものだつた。
月日
(新字旧仮名)
/
北条民雄
(著)
指の先が色に染まって、赤くなって血が
浸
(
にじ
)
んだようなのを
怪
(
あやし
)
んで聞くと、今日お墓参りをした時濡れ手で線香を持ったといって
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
が、ようやくスイッチを
捻
(
ひね
)
ったとき、明るい光は、痛ましい光景を、マザ/\と照し出した。母の白い
寝衣
(
ねまき
)
、白いシーツ、白い毛布に、夜目には赤黒く見える血潮が、ベタ/\と一面に
浸
(
にじ
)
んでいる。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
三月四日の
夜
(
よ
)
の事であった。宵に小降りのした雨上り、月は潜んで
朧
(
おぼろ
)
、と云うが、黒雲が
浸
(
にじ
)
んで暗い、
一石橋
(
いちこくばし
)
の欄干際。
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
霜月
(
しもつき
)
の末頃である。一晩、陽気違ひの生暖い風が吹いて、むつと雲が蒸して、火鉢の
傍
(
そば
)
だと
半纏
(
はんてん
)
は脱ぎたいまでに、
悪汗
(
わるあせ
)
が
浸
(
にじ
)
むやうな、其暮方だつた。
夜釣
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
霜月
(
しもつき
)
の
末頃
(
すゑごろ
)
である。
一晩
(
ひとばん
)
、
陽氣違
(
やうきちが
)
ひの
生暖
(
なまぬる
)
い
風
(
かぜ
)
が
吹
(
ふ
)
いて、むつと
雲
(
くも
)
が
蒸
(
む
)
して、
火鉢
(
ひばち
)
の
傍
(
そば
)
だと
半纏
(
はんてん
)
は
脱
(
ぬ
)
ぎたいまでに、
惡汗
(
わるあせ
)
が
浸
(
にじ
)
むやうな、
其
(
その
)
暮方
(
くれがた
)
だつた。
夜釣
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
……トタンに額を打って、
鼻頭
(
はなづら
)
に
浸
(
にじ
)
んだ、大粒なのに、むっくと起き、枕を取って
掻遣
(
かいや
)
りながら、立膝で、じりりと寄って、肩まで
捲
(
まく
)
れた
寝衣
(
ねまき
)
の袖を引伸ばしながら
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
はッと声に出して、思わず
歎息
(
ためいき
)
をすると、
浸
(
にじ
)
む涙を、両の腕。……
面
(
おもて
)
をひしと
蔽
(
おお
)
うていた。
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
よじって伸ばす白い
咽喉
(
のど
)
が、
傷々
(
いたいた
)
しく伸びて、
蒼褪
(
あおざ
)
める頬の色が見る見るうちに、その咽喉へ
隈
(
くま
)
を薄く
浸
(
にじ
)
ませて、
身悶
(
みもだえ
)
をするたびに、
踏処
(
ふみどころ
)
のない、つぼまった
蹴出
(
けだし
)
が乱れました。
甲乙
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
細雨
(
こさめ
)
に
浸
(
にじ
)
むだのを
見
(
み
)
ると——
猶予
(
ためら
)
はず
其方
(
そちら
)
へ
向
(
む
)
いて、
一度
(
いちど
)
斜
(
はす
)
に
成
(
な
)
つて
折曲
(
をれまが
)
つて
列
(
つらな
)
り
行
(
ゆ
)
く。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
が、あれ、どこともなく瀬の音して、雨雲の一際黒く、
大
(
おおい
)
なる蜘蛛の
浸
(
にじ
)
んだような、峰の天狗松の常燈明の一つ
灯
(
び
)
が、地獄の一つ星のごとく見ゆるにつけても、どうやら三体の通魔めく。
茸の舞姫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と言いながら白に浅黄を
縁
(
へり
)
とりの
手巾
(
ハンケチ
)
で、脇を
圧
(
おさ
)
えると、脇。膝をずぶずぶと圧えると、膝を、濡れたのが襦袢を
透
(
とお
)
して、明石の
縞
(
しま
)
に
浸
(
にじ
)
んでは、手巾にひたひたと桃色の雫を染めた。——
第二菎蒻本
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
お澄は、胸白く、下じめの
他
(
ほか
)
に血が
浸
(
にじ
)
む。……
繻子
(
しゅす
)
の帯がするすると鳴った。
鷭狩
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
猫が鳴いた事は、誰の耳にも聞えたが、場合が場合で、一同が言合わせたごとく、その四角な、大きな、
真暗
(
まっくら
)
な穴の、
遥
(
はる
)
かな底は、上野天王寺の森の黒雲が灰色の空に
浸
(
にじ
)
んで
湧上
(
わきあが
)
る、窓を見た。
吉原新話
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
私は冷い汗を流した、汗と
一所
(
いっしょ
)
に
掌
(
てのひら
)
に血が
浸
(
にじ
)
んだ。
甲乙
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
灯前
(
あかりさき
)
の木の葉は白く、陰なる
朱葉
(
もみじ
)
の色も
浸
(
にじ
)
む。
唄立山心中一曲
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
浸
常用漢字
中学
部首:⽔
10画
“浸”を含む語句
水浸
浸潤
浸々
浸水
煮浸
浸入
入浸
浸染
浸透
浸礼
浸酒
雨浸
浸剤
浸出
浸込
浸蝕
酒浸
浸漸
浸附
打浸
...