虹霓にじ)” の例文
彼女の方でも嫌悪と怨恨えんこんのごちゃまぜになった眼で夫を睨み返した。細君にも自分の計画や思惑や、虹霓にじのような夢想があるのだった。
富籤 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
何しろこんな時は気を落ちつけて寝るのが肝心かんじんだと堅く眼を閉じて見る。すると虹霓にじにして振りくように、眼の前が五色の斑点でちらちらする。
琴のそら音 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
十歳ととせ虹霓にじ、千とせはこれ
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
春のを半透明にくずし拡げて、部屋一面の虹霓にじの世界がこまやかに揺れるなかに、朦朧もうろうと、黒きかとも思わるるほどの髪をぼかして、真白な姿が雲の底から次第に浮き上がって来る。その輪廓りんかくを見よ。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
生葉いくはの戀虹霓にじにまとふ
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)