入染にじ)” の例文
涙含なみだぐんだような顔をして、それを脊負って行く順吉のいじらしい後姿を見送っているお島の目には、涙が入染にじんで来た。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
薄紫色に大体は癒着ゆちゃくしているように見えながら、探りを入れたら、深く入りそうに思える穴もあって、そこから淋巴液りんぱえきのようなものが入染にじんでいた。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
あの時分の若い痴呆ちほうな恋が、いつの間にか、水にとかされて行く紅の色か何ぞのように薄く入染にじんでいるきりであった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
細君はおろおろしながら、そのからだりついてゐた。額に入染にじ脂汗あぶらあせを拭き取つたり頭をさすつたり、まるで赤ん坊をあやす慈母のやうな優しさであつた。
和解 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
大分たってからみんなの前へ呼ばれていった時、お島はやっと目に入染にじんでいる涙をいた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
木膚きはだくろずんだ縁や軒などに入染にじんでいるのを懐かしく感ずる以外に、とてもこれ以上簡素には出来ないであろうと思われるほど無駄を省いた落着きのよさが、今がさつな新築の書斎に坐ってみて
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
額に入染にじむ冷たい脂汗あぶらあせもひいて、はやい脈もいくらかしずまって来た。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)