“沾”のいろいろな読み方と例文
読み方割合
うるお27.7%
19.1%
うるほ19.1%
うる19.1%
ぬら6.4%
しめ4.3%
2.1%
ぬれ2.1%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
板屋根の上のしたたるばかりにうるおいたるは昨夜の雲のやどりにやあらん。よもすがら雨と聞きしもかけひの音、谷川の響なりしものをとはや山深き心地ぞすなる。
旅の旅の旅 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
支線の車に乗り換へると、ローラも涙にれた顔を直すためにヷニテイ・ケースを膝の上に取りあげると一心になつて鏡をのぞきはぢめた。
南風譜 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
夫れ逍遙子が一味の雨は、もろ/\の草木をうるほすに足りなむ。然れども類想と個想との別はおそらくは梅と櫻との別にことなるべし。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
が、その中でも目についたのは、欄干らんかんそとの見物の間に、芸者らしい女がまじっている。色の蒼白い、目のうるんだ、どこか妙な憂鬱な、——
一夕話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
しきいめを見つ。沙本さほかたより、暴雨はやさめり來て、にはかに吾が面をぬらしつ。また錦色の小蛇へみ、我が頸にまつはりつ。
慎太郎は父の云いつけ通り、両手のたなごころに母の手を抑えた。母の手は冷たい脂汗あぶらあせに、気味悪くじっとりしめっていた。
お律と子等と (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
それから二十年ばかりたつたのち、彼は雪国ゆきぐにの汽車の中に偶然、彼女とめぐり合つた。窓の外が暗くなるのにつれ、めつたくつ外套ぐわいたうの匀ひが急に身にしみる時分だつた。
鬼ごつこ (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
大忙おおいそぎで下女に布を持ち来らしめ、さしに掛かろうとすると、不思議や小便たちまち催して、忍ぶべうもあらず、これはたまらぬ布がぬれると、庭へ飛び下りて身をかがむる、この時遅くかの時早く