トップ
>
沾
>
うるほ
ふりがな文庫
“
沾
(
うるほ
)” の例文
夫れ逍遙子が一味の雨は、もろ/\の草木を
沾
(
うるほ
)
すに足りなむ。然れども類想と個想との別はおそらくは梅と櫻との別に
殊
(
こと
)
なるべし。
柵草紙の山房論文
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
熊野川の谷を遡る時も、瀞八町の渓に船を泛べる時も、
玉置山
(
たまきやま
)
に
大塔
(
おほたふ
)
の宮の遺跡を偲ぶ時も、柔かな
細
(
こまか
)
い雨が常に私の旅の衣を
沾
(
うるほ
)
して居た。
春雨にぬれた旅
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
瀧口、『
優
(
いう
)
に哀れなる御述懷、覺えず法衣を
沾
(
うるほ
)
し申しぬ。
然
(
さ
)
るにても如何なれば都へは行き給はで、此山には上り給ひし』。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
その時でさへ、飲めるのは僅に
喉
(
のど
)
を
沾
(
うるほ
)
すに足る程の少量である。そこで芋粥を飽きる程飲んで見たいと云ふ事が、久しい前から、彼の唯一の欲望になつてゐた。
芋粥
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
漸くにして、ベルナルドオとアヌンチヤタとの上に想ひ及ぶとき、われは
頬
(
ほ
)
の邊の
沾
(
うるほ
)
ふを覺えき。涙にやありし、又窓の下なる石垣に
中
(
あた
)
りし波の碎け散りて面に
濺
(
そゝ
)
ぎたるにやありし。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
▼ もっと見る
堪らない冷汗ばかりに
沾
(
うるほ
)
はされるだけだつた。
山を越えて
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
満枝は始て涙に
沾
(
うるほ
)
へる目を挙げたり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
日頃から老実な彼が、つつましく伏眼になつて、何やらかすかに口の中で
誦
(
ず
)
しながら、静に師匠の唇を
沾
(
うるほ
)
してゐる姿は、恐らく誰の見た眼にも
厳
(
おごそか
)
だつたのに相違ない。
枯野抄
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
袂
(
たもと
)
に寒き
愛宕下
(
おたぎおろ
)
しに秋の哀れは
一入
(
ひとしほ
)
深く、まだ露
下
(
お
)
りぬ
野面
(
のもせ
)
に、我が袖のみぞ早や
沾
(
うるほ
)
ひける。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
さうして見れば、時代が既に推移した今、
恩讎
(
おんしう
)
両
(
ふた
)
つながら滅した今になつて、
枯骨
(
ここつ
)
が
朝恩
(
てうおん
)
に
沾
(
うるほ
)
つたとて、何の不可なることがあらうぞ。私はかう思つて同郷の先輩に
謀
(
はか
)
り、当路の大官に
愬
(
うつた
)
へた。
津下四郎左衛門
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
続いて乙州、正秀、之道、木節と、病床を囲んでゐた門人たちは、順々に師匠の唇を
沾
(
うるほ
)
した。が、その間に芭蕉の呼吸は、一息毎に細くなつて、数さへ次第に減じて行く。喉も、もう今では動かない。
枯野抄
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
沾
漢検1級
部首:⽔
8画
“沾”を含む語句
教儂不沾裙
恩沾無涯
沾圃
沾峩
沾徳
沾汚
沾沾
沾蓬
菊岡沾涼
露沾