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沾
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うるお
ふりがな文庫
“
沾
(
うるお
)” の例文
板屋根の上の
滴
(
したた
)
るばかりに
沾
(
うるお
)
いたるは昨夜の雲のやどりにやあらん。よもすがら雨と聞きしも
筧
(
かけひ
)
の音、谷川の響なりしものをとはや山深き心地ぞすなる。
旅の旅の旅
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
これを
粥
(
かゆ
)
としまた
鰹節
(
かつぶし
)
を
煮出
(
にだ
)
して
用
(
もちう
)
れば大に
裨益
(
ひえき
)
あればとて、
即時
(
そくじ
)
、
价
(
しもべ
)
を
馳
(
は
)
せて
贈
(
おく
)
られたるなど、余は
感泣
(
かんきゅう
)
措
(
お
)
くこと
能
(
あた
)
わず、
涕涙
(
ているい
)
しばしば
被
(
ひ
)
を
沾
(
うるお
)
したり。
瘠我慢の説:05 福沢先生を憶う
(新字新仮名)
/
木村芥舟
(著)
伝吉は死骸にとりすがったなり、いつまでも一人じっとしていたが、涙は不思議にも全然
睫毛
(
まつげ
)
を
沾
(
うるお
)
さなかった。その代りにある感情の火のように心を
焦
(
こ
)
がすのを感じた。
伝吉の敵打ち
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
数年前予が今この文を草し居る書斎に対して住みいた芸妓置屋の女将が愛翫したカジカ蛙が合掌して死んだは信心の厚い至りと
喋々
(
ちょうちょう
)
して、茶碗の水ででも
沾
(
うるお
)
したものか
十二支考:07 猴に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
扁桃
(
アメンド
)
のような恰好をした
沾
(
うるお
)
いのある眼、微笑を含んだ赤い脣、油をてか/\つけた鼻髭、最新流行の刈込をした頭、婦人たちのいわゆる「好いたらしい」といったような厭らしさを持った綺麗な顔
クロイツェル・ソナタ:01 クロイツェル・ソナタ
(新字新仮名)
/
レオ・トルストイ
(著)
▼ もっと見る
いつの間にか船首をめぐらせる端艇小さくなりて人の顔も分き難くなれば
甲板
(
かんぱん
)
に長居は
船暈
(
ふなよい
)
の元と窮屈なる船室に
這
(
は
)
い込み用意の葡萄酒一杯に喉を
沾
(
うるお
)
して
革鞄
(
かばん
)
枕に横になれば甲板にまたもや汽笛の音。
東上記
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
甲「祖爺の霊光に
沾
(
うるお
)
いません」(これは入幇の意)
さまよう町のさまよう家のさまよう人々
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
現にまた同じ新聞の記者はやはり午後八時前後、黄塵を
沾
(
うるお
)
した雨の中に帽子をかぶらぬ男が一人、
石人石馬
(
せきじんせきば
)
の列をなした
十三陵
(
じゅうさんりょう
)
の
大道
(
だいどう
)
を走って行ったことを報じている。
馬の脚
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
まず娘どもを
浴
(
ゆあみ
)
させ新鮮潔白な絹衣を着せ、高壇に上って早朝より日中まで立たしむると、熱国の強日に
曝
(
さら
)
され汗が絹衣に
徹
(
とお
)
る。一々それを新衣に
更
(
か
)
えしめ、汗に
沾
(
うるお
)
うた絹衣を収めて王に呈す。
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
彼は娘と入れ違いに
噴井
(
ふきい
)
の側へ歩み寄って、大きな
掌
(
たなごころ
)
へ
掬
(
すく
)
った水に、二口三口
喉
(
のど
)
を
沾
(
うるお
)
した。
素戔嗚尊
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
この
様
(
さま
)
を見たる喜左衛門は
一時
(
いちじ
)
の怒に我を忘れ、この
野郎
(
やろう
)
、何をしやがったと
罵
(
ののし
)
りけるが、たちまち
御前
(
ごぜん
)
なりしに心づき、
冷汗
(
れいかん
)
背
(
せ
)
を
沾
(
うるお
)
すと共に、
蹲踞
(
そんきょ
)
してお手打ちを待ち居りしに
三右衛門の罪
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
江西と云えば彼女の産地は、
潯陽江上
(
じんようこうじょう
)
の平野である。中学生じみた感慨に耽ければ、
楓葉荻花瑟瑟
(
ふうようてきかしつしつ
)
の秋に、江州の司馬白楽天が、
青袗
(
せいさん
)
を
沾
(
うるお
)
した琵琶の曲は、
斯
(
かく
)
の如きものがあったかも知れない。
上海游記
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
が、老紳士は少しも、こっちの返事などには、注意しない。折からウェエタアが持って来たウイスキイで、ちょいと
喉
(
のど
)
を
沾
(
うるお
)
すと、ポケットから瀬戸物のパイプを出して、それへ煙草をつめながら
西郷隆盛
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
沾
漢検1級
部首:⽔
8画
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恩沾無涯
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菊岡沾涼
露沾