“ぬ”のいろいろな漢字の書き方と例文
カタカナ:ヌ
語句割合
濡28.7%
脱16.9%
抜10.3%
縫8.1%
塗6.9%
吐5.0%
抽4.8%
拔4.7%
貫3.0%
湿2.8%
繍1.5%
寝1.0%
温1.0%
野0.7%
沼0.5%
沾0.5%
濕0.3%
霑0.3%
眠0.3%
袒0.2%
寐0.2%
㧞0.2%
寢0.2%
擢0.2%
剥0.1%
抄0.1%
擐0.1%
宿0.1%
拔劍0.1%
奴0.1%
潤0.1%
ず0.1%
に0.1%
め0.1%
る0.1%
刺繍0.1%
剔0.1%
塗抹0.1%
抹0.1%
拭0.1%
挺0.1%
杇0.1%
死ま0.1%
沽0.1%
泥0.1%
瓊0.1%
盗0.1%
粉0.1%
糊0.1%
萎0.1%
蛻0.1%
衂0.1%
跼0.1%
遁0.1%
除0.1%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
講談に於ける「怪談」の戦慄、人情本から味(あぢは)はれべき「濡(ぬ)れ場(ば)」の肉感的衝動の如き、悉(ことごと)く此れを黙阿弥劇の中(うち)に求むる事が出来る。
虫干 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
「驚いたかヤンセン、僕はこの間きた時に何も彼(か)も見ておいたのさ。その脱(ぬ)け道もさ——ところで頸飾はこの金庫の中にあるんだね」
黒襟飾組の魔手 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「ねえ、おかよや、おまえ、この子守唄(こもりうた)をきいたことがあって?」といって、箱(はこ)の中(なか)から一枚(まい)のレコードを抜(ぬ)いて、盤(ばん)にかけながら
谷にうたう女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それを見つけるとお綱も急に、「万吉さん、早く行かないと、法月さんの姿を見失ってしまう……」人を縫(ぬ)って小走りに追い慕った。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
天上の山が、下界同様、人出に埋まって、ここの深山も、世間と変わりない色に塗(ぬ)られたからである。牛若も、その中の一人だった。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「こいつ、さんざん人に悪たいをついていながら、今度は教えてくれなんて、虫のいいことを吐(ぬ)かしやがる。そんな番をしているか」
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこで急いで剣を抽(ぬ)いて出ていって切りつけた。剣は怪しい男の股(あし)に中って一方の股が落ちた。怪しい男は悲鳴をあげて逃げていった。
阿英 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
俺(お)らにこんで爺樣(ぢさま)が代(でえ)の借金(しやくきん)拔(ぬ)けねえで居(え)んだからそれせえなけりや泣(な)かねえでも畢(を)へんだよ、そんだがそれでばかり動(いご)き取(と)れねえな
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
鶴ほどに長い頸の中から、すいと出る二茎(ふたくき)に、十字と四方に囲う葉を境に、数珠(じゅず)に貫(ぬ)く露の珠(たま)が二穂(ふたほ)ずつ偶(ぐう)を作って咲いている。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
一条(ひとすぢ)の山径(やまみち)草深くして、昨夕(ゆうべ)の露なほ葉上(はのうへ)にのこり、褰(かゝ)ぐる裳(もすそ)も湿(ぬ)れがちに、峡々(はざま/\)を越えて行けば、昔遊(むかしあそび)の跡歴々として尋ぬべし。
三日幻境 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
『それはの、大きい兄さんが幼(ちい)さい時に草角力(くさずもう)に出るので拵(こしら)えたものだよ。よく見てごらん、名前が繍(ぬ)ってあるずら』
虫干し (新字新仮名) / 鷹野つぎ(著)
第三句、「夏草の」を現実の景と解する説もあるが、これは、「夏草の靡き寝(ぬ)」の如きから、「寝(ぬ)」と「野(ぬ)」との同音によって枕詞となったと解釈した。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
マルセーユへ上陸した夜、足の強直病にかかり腕を支えてくれたのも、この同じ黄鼬鼠の外套の温(ぬ)くさだったと彼は思った。
旅愁 (新字新仮名) / 横光利一(著)
さよばひに吾(あ)が来ればたな隠(ぐも)り雪は降り来ぬ、さぐもり雨は降り来ぬ、野(ぬ)つ鳥、雉(きぎす)はとよむ、家つ鳥、鶏(かひ)も鳴く。
浮標 (新字旧仮名) / 三好十郎(著)
隠(こも)り沼(ぬ)といった趣きのもあり、樹の茂った高い崖の根に蒼暗く、古城趾の濠を思わすのもあって、小バイケイ草の多い、美しい草地の波を越えると、ここらで最大の明るい池畔に出る。
ある偃松の独白 (新字新仮名) / 中村清太郎(著)
おつぎは冷(つめ)たい雨(あめ)に沾(ぬ)れてさうして少(すこ)し縮(ちゞ)れた髮(かみ)が亂(みだ)れてくつたりと頬(ほゝ)に附(つ)いて足(あし)には朽(く)ちた竹(たけ)の葉(は)がくつゝいて居(ゐ)る。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
焔(ほのほ)の下(した)をくゞるときは、手拭(てぬぐひ)にて頭部(とうぶ)を被(おほ)ふこと。手拭(てぬぐひ)が濕(ぬ)れてゐれば猶(なほ)よく、座蒲團(ざぶとん)を水(みづ)に浸(ひた)したものは更(さら)によし。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
熟(じつ)と其の邪気(あどけ)ない顔付を眺めた時は、あのお志保の涙に霑(ぬ)れた清(すゞ)しい眸(ひとみ)を思出さずに居られなかつたのである。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
打ちいたみ来て眠(ぬ)れば
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
人間社会に善い事ならば、神様も、一も二もなく肩をお袒(ぬ)ぎになる、と勝手ぎめをして居る。信仰の代りに合理の頭で、万事を結着させてゆかうとする為である。
神道の史的価値 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
あはれいかに今夜の月の照れるらむ君ひとり寐(ぬ)る窓の格子に八月七日
閉戸閑詠 (新字旧仮名) / 河上肇(著)
梯子段(はしごだん)を上(あが)ると、廊下(らうか)の片側(かたがは)に顔(かほ)を洗(あら)ふ流(なが)し場(ば)と便所(べんじよ)の杉戸(すぎど)があり、片側(かたがは)には三畳(でふ)と六畳(でふ)の座敷(ざしき)が三間(みま)ほど、いづれも客(きやく)があるらしく閉(し)め切(き)つた襖(ふすま)の外(そと)にスリツパが㧞(ぬ)ぎ捨(す)てゝある。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風、永井壮吉(著)
動詞寢(ぬ)の敬語をナスという類。
三十一歳になったとき、又五郎は二百五十石の元高と家格を復活され、勝手方元締りに擢(ぬ)かれて、新たに屋敷をもらった。……これは例のまれな出頭だった。
葦 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
下衣(したぎ)を剥(ぬ)がせて地にひき伏せ、鞭(むち)をあげて打ち据えるのである。
その盲官のことは、詳(くは)しく書くと際限もありませんが、この物語に必要な程度だけ、ほんの概略(がいりやく)を抄(ぬ)くと、——盲人の官途は四階十六官、七十三刻(こく)と定められて居ります。
学を好み経(けい)を治め、其(そ)の家居するや恂々(じゅんじゅん)として儒者の如く、而(しか)も甲を擐(ぬ)き馬に騎(の)り槊(ほこ)を横たえて陣に臨むや、踔厲(たくれい)風発、大敵に遇(あ)いて益(ますます)壮(さかん)に、年十九より軍に従いて数々(しばしば)偉功を立て
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
朝柏(あさがしは)閏(うる)八河辺(はかはべ)の小竹(しぬ)の芽(め)のしぬびて宿(ぬ)れば夢(いめ)に見えけり 〔巻十一・二七五四〕 作者不詳
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
此歌は「しぬびて宿(ぬ)れば夢(いめ)に見えけり」だけが意味内容で、その上は序詞である。やはり此巻に、「秋柏潤和川辺(うるわかはべ)のしぬのめの人に偲(しぬ)べば君に堪(た)へなく」(巻十一・二四七八)というのがある。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
それを引分(ひきわ)けうとて拔劍(ぬ)きましたる途端(とたん)に、彼(あ)のチッバルトの我武者(がむしゃ)めが劍(けん)を拔(ぬ)いて駈付(かけつ)け、鬪戰(たゝかひ)を挑(いど)み、白刃(しらは)を揮𢌞(ふりまは)し、徒(いたづ)らに虚空(こくう)をば斫(き)りまする程(ほど)に
チッバ 小僧(わっぱ)め、それが無禮(ぶれい)の辨解(いひわけ)にはならぬぞ。戻(もど)って拔劍(ぬ)け。
かくてこそ一家は円滑に、その営みはよく治まって参りますが、仮に、その家の主が、奴(ぬ)ともなり婢(ひ)ともなり、独りですべてをなそうとしたらどうなりましょう。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たとえば、一家の営みを見ましても奴婢(ぬひ)がおれば、奴(ぬ)は出でて田を耕し、婢(ひ)は内にあって粟(あわ)を炊(かし)ぐ。——鶏は晨(あした)を告げ、犬は盗人の番をし、牛は重きを負い、馬は遠きに行く。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
朝早くお帰りになるあなたの足結(あゆい)を潤(ぬ)らす露原よ。私も早く起きてその露原で御一しょに裳(も)の裾(すそ)を潤(ぬ)らしましょう、というのである。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
朝戸出(あさとで)の君(きみ)が足結(あゆひ)を潤(ぬ)らす露原(つゆはら)早(はや)く起(お)き出(い)でつつ吾(われ)も裳裾(もすそ)潤(ぬ)らさな 〔巻十一・二三五七〕 柿本人麿歌集
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
わが背子(せこ)をこちこせ山と人は言へど君も来まさず(ぬ)山の名ならし(にあらし) (巻七、雑)
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
皆人を寝よとの鐘はうつなれど君をし念(も)へば寝ねがてに(ぬ)かも (巻四、相聞、笠女郎)
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
今日はまた力め(ぬ)けぬる如くにて為すこともなく枕してをり
枕上浮雲 (新字旧仮名) / 河上肇(著)
それは殆んど折ることの出来ない程ごわごわした、金や宝石で重い様な着物で、その上には羽の生えた獅子や蛇などが紫水晶で刺繍(ぬ)ってあった。……皇帝は大理石の廊下伝いに広間へ趣いた。
大衆文芸作法 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
見ずや、きみ、やかなの鋭き匕首(あいくち)をもって、骨を削り、肉を裂いて、人性(じんせい)の機微を剔(ぬ)き、十七文字で、大自然の深奥(しんおう)を衝(つ)こうという意気込の、先輩ならびに友人に対して済まぬ。
灯明之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
眞鍮(しんちう)の箆(へら)で其(その)藥(くすり)を紙(かみ)へ塗抹(ぬ)つて患部(くわんぶ)へ貼(は)つてやつた。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
マグダラのマリヤ、ヤコブの母マリヤおよびサロメら、女たちは往きて、イエスに抹(ぬ)るべき香料を買いととのえ、夜の明けるのを待ちました。
太吉は覚えず身戦(みぶる)いすると、北の方から黒雲が自分の後を追って来た。瞬(またた)く間に拭(ぬ)ぐったように星晴(ほしばれ)のしていた空は曇って、星の光りが遠く遠く幽(かす)んだ。
越後の冬 (新字新仮名) / 小川未明(著)
濃緑の松の葉の傘は、大概楢よりも高く挺(ぬ)き上つて、光線を容易に透(とほ)しさうもなく、大空にひろがつてゐる、森の中をさまよひながら、楢の葉の大波を掻(か)き分けて行くと、方々にこの黒松の集団が
亡びゆく森 (新字旧仮名) / 小島烏水(著)
宰予(さいよ)昼寝(ひるい)ぬ。子曰く、朽木(きゅうぼく)は雕(ほ)るべからざるなり。糞土の牆(かき)は杇(ぬ)るべからざるなり。予に於て何ぞ誅(せ)めんやと。子曰く、始め吾の人に於けるや、其の言を聴きて其の行を信ぜり。
論語物語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
夫よりたがいにさき/″\の事ちかい候て、是より、もふつまららぬ(ママ)戦ハをこすまい、つまらぬ事にて死ま(ぬ)いと、たがいニかたくやくそく致し候。
嗚呼(ああ)幾年青き草(くさ)沽(ぬ)れて
筑波ねのほとり (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
馬杜衡(かんあおい)を食えば善く走り、稲を食えば足重し、鼠糞食えば腹脹る、殭蚕(きょうさん)と烏梅(うばい)で牙を拭(ぬぐ)わば食わず、桑葉を得ば解す、鼠狼(いたち)の皮を槽に置かば食わず、豬槽(ぶたぶね)を以て馬を飼い、石灰で馬槽を泥(ぬ)れば堕胎す
青瓊(ぬ)玉かゞやく天に、 れいろうの瞳をこらし
文語詩稿 一百篇 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
「何か人の物を盗(ぬ)すんだことがあったろうか?」
不思議な鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
丹(に)を頬(ほ)に粉(ぬ)りし未通女子(をとめご)の
花守 (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
腰を屈めて裏口から、口(くち)を糊(ぬ)らす米の汁をでも貰はなければならない。隔てが出来て困窮するのは彼女ばかり、彼女ばかり。彼女の一家ばかり。
夜烏 (新字旧仮名) / 平出修(著)
阿芙蓉(あふよう)の萎(ぬ)え嬌(なま)めけるその匂ひ。
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
イグアナとヴァラヌス(いずれも蜥蜴の類)と蛇は時々皮蛻(ぬ)ぎ、不死(しせじ)と罵ったので、人間永く死を免れずと。
母の仇は必ず討つと、彼は曩(さき)の日お杉に誓ったのである。其(その)仇の名は今やお葉の口から洩(も)れた。気の短い重太郎は既(も)う一刻も猶予はならぬ、仇の血を衂(ぬ)るべき洋刃(ないふ)を把出(とりだ)して、彼は俄(にわか)に身繕(みづくろ)いした。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
何だか薄気味の悪い言葉だ、併し此の意味も其のうちには分るだろうと、跼(ぬ)き足して此所を立ち去り、見て置いた階段の方へ行ったが、四辺は全くの闇である。
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
直に吉浜から江の浦小田原と手分(てわけ)えして尋ねたが知んねいでしまった、何でも山越しに箱根の方へ遁(ぬ)げたこんだろうと後(あと)で評議イしたことサ、孩児は背中の疵が大(でけ)えに血がえらく出たゞから
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
国事(おおやけ)に関する暗撃果合いや、新刀(あらもの)試し辻斬の類を除(ぬ)かした土民人情の縺れから来る兇行の因に五つある。物盗(ものとり)、恐怖、貪慾、嫉妬(やきもち)、それから意趣返しと。伊兵衛の場合はあきらかに物盗ではない。