)” の例文
草原は水を打ったようにれている、夜半に雨が降ったのかも知れない、考えると何だかそのような気もする。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
じつと其の邪気あどけない顔付を眺めた時は、あのお志保の涙にれたすゞしいひとみを思出さずに居られなかつたのである。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
背子せこ大和やまとると小夜さよけてあかときつゆにわがれし 〔巻二・一〇五〕 大伯皇女
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
吾背子わがせこをやまとへやると小夜さよふけて鶏鳴あかとき露にわれ立ちれし (巻二)
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
無口な、理窟ぽい青年のやうな顔をして、木挽小屋の軒で、夕暮の糠雨にれてゐた。(その鹿を犬が噛み殺したのだ。)藍を含むだ淡墨いろの毛なみの、大腿骨のあたりの傷が、椿の花よりも紅い。
測量船 (新字旧仮名) / 三好達治(著)
巡査じゆんさ呼吸いききりのやうにすこれた口髭くちひげひねりながら
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
すゞしい、とはいへ涙にれたひとみをあげて、丑松の顔を熟視まもつたは、お志保。仮令たとひ口唇くちびるにいかなる言葉があつても、其時の互の情緒こゝろもちを表すことは出来なかつたであらう。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
こぼれ懸る露にしとどれながら又川を渡ると、左手から小沢が落ち合って少し許の平地に、茅を束ねた一方口の小さな小屋が古代の穴居人の跡のように十五、六かたまっている。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)