)” の例文
もつと衣服きものいでわたるほどの大事おほごとなのではないが、本街道ほんかいだうには難儀なんぎぎて、なか/\うまなどが歩行あるかれるわけのものではないので。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「驚いたかヤンセン、僕はこの間きた時に何もも見ておいたのさ。そのけ道もさ——ところで頸飾はこの金庫の中にあるんだね」
黒襟飾組の魔手 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
其日そのひ二人ふたりしてまち買物かひものやうとふので、御米およね不斷着ふだんぎへて、あつところをわざ/\あたらしい白足袋しろたびまで穿いたものとれた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
初めは詞もてさま/″\に誘ひたれどそのしるしなかりき。次にはたはぶれのやうにもてなして、掻き抱きたれど、女はいち早くけたり。
殊にもう髪の白い、きばけた鬼の母はいつも孫のりをしながら、我々人間の恐ろしさを話して聞かせなどしていたものである。——
桃太郎 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
足袋たび草鞋わらじぎすてて、出迎う二人ふたりにちょっと会釈しながら、廊下に上りて来し二十三四の洋服の男、提燈ちょうちん持ちし若い者を見返りて
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
妹は秘蔵っ子だったが、それでも仕置の時だけは別で、強情な彼女は腕をいたりして、小伝馬町の骨接ほねつぎの百々瀬ももせへ連れてゆかれた。
八人も並んで札の掲っている一番筆頭であるのに、なぜか、そこのところだけ、ちょうど歯のけたようになっているではないか。
狂乱 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
そこを掴まえようとすると、又するすると手の中をけて行ってしまう。庄造は猫のこう云う性質がたまらなく好きなのであった。
猫と庄造と二人のおんな (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
開山の国師は、くついではだしとなった。そして法衣の袖をうしろにたくし巻いて、みずからくわり、竹の平籠ひらかごに二はいの土を盛る。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ただおしい事には今一歩といふ処まで来て居ながら到頭とうとう輪の内をける事が出来なかつたのは時代の然らしむるところで仕方がない。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
だけど、私たちがこのちてしまふ肉體をぎ捨てることによつて、その重荷も捨てゝしまふ時が間もなく來ると、私は信じてゐるの。
縁起えんぎでもないことだが、ゆうべわたしは、上下じょうげが一ぽんのこらず、けてしまったゆめました。なさけないが、所詮しょせん太夫たゆうたすかるまい
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
灰色とも白とも淡褐色ともつかない・砂と殆ど見分けの付かない・一寸蝉のがらのやうな感じの・小さな蟹が無數に逃げ走るのである。
「十津川をけて、あの釈迦しゃかたけの裏手から間道かんどうを通り、吉野川の上流にあたる和田村というに泊ったのが十九日の夜であった」
大菩薩峠:05 龍神の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
お菊はそれを聴くと、夜の物のまま、床からけ出して、雨戸をサッと開きました。それが若い二人の逢引の合図だったのです。
そは両三日前妹が中元ちゅうげんの祝いにと、より四、五円の金をもらいしを無理に借り受け、そを路費ろひとして、夜半やはん寝巻のままに家を
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
僕も早く、現在の環境からけ出して、劇団のまずしい一研究生として何もかも忘れて演劇ひとつに打ち込んでみたいと思った。
正義と微笑 (新字新仮名) / 太宰治(著)
司令部の人達が、誰も知らないあなを発見するまでには、やや時間が、かかった。追跡して行ったものも、遂に得るところがなかった。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
『歯がけて演説の時に声がれて困まる』と、此頃口癖のように云うとおり、口のあたりが淋しくしなびているのが、急に眼に付くように思った。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
取て夫婦二人を無理むりに一つ駕籠にのせ是でよしとて半四郎はむか鉢卷はちまき片肌かたはだぎ何の苦もなく引擔ひつかつぎすた/\道をかけながら酒屋をさして急ぎけり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
おりおり日の光りが今ま雨にれたばかりの細枝の繁みをれて滑りながらにけてくるのをあびては、キラキラときらめいた
武蔵野 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
一切の枝葉をはらひ、一切の被服ひふくぎ、六尺似神じしんの赤裸々を提げて、平然として目ざす城門に肉薄するのがすなはち此手紙である。
雲は天才である (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
ねだい枕元まくらもとの台の上に乱れ箱に入れて洋服やシャツが入れてあるのが見えた。彼はすらりと羽蒲団を横にけだして下におりた。
港の妖婦 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
鮎川も増田も夜なかにけだしてお園の宅を襲ったのであろう。こういう無規律であるために、歩兵の評判が悪いのである。
「腹をこわしてたんだなあ——さあ、とにかくその着物をいで……どら、こっちに来な、あんまり大食いをした罰かな?」
白い壁 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
そうしてヤッサモッサやっているうちに、どうした拍子か袋の口が解けて、両足が腰の処までスッポンと外へけ出した事がわかったの……。
支那米の袋 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
またシャルコンブの間道を行けばテンリーの関所で取り調べられるというような都合でどうもうまくけることができない。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
なんかと言いながら、いやに落ちついて十徳をぎはじめた。いくらまやかし医者でも、幸吉の気絶ぐらいは直せるだろう。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
あゝ未知のとみ肥沃ひよく財寶たからよ、エジディオ沓をぎ、シルヴェストロ沓をぬぎて共に新郎はなむこに從へり、新婦はなよめいたく心にかなひたるによる 八二—八四
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
然しトルストイは理想を賞翫しょうがんして生涯をおわる理想家で無い、トルストイは一切の執着しゅうちゃく煩悩ぼんのうを軽々にすべける木石人で無い
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
彦太郎は急に胸がどきどきしだし、何かに引っかかって上れなくなったと思い、入って助ける気になってシャツをいだ。
糞尿譚 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
そして、おかあさんが、そのしまのエプロンをぎなされた姿すがたたときは、また、どんなにうれしかったでありましょう。
はてしなき世界 (新字新仮名) / 小川未明(著)
何かしら叛逆的はんぎゃくてきな傾向をその性格に植えつけ、育った環境と運命からけ出ようとする反撥心はんぱつしんそそらずにはおかなかった。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
なにれはれたものだ、うやつてうするとひながら急遽あわたゞしう七尻端しりはしをりて、其樣そんゆわひつけなんぞよりれが夾快さつぱりだと下駄げたぐに
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あの嫉妬家やきもちやき奉公ほうこうするのはよしゃれ。彼奴あいつ制服しきせ青白あをじろ可嫌いやいろぢゃゆゑ、阿呆あはうほかれもぬ、いでしまや。……おゝ、ありゃひめぢゃ。
守護して下さるのでありましょう、此の上ともに首尾く穴をで、夫文治殿に逢わして下さいますよう祈り奉ります
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
しかし、彼女は再びその生活からけることが出来なくなった。彼女の肉体は容易に恢復してはくれないからであった。
機関車 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
お光は立つて、小池の背後うしろからしわくちやになつたインバネスをがし、自分のひと羽織ばおり一所いつしよに黒塗りの衣桁いかうへ掛けた。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
神経がたかぶってくる。ちょうど、村の十字架像の前で、彼は帽子をいだついでに、そいつを地べたに叩きつけ、足で踏みにじり、そして叫ぶ——
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
私はいつも講演のあとで覚える、もっと話し続けたいような、また一役済ましてほっとしたような——緊張きんちょうけ切らぬ気持で人々に混って行った。
みちのく (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
私たちはいそがしくくつやずぼんをぎ、そのつめたい少しにごった水へつぎから次とみました。まったくその水の濁りようときたら素敵すてき高尚こうしょうなもんでした。
イギリス海岸 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
わたしはひさしのついた帽子をいで、しばらくその場で迷っていたが、やがて重い物思いにしずみながら、そこをはなれた。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
またアメリカと濠州には、最初欧人がれ来った馬がけ出て野生となり、大群をなして未墾の曠野を横行し居ると。
私たちの喪服はこの月でぐはずですが、暦で調べますと月末はいい日でありませんから延びることになりますね。
源氏物語:30 藤袴 (新字新仮名) / 紫式部(著)
細君は肌ぎになり、肩に濡手拭を巻いて、団扇の風を送りながら、主人の読むのを聞いて居るのが見え聞えする。
秋の第一日 (新字旧仮名) / 窪田空穂(著)
かれ地上ちじやうたふれ、次々つぎ/\に×(6)き×(7)されるじう×(8)もとに、うしほ退しりぞくやうに全身ぜんしんからけてちからかん
これじゃア自分はいさぎよかぶとごうという正直な謙遜心けんそんしんを起して、「そうしてその俳優はそれからどういたしました」
猫八 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
あられの如き間投詞かんたうしの互にかはされたる後、すゝぎの水は汲まれ、草鞋わらじがれ、其儘奧のへやに案内せられたるが、我等二人はまづ何を語るべきかを知らざりき。
秋の岐蘇路 (旧字旧仮名) / 田山花袋(著)
大原「御令妹の前で甚だ相済あいすまんけれども折角の御馳走を戴くために今はかまいで帯をゆるめる。先刻さっきから帯が腹へ喰い込んで痛くって堪まらない。帯を ...
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)