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脱
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ぬ
ふりがな文庫
“
脱
(
ぬ
)” の例文
尤
(
もつと
)
も
衣服
(
きもの
)
を
脱
(
ぬ
)
いで
渡
(
わた
)
るほどの
大事
(
おほごと
)
なのではないが、
本街道
(
ほんかいだう
)
には
些
(
ち
)
と
難儀
(
なんぎ
)
過
(
す
)
ぎて、なか/\
馬
(
うま
)
などが
歩行
(
ある
)
かれる
訳
(
わけ
)
のものではないので。
高野聖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
「驚いたかヤンセン、僕はこの間きた時に何も
彼
(
か
)
も見ておいたのさ。その
脱
(
ぬ
)
け道もさ——ところで頸飾はこの金庫の中にあるんだね」
黒襟飾組の魔手
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
其日
(
そのひ
)
は
二人
(
ふたり
)
して
町
(
まち
)
へ
買物
(
かひもの
)
に
出
(
で
)
やうと
云
(
い
)
ふので、
御米
(
およね
)
は
不斷着
(
ふだんぎ
)
を
脱
(
ぬ
)
ぎ
更
(
か
)
へて、
暑
(
あつ
)
い
所
(
ところ
)
をわざ/\
新
(
あた
)
らしい
白足袋
(
しろたび
)
迄
(
まで
)
穿
(
は
)
いたものと
知
(
し
)
れた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
初めは詞もてさま/″\に誘ひたれどその
驗
(
しるし
)
なかりき。次には
戲
(
たはぶれ
)
のやうにもてなして、掻き抱きたれど、女はいち早く
擦
(
す
)
り
脱
(
ぬ
)
けたり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
殊にもう髪の白い、
牙
(
きば
)
の
脱
(
ぬ
)
けた鬼の母はいつも孫の
守
(
も
)
りをしながら、我々人間の恐ろしさを話して聞かせなどしていたものである。——
桃太郎
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
▼ もっと見る
足袋
(
たび
)
草鞋
(
わらじ
)
脱
(
ぬ
)
ぎすてて、出迎う
二人
(
ふたり
)
にちょっと会釈しながら、廊下に上りて来し二十三四の洋服の男、
提燈
(
ちょうちん
)
持ちし若い者を見返りて
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
妹は秘蔵っ子だったが、それでも仕置の時だけは別で、強情な彼女は腕を
脱
(
ぬ
)
いたりして、小伝馬町の
骨接
(
ほねつ
)
ぎの
百々瀬
(
ももせ
)
へ連れてゆかれた。
旧聞日本橋:04 源泉小学校
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
八人も並んで札の掲っている一番筆頭であるのに、なぜか、そこのところだけ、ちょうど歯の
脱
(
ぬ
)
けたようになっているではないか。
狂乱
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
そこを掴まえようとすると、又するすると手の中を
脱
(
ぬ
)
けて行ってしまう。庄造は猫のこう云う性質がたまらなく好きなのであった。
猫と庄造と二人のおんな
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
開山の国師は、
沓
(
くつ
)
を
脱
(
ぬ
)
いではだしとなった。そして法衣の袖をうしろにたくし巻いて、みずから
鍬
(
くわ
)
を
把
(
と
)
り、竹の
平籠
(
ひらかご
)
に二
杯
(
はい
)
の土を盛る。
私本太平記:13 黒白帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ただ
惜
(
おし
)
い事には今一歩といふ処まで来て居ながら
到頭
(
とうとう
)
輪の内を
脱
(
ぬ
)
ける事が出来なかつたのは時代の然らしむるところで仕方がない。
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
だけど、私たちがこの
朽
(
く
)
ちてしまふ肉體を
脱
(
ぬ
)
ぎ捨てることによつて、その重荷も捨てゝしまふ時が間もなく來ると、私は信じてゐるの。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
縁起
(
えんぎ
)
でもないことだが、ゆうべわたしは、
上下
(
じょうげ
)
の
歯
(
は
)
が一
本
(
ぽん
)
残
(
のこ
)
らず、
脱
(
ぬ
)
けてしまった
夢
(
ゆめ
)
を
見
(
み
)
ました。
情
(
なさけ
)
ないが、
所詮
(
しょせん
)
太夫
(
たゆう
)
は
助
(
たす
)
かるまい
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
灰色とも白とも淡褐色ともつかない・砂と殆ど見分けの付かない・一寸蝉の
脱
(
ぬ
)
け
殼
(
がら
)
のやうな感じの・小さな蟹が無數に逃げ走るのである。
環礁:――ミクロネシヤ巡島記抄――
(旧字旧仮名)
/
中島敦
(著)
「十津川を
脱
(
ぬ
)
けて、あの
釈迦
(
しゃか
)
ヶ
岳
(
たけ
)
の裏手から
間道
(
かんどう
)
を通り、吉野川の上流にあたる和田村というに泊ったのが十九日の夜であった」
大菩薩峠:05 龍神の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
お菊はそれを聴くと、夜の物のまま、床から
脱
(
ぬ
)
け出して、雨戸をサッと開きました。それが若い二人の逢引の合図だったのです。
奇談クラブ〔戦後版〕:10 暴君の死
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
そは両三日前妹が
中元
(
ちゅうげん
)
の祝いにと、
他
(
た
)
より四、五円の金をもらいしを無理に借り受け、そを
路費
(
ろひ
)
として、
夜半
(
やはん
)
寝巻のままに家を
脱
(
ぬ
)
け
出
(
い
)
で
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
僕も早く、現在の環境から
脱
(
ぬ
)
け出して、劇団のまずしい一研究生として何もかも忘れて演劇ひとつに打ち込んでみたいと思った。
正義と微笑
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
司令部の人達が、誰も知らない
脱
(
ぬ
)
け
孔
(
あな
)
を発見するまでには、やや時間が、かかった。追跡して行ったものも、遂に得るところがなかった。
空襲葬送曲
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
『歯が
脱
(
ぬ
)
けて演説の時に声が
洩
(
も
)
れて困まる』と、此頃口癖のように云う
通
(
とおり
)
、口の
辺
(
あたり
)
が淋しく
凋
(
しな
)
びているのが、急に眼に付くように思った。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
取て夫婦二人を
無理
(
むり
)
に一つ駕籠に
乘
(
のせ
)
是でよしとて半四郎は
向
(
むか
)
う
鉢卷
(
はちまき
)
片肌
(
かたはだ
)
脱
(
ぬ
)
ぎ何の苦もなく
引擔
(
ひつかつ
)
ぎすた/\道を
駈
(
かけ
)
ながら酒屋を
指
(
さし
)
て急ぎけり
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
おりおり日の光りが今ま雨に
濡
(
ぬ
)
れたばかりの細枝の繁みを
漏
(
も
)
れて滑りながらに
脱
(
ぬ
)
けてくるのをあびては、キラキラときらめいた
武蔵野
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
一切の枝葉を
掃
(
はら
)
ひ、一切の
被服
(
ひふく
)
を
脱
(
ぬ
)
ぎ、六尺
似神
(
じしん
)
の赤裸々を提げて、平然として目ざす城門に肉薄するのが
乃
(
すなは
)
ち此手紙である。
雲は天才である
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
榻
(
ねだい
)
の
枕元
(
まくらもと
)
の台の上に乱れ箱に入れて洋服やシャツが入れてあるのが見えた。彼はすらりと羽蒲団を横に
脱
(
ぬ
)
けだして下におりた。
港の妖婦
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
鮎川も増田も夜なかに
脱
(
ぬ
)
けだしてお園の宅を襲ったのであろう。こういう無規律であるために、歩兵の評判が悪いのである。
半七捕物帳:62 歩兵の髪切り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「腹をこわしてたんだなあ——さあ、とにかくその着物を
脱
(
ぬ
)
いで……どら、こっちに来な、あんまり大食いをした罰かな?」
白い壁
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
そうしてヤッサモッサやっているうちに、どうした拍子か袋の口が解けて、両足が腰の処までスッポンと外へ
脱
(
ぬ
)
け出した事がわかったの……。
支那米の袋
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
またシャルコンブの間道を行けばテンリーの関所で取り調べられるというような都合でどうもうまく
脱
(
ぬ
)
けることができない。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
なんかと言いながら、いやに落ちついて十徳を
脱
(
ぬ
)
ぎはじめた。いくらまやかし医者でも、幸吉の気絶ぐらいは直せるだろう。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
あゝ未知の
富
(
とみ
)
肥沃
(
ひよく
)
の
財寶
(
たから
)
よ、エジディオ沓を
脱
(
ぬ
)
ぎ、シルヴェストロ沓をぬぎて共に
新郎
(
はなむこ
)
に從へり、
新婦
(
はなよめ
)
いたく心に
適
(
かな
)
ひたるによる 八二—八四
神曲:03 天堂
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
然しトルストイは理想を
賞翫
(
しょうがん
)
して生涯を
終
(
おわ
)
る理想家で無い、トルストイは一切の
執着
(
しゅうちゃく
)
煩悩
(
ぼんのう
)
を軽々に
滑
(
すべ
)
り
脱
(
ぬ
)
ける木石人で無い
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
彦太郎は急に胸がどきどきしだし、何かに引っかかって上れなくなったと思い、入って助ける気になってシャツを
脱
(
ぬ
)
いだ。
糞尿譚
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
そして、お
母
(
かあ
)
さんが、そのしまのエプロンを
脱
(
ぬ
)
ぎなされた
姿
(
すがた
)
を
見
(
み
)
たときは、また、どんなにうれしかったでありましょう。
はてしなき世界
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
何かしら
叛逆的
(
はんぎゃくてき
)
な傾向をその性格に植えつけ、育った環境と運命から
脱
(
ぬ
)
け出ようとする
反撥心
(
はんぱつしん
)
を
唆
(
そそ
)
らずにはおかなかった。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
何
(
なに
)
己
(
お
)
れは
馴
(
な
)
れた
物
(
もの
)
だ、
斯
(
か
)
うやつて
斯
(
か
)
うすると
言
(
い
)
ひながら
急遽
(
あわたゞ
)
しう七
分
(
ぶ
)
三
分
(
ぶ
)
に
尻端
(
しりはし
)
折
(
をり
)
て、
其樣
(
そん
)
な
結
(
ゆわ
)
ひつけなんぞより
是
(
こ
)
れが
夾快
(
さつぱり
)
だと
下駄
(
げた
)
を
脱
(
ぬ
)
ぐに
たけくらべ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
あの
嫉妬家
(
やきもちやき
)
に
奉公
(
ほうこう
)
するのはよしゃれ。
彼奴
(
あいつ
)
の
制服
(
しきせ
)
は
青白
(
あをじろ
)
い
可嫌
(
いや
)
な
色
(
いろ
)
ぢゃゆゑ、
阿呆
(
あはう
)
の
外
(
ほか
)
は
誰
(
た
)
れも
着
(
き
)
ぬ、
脱
(
ぬ
)
いでしまや。……おゝ、ありゃ
姫
(
ひめ
)
ぢゃ。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
守護して下さるのでありましょう、此の上ともに首尾
好
(
よ
)
く穴を
脱
(
ぬ
)
け
出
(
い
)
で、夫文治殿に逢わして下さいますよう祈り奉ります
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
しかし、彼女は再びその生活から
脱
(
ぬ
)
けることが出来なくなった。彼女の肉体は容易に恢復してはくれないからであった。
機関車
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
お光は立つて、小池の
背後
(
うしろ
)
から
皺
(
しわ
)
くちやになつたインバネスを
脱
(
ぬ
)
がし、自分の
單
(
ひと
)
へ
羽織
(
ばおり
)
と
一所
(
いつしよ
)
に黒塗りの
衣桁
(
いかう
)
へ掛けた。
東光院
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
神経が
昂
(
たか
)
ぶってくる。ちょうど、村の十字架像の前で、彼は帽子を
脱
(
ぬ
)
いだついでに、そいつを地べたに叩きつけ、足で踏みにじり、そして叫ぶ——
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
私はいつも講演のあとで覚える、もっと話し続けたいような、また一役済ましてほっとしたような——
緊張
(
きんちょう
)
の
脱
(
ぬ
)
け切らぬ気持で人々に混って行った。
みちのく
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
私たちは
忙
(
いそが
)
しく
靴
(
くつ
)
やずぼんを
脱
(
ぬ
)
ぎ、その
冷
(
つめ
)
たい少し
濁
(
にご
)
った水へ
次
(
つぎ
)
から次と
飛
(
と
)
び
込
(
こ
)
みました。
全
(
まった
)
くその水の濁りようときたら
素敵
(
すてき
)
に
高尚
(
こうしょう
)
なもんでした。
イギリス海岸
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
わたしは
庇
(
ひさし
)
のついた帽子を
脱
(
ぬ
)
いで、しばらくその場で迷っていたが、やがて重い物思いに
沈
(
しず
)
みながら、そこを
離
(
はな
)
れた。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
またアメリカと濠州には、最初欧人が
伴
(
つ
)
れ来った馬が
脱
(
ぬ
)
け出て野生となり、大群をなして未墾の曠野を横行し居ると。
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
私たちの喪服はこの月で
脱
(
ぬ
)
ぐはずですが、暦で調べますと月末はいい日でありませんから延びることになりますね。
源氏物語:30 藤袴
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
細君は肌
脱
(
ぬ
)
ぎになり、肩に濡手拭を巻いて、団扇の風を送りながら、主人の読むのを聞いて居るのが見え聞えする。
秋の第一日
(新字旧仮名)
/
窪田空穂
(著)
彼
(
かれ
)
は
地上
(
ちじやう
)
に
倒
(
たふ
)
れ、
次々
(
つぎ/\
)
に×
(6)
き×
(7)
される
銃
(
じう
)
×
(8)
の
下
(
もと
)
に、
潮
(
うしほ
)
の
退
(
しりぞ
)
くやうに
全身
(
ぜんしん
)
から
脱
(
ぬ
)
けて
行
(
ゆ
)
く
力
(
ちから
)
を
感
(
かん
)
じ
生ける銃架:――満洲駐屯軍兵卒に――
(新字旧仮名)
/
槙村浩
(著)
これじゃア自分は
潔
(
いさぎよ
)
く
兜
(
かぶと
)
を
脱
(
ぬ
)
ごうという正直な
謙遜心
(
けんそんしん
)
を起して、「そうしてその俳優はそれからどういたしました」
猫八
(新字新仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
霰
(
あられ
)
の如き
間投詞
(
かんたうし
)
の互に
交
(
かは
)
されたる後、
灑
(
すゝ
)
ぎの水は汲まれ、
草鞋
(
わらじ
)
は
脱
(
ぬ
)
がれ、其儘奧の
室
(
へや
)
に案内せられたるが、我等二人は
先
(
まづ
)
何を語るべきかを知らざりき。
秋の岐蘇路
(旧字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
大原「御令妹の前で甚だ
相済
(
あいす
)
まんけれども折角の御馳走を戴くために今
袴
(
はかま
)
を
脱
(
ぬ
)
いで帯を
弛
(
ゆる
)
める。
先刻
(
さっき
)
から帯が腹へ喰い込んで痛くって堪まらない。帯を ...
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
脱
常用漢字
中学
部首:⾁
11画
“脱”を含む語句
脱出
脱落
解脱
大肌脱
脱走
洒脱
膚脱
肌脱
脱衣場
脱然
脱衣婆
沓脱
脱兎
沓脱石
脱殻
蝉脱
藻脱
脱捨
脱棄
靴脱
...