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ぬ
これは
成らぬと
力足を
踏こたゆる
途端、さのみに
思はざりし
前鼻緒のずる/\と
㧞けて、
傘よりもこれこそ一の
大事に
成りぬ。
梯子段を
上ると、
廊下の
片側に
顔を
洗ふ
流し
場と
便所の
杉戸があり、
片側には三
畳と六
畳の
座敷が
三間ほど、いづれも
客があるらしく
閉め
切つた
襖の
外にスリツパが
㧞ぎ
捨てゝある。
それと
長吉聲をかくれば
丑松文次その
余の十
餘人、
方角をかへてばら/\と
逃足はやく、
㧞け
裏の
露路にかゞむも
有るべし、
口惜しいくやしい
口惜しい
口惜しい、
長吉め
文次め
丑松め
見舞にと
言ふ
事も
成らねば
心ならねど、お
使ひ
先の一
寸の
間とても
時計を
目當にして
幾足幾町と
其しらべの
苦るしさ、
馳せ
㧞けても、とは
思へど
惡事千
里といへば
折角の
辛棒を
水泡にして
萬が
中なる一
枚とても
數ふれば
目の
前なるを、
願ひの
高に
相應の
員數手近の
處になく
成しとあらば、
我れにしても
疑ひは
何處に
向くべき、
調べられなば
何とせん、
何といはん、
言ひ
㧞けんは
罪深し