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繍
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ぬ
ふりがな文庫
“
繍
(
ぬ
)” の例文
鼈甲
(
べつかふ
)
の
櫛
(
くし
)
笄
(
かうがい
)
を円光の如くさしないて、地獄絵を
繍
(
ぬ
)
うた
襠
(
うちかけ
)
の
裳
(
もすそ
)
を長々とひきはえながら、天女のやうな
媚
(
こび
)
を
凝
(
こら
)
して、夢かとばかり眼の前へ現れた。
きりしとほろ上人伝
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
『それはの、大きい兄さんが
幼
(
ちい
)
さい時に
草角力
(
くさずもう
)
に出るので
拵
(
こしら
)
えたものだよ。よく見てごらん、名前が
繍
(
ぬ
)
ってあるずら』
虫干し
(新字新仮名)
/
鷹野つぎ
(著)
赤地に金糸の
繍
(
ぬ
)
ひをした美しい小枕である。「松風」のシテが行平の烏帽子狩衣を身につけて舞ひ狂ふのと酷似する。
枕物狂
(新字旧仮名)
/
川田順
(著)
色どりも図案も
繍
(
ぬ
)
いかたも多種多様で、北方地方のものと、ウクライナ辺の作品とでは配色も模様も、全くちがった。
道標
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
将門
(
まさかど
)
の遺した姫ぎみ滝夜叉が、序幕のだんまりには、女賊お滝の、金銀
繍
(
ぬ
)
い分けの、よてん姿、あらゆる幻怪美をつくした扮装で現れるわけであった。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
▼ もっと見る
花頂山
(
かちょうざん
)
のいただきも、粟田山も、如意ヶ岳も、三十六峰は
唐
(
から
)
の
織女
(
おりめ
)
が
繍
(
ぬ
)
った
天平錦
(
てんぴょうにしき
)
のように
紅葉
(
もみじ
)
が照り映えていた。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
床と云わず、四方の壁と云わず、あらゆる反物の布地の上に、染めと織りと
繍
(
ぬ
)
いと
箔
(
はく
)
と
絵羽
(
えば
)
との模様が、揺れ漂い、
濤
(
なみ
)
のように
飛沫
(
ひまつ
)
を散らして逆巻き
亘
(
わた
)
っている。
河明り
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
もとの座敷へ帰ってくると、いつの間にか其処には寝床が延べられて、
雁金
(
かりがね
)
を
繍
(
ぬ
)
った真っ白な
蚊帳
(
かや
)
が涼しそうに吊ってあった。このあいだの女がまた何処からか現われた。
半七捕物帳:07 奥女中
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
不思議な記憶の花模様を全身に
繍
(
ぬ
)
ひ
鋳
(
い
)
りつけてくると人は
鬼狐
(
きこ
)
の如くこの感覚一点に繋がれて、又昨日の魚を思ひ、
犒
(
ねぎら
)
ひ、たわみ、迷うて、再び河海を
遊弋
(
ゆうよく
)
するやうになる。
魚美人
(新字旧仮名)
/
佐藤惣之助
(著)
現出す 死後の座は
金菡萏
(
きんかんたん
)
を分ち 生前の手は
紫鴛鴦
(
しえんおう
)
を
繍
(
ぬ
)
ふ
月沉
(
げつちん
)
秋水珠を留める涙 花は落ちて春山土
亦
(
また
)
香ばし 非命
須
(
すべか
)
らく薄命に非ざるを知るべし 夜台長く有情郎に伴ふ
八犬伝談余
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
彼女の作品はというと、
透
(
すか
)
し
繍
(
ぬ
)
いがはいっていて、目もあてられない重くるしいものに仕上っている。送料と手数料とを払ったあげく、今度は返送料を払わなければならない。
ぶどう畑のぶどう作り
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
中で吾々を悦ばせたのは両側に
刺繍
(
ししゅう
)
のある枕(コールピケ)であった。花や鳥や蝶や様々な図柄を色糸で
繍
(
ぬ
)
う。朝鮮ではこんなに
彩
(
いろどり
)
の多い品は少い。あれば色を子供らしく無邪気に配る。
全羅紀行
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
消えてしまう、間の岳と蝙蝠岳の峰々の繋がりは、
偃松
(
はいまつ
)
であろう、
黯緑
(
あんりょく
)
の植物で、
繍
(
ぬ
)
ってあって、所々に白雪の団々が見える、この赤石山脈の大嶺は、始終私たちを
瞰下
(
みおろ
)
して、方幾里の空中を
白峰山脈縦断記
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
うたたねの
額
(
ひたひ
)
にかづく春の袖
繍
(
ぬ
)
ひ
来
(
こ
)
牡丹とこがねの蝶と
恋衣
(新字旧仮名)
/
山川登美子
、
増田雅子
、
与謝野晶子
(著)
裾には小蝶の
繍
(
ぬ
)
ひがあつた。
木乃伊の口紅
(旧字旧仮名)
/
田村俊子
(著)
わが
繍
(
ぬ
)
ふ
罌粟
(
けし
)
の「夢」にさへ
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
着物は——黒い絹の地へ
水仙
(
すいせん
)
めいた花を
疎
(
まばら
)
に
繍
(
ぬ
)
い取った肩懸けが、なだらかな肩から胸へかけて
無造作
(
むぞうさ
)
に垂れているよりほかに、何も俊助の眼には映らなかった。
路上
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
東岸の公孫瓚は、敵のうごきを見て、部下の大将
厳綱
(
げんこう
)
を先手とし、
帥
(
すい
)
の字を金線で
繍
(
ぬ
)
った紅の旗をたて
三国志:03 群星の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼の艶のよい、後頭部にだけ軟かな半白な髪がもしゃもしゃと遺っているペテロのような禿頭は、前を行く子爵のすらりとした羽織の渋いけし
繍
(
ぬ
)
いの紋位迄の高さしかなかった。
伊太利亜の古陶
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
奥さんから
貰
(
もら
)
ったと自慢そうに見せた
繍
(
ぬ
)
いつぶしの
紙入
(
かみいれ
)
も書生にくれる品じゃない。
三十年前の島田沼南
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
彼は、だぶだぶの
部屋着
(
へやぎ
)
を着ている。
繍
(
ぬ
)
いのはいった飾り
紐
(
ひも
)
が
巌丈
(
がんじょう
)
な胸を取り巻き、円柱のまわりに綱を取りつけたようだ。この男、ひと目見れば、物を喰いすぎるということがわかる。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
きっぱりと
繍
(
ぬ
)
わせ、折鶴の紋のついた藤紫の
羽織
(
はおり
)
、
雪駄
(
せった
)
をちゃらつかせて、供の男に、
手土産
(
てみやげ
)
らしい
酒樽
(
たる
)
を持たせ、うつむき勝ちに歩むすがたは、
手嫋女
(
たおやめ
)
にもめずらしい
﨟
(
ろう
)
たけさを持っている。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
それは紫の絹地のまん中に松竹梅の円を
繍
(
ぬ
)
って、そのなかに新富座の定紋のかたばみを色糸で繍い出したものであった——を贈ることになって、翌年の三月興行から新富座の舞台にかけられた。
明治劇談 ランプの下にて
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
それに
相応
(
ふさわ
)
しく華麗豪放な往来人の姿。
燦爛
(
さんらん
)
たる大天守の
金碧
(
こんぺき
)
を
繍
(
ぬ
)
いつづる青葉若葉、——ここでは中国に見られたあの泥土の闘いも人の汗も、遠いものにしか考えられない。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
赤い糸の、こまかいびっちりの十字
繍
(
ぬ
)
いなんかそうざらにはないわ。ほめて頂戴。でも、原始の人たちの生活のように春を待ちますね。動物はどんな気もちで春を待つのでしょう。
獄中への手紙:12 一九四五年(昭和二十年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
まあ、申さば、
内裏雛
(
だいりびな
)
は
女雛
(
めびな
)
の冠の
瓔珞
(
やうらく
)
にも
珊瑚
(
さんご
)
がはひつて居りますとか、
男雛
(
をびな
)
の
塩瀬
(
しほぜ
)
の
石帯
(
せきたい
)
にも
定紋
(
ぢやうもん
)
と替へ紋とが互違ひに
繍
(
ぬ
)
ひになつて居りますとか、さう云ふ雛だつたのでございます。
雛
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「ほんにねえ、寒牡丹を
繍
(
ぬ
)
わせてあるわ」
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
嵌玉
(
かんぎょく
)
のかぶと、
磨銀
(
まぎん
)
のよろい、花の枝を
繍
(
ぬ
)
い出した
素絹
(
そけん
)
の
戦袍
(
せんぽう
)
すずやかに
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
衫衣
(
さん
)
に
繍
(
ぬ
)
わせた
吾亦紅
(
われもこう
)
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
繍
漢検準1級
部首:⽷
17画
“繍”を含む語句
刺繍
錦繍
金繍
繍取
袞繍橋
繍毬
繍縁
繍仏
文繍
繍眼児
綾羅錦繍
繍眼兒
張繍
繍帳
繍箔
繍線菊
繍眼児押
金繍旗
錦繍綾羅
繍袍
...