)” の例文
家の周りの花園や畑や牧場や、其等それらを取り巻く野鳥野獣を棲息させて猟をする雑木林の中の小路を突きけて七・八丁も走りましたわ。
母と娘 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
鶴ほどに長い頸の中から、すいと出る二茎ふたくきに、十字と四方に囲う葉を境に、数珠じゅずく露のたま二穂ふたほずつぐうを作って咲いている。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
盛りあがった気味悪い肉が内部からのぞいていた。またある痕は、細長く深く切れ込み、古い本が紙魚しみに食いかれたあとのようになっている。
ある心の風景 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
傷は背中の肩胛骨かひがらぼねの下から一と突き、血はあまり出た樣子もありませんが、傷の深さは心の臟を破つて、前へ突きけさう。
「工夫とては更にござりませぬ、ただこの太刀先につかこぶしも我が身も魂も打込めて、彼が骨髄こつずいを突きく覚悟でござります」
これに反して、頑童らの臍を狙ふといふことになれば、その狙ふものに太鼓を輪きに光背のやうに負うてゐる生物を聯想する方が自然である。
雷談義 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
くゞひがゐる。尼さん達が通るのです。長い黒い列を作つて通るのです。石炭のたまを緒にいたやうな工合ですね。年上のと若いのと並んで行くのもある。
(新字旧仮名) / グスターフ・ウィード(著)
マドンナの画額ゑがくの上の輪飾になつてゐるのは玉葱である。懸時計の下に掛けてあるのは、あごき通した二十匹ばかりのにしんで、腹が銅色あかがねいろに光つてゐる。
槍は、深股ふかももの辺を、突きいていた。ひどく出血はしたが、生命いのちは取りとめた。痛みなどは、少しも覚えなかった。
茶漬三略 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
百枝もゝえ刺し生ふる橘、玉に五月さつきを近み、あへぬがに花さきにけり、毎朝あさにけに出で見る毎に、気緒いきのをに吾がふ妹に、まそかゞみ清き月夜に、たゞ一目見せむまでには
浮標 (新字旧仮名) / 三好十郎(著)
ここを以ちてその父母、その人を知らむとおもひて、その女にをしへつらくは、「赤土はにを床の邊に散らし、卷子紡麻へそをを針にきて、その衣のすそに刺せ」とをしへき一一
ジャヴェルはシャンヴルリー街の防寨ぼうさいで捕虜になったが、ひとりの暴徒がピストルをもって彼を手中のものにしながら、彼の頭を射かないで空に向けて発射し
最初、塩化鉄で練り固めた刃物を使って、頸動脈を刺しき、その上二つの杉戸を取り違えさせて、逢痴の死体についている方を、本水の中へ押し出してしまった。
人魚謎お岩殺し (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
で、わたしが、嬉しさのあまり、ピストルで脳天をいたところで、彼はびくともしないだろう。
歌は平凡なものであったが、「玉はく」ということばは大臣自身にも痛切に感じていることであったから、相あわれむ涙が流れ出るふうで、すぐにまた言うのであった。
源氏物語:36 柏木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
打見たるところたとえば糸を絡う用にすなる篗子いとわくというもののいと大なるを、竿にきて立てたるが如し。何ぞと問うに、四方幕というものぞという。心得がたき名なり。
知々夫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
アッサリどころか、前に何層倍した熱烈な決心をもってこの実験を突きいてくれよう、どうするか見ろ……と思っている事を、互いに感付き過ぎる程、感付いていた。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
七十五里を一目に見る遠目金とおめがね芥子粒けしつぶを卵のごとくに見る近目金、猛虎の皮五十枚、五町四方見当なき鉄砲、伽羅きゃらきん、八畳釣りの蚊帳かや、四十二粒の紫金しこんいたコンタツ。
ハビアン説法 (新字旧仮名) / 神西清(著)
譬へば飾の糸にいた花の一輪が、次の一輪と接して続いてゐるやうなものである。
大胆になれない所に大胆を見出した。鋭敏でない所に鋭敏を見出した。言葉を換えていえば、私は鋭敏に自分の魯鈍を見き、大胆に自分の小心を認め、労役して自分の無能力を体験した。
小さき者へ (新字新仮名) / 有島武郎(著)
青銭あをぜには穴あきぜによ、字のおもて寛永通宝、裏に波文久永宝、よく数へよく刺しくと、手もすまにそろへて締むと、幼な児や息づかし我、青太藺あをふとゐひし小縄の、りつよきその緒くくりて
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
その頃はやった文人趣味にかぶれて、画ごころのあったところから、梅や竹なんぞをひねくって、作れもしない絶句を題して、青山居士と署した反故ほごが、きの箱の中に久しくしまってあった。
弟媛オトヒメのごときはその例で、原則としての巫女の処女生活を守りいたわけである。大郎女オホイラツメの方は、あんなに逃げておきながらと思われるほど、つかまったとなると、きわめて従順であったようである。
最古日本の女性生活の根柢 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
肺をかれたらしい。独艦の軍医が大急ぎで呼びに行かれた。
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
梅子は又たかうべを垂れぬ、長き睫毛まつげに露の白玉ける見ゆ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
降るままに柳をつたふ春雨のしづくの珠を蜘蛛ささがに
礼厳法師歌集 (新字旧仮名) / 与謝野礼厳(著)
きたるひや寶玉はうぎよくの散りこぼるゝを思ふらむ。
小笹にきてさげかへるも
花守 (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
玉にく日をいまだ遠みか
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
「モット落着いて……馬の腹を覘え、馬の腹と人の太股ふとももを打ちく気組みで……まだまだ、ズット近くへ来た時でいい」
「あの矢の根は物凄かつたが、矢が當つてついた傷なら、眞つすぐに突きける筈。ところが、この傷はゑぐれてゐる」
「ゆらぐ玉の緒」は玉箒の玉をいた緒がゆらいで鳴りひびく、清くも貴い瑞徴ずいちょうとして何ともいえぬ、というので、家持も相当に骨折ってこの歌を作り
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
肌着は浅黄羽二重あさぎはぶたえの綿入、鎖帷子くさりかたびらを着こみ、茶裏の黒小袖の袂を短く縫いこみ、両臂りょうひじには一重差ひとえざしの甲無し籠手ごてき、大真田おおさなだたすきをかけ、鎖股引くさりももひき陣草鞋じんわらじ
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
し損じたりとまた踏ん込んで打つを逃げつつ、げつくる釘箱才槌さいづち墨壺矩尺かねざし利器えもののなさに防ぐすべなく、身を翻えして退はずみに足を突っ込む道具箱、ぐざと踏みく五寸釘
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
よさないかと、出るだけの声を出して敵と味方の分界線らしい所をけようとしたが、なかなかそううまくは行かない。一二間はいったら、出る事も引く事も出来なくなった。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
いろと水齒別みづはわけの命、多治比たぢひ柴垣しばかきの宮にましまして、天の下治らしめしき。天皇、御身みみたけ九尺二寸半ここのさかまりふたきいつきだ。御齒の長さ一、廣さ二きだ。上下等しくととのひて、既に珠をけるが如くなりき。
きもあへずもろき涙の玉の緒に長き契りをいかが結ばん
源氏物語:49 総角 (新字新仮名) / 紫式部(著)
城ヶ島の燈明台にぶん廻す落日いりひ避雷針にかれけるかも
雲母集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
修験者の地をくような叫び。竜之助は何事が起ったのかと思う——誰かこの夜中に、ここへ来たものがあるらしい。雨も風もみはしないのに。
大菩薩峠:05 龍神の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「十九や二十歳はたちの若い娘が、こんな寸延すんのびの得物を背中へ突きけるほど自分の胸に突つ立てられるものでせうか」
痛さに、われを忘れて、政子は悲鳴をあげたが、同時に、その侍の口からも異様なうめきが流れた。その侍は、何者かに、刃で脾腹ひばらを刺しかれていたのである。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
秋萩を妻鹿こそ、一子ひとりごに子たりといへ、鹿児かこじもの吾が独子ひとりごの、草枕旅にし行けば、竹珠たかだましじき垂り、斎戸いはひべ木綿ゆふでて、いはひつつ吾が思ふ吾子あこ
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
謝罪って謝罪って謝罪りいたらお情深い親方様が、まさかにいつまで怒ってばかりも居られまい、一時の料簡違いは堪忍かにして下さることもあろう、分別しかえて意地らずに
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「君見たように叡山えいざんへ登るのに、若狭わかさまで突きける男は白雨ゆうだちの酔っ払だよ」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この春は柳の芽にぞ玉はく咲き散る花の行くへ知らねば
源氏物語:36 柏木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
青銭の穴あき銭をかなしよと父のみ前にきて数へつ
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
火事は室町屋から出たので、今しも台所を吹きいて、二階の廊下を焼き抜いて、真紅まっかほのおがメラメラとのぼる。
大菩薩峠:05 龍神の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
川に面した廣間を三つ四つつこいて、如何にも文身ほりもの自慢らしいのが、もう五六人も集つて居りますが、平次は別段その中から人の顏を物色するでもなく
巻八(一四六五)に、藤原夫人ふじわらのぶにんの、「霍公鳥ほととぎすいたくな鳴きそ汝が声を五月さつきの玉にくまでに」
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
三位卿の剣は力まかせにつづらのふたをブスッといて切羽せっぱの辺まで突き通って行った。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)