)” の例文
またある日、このガスを空気ポンプでくと、静に蒸発した。翌日同じ事をやると、今度は爆発し、傍にいたデビーもあごに負傷した。
そこで急いで剣をいて出ていって切りつけた。剣は怪しい男のあしに中って一方の股が落ちた。怪しい男は悲鳴をあげて逃げていった。
阿英 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
俯向うつむけて唄うので、うなじいた転軫てんじんかかる手つきは、鬼が角をはじくと言わばいかめしい、むしろ黒猫が居て顔を洗うというのに適する。
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
したるとおどろほどくびながくなつてて、まるでそれは、はる眼下がんかよこたはれる深緑しんりよくうみからくきのやうにえました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
夜、二畳の炬燵こたつに入って、架上かじょうの一冊をいたら、「多情多恨たじょうたこん」であった。器械的きかいてきページひるがえして居ると、ついつり込まれて読み入った。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
恋愛は人世の秘鑰ひやくなり、恋愛ありて後人世あり、恋愛をき去りたらむには人生何の色味かあらむ、然るに尤も多く人世を観じ
厭世詩家と女性 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
この標準は時により人により随分まちまちであってその中から何等かの方則といったようなものをき出すのは容易な事とは思われない。
歌の口調 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
現に今日も、この卓子テエブルの上には、とうの籠へ入れた桜草さくらそうの鉢が、何本も細い茎をいた先へ、簇々ぞくぞくとうす赤い花をあつめている。……
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
まだ穂の出揃わぬ粟生の中にもまじっている。やや苅りごろに近く黒ずんだ陸稗の畑からもけ出ていた。目のさめるような丹色である。
雪国の春 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
敬太郎はそのひまに例の洋杖ステッキ傘入かさいれからき取ったなり、き込むように羽織の下へ入れて、主人の座に帰らないうちにそっと表へ出た。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
はるかに火薬庫の煙筒は高く三田村の岡をいて黄昏たそがれの空に現われているけれども、黒蛇のような煤煙はもうやんでしまった。
駅夫日記 (新字新仮名) / 白柳秀湖(著)
と言ひかけしが、ちて、椽側の上に釣れる竿架棚さおだなの上なる袋より、六尺程の竿一本をき取り来りて、之を振り廻しながら
元日の釣 (新字旧仮名) / 石井研堂(著)
虫自身にはそんな事のあった事は全く知らなく、よい加減蜜を吸ったらそこから嘴をき出し、復た他の花に這入って行く。
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
己は選びもせずに、ラシイヌのほかの一巻をき出して、て来た一巻を代りに入れて置いて、しづえと一しょに洋室を出た。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
たくし上げられた袖からきでて、二の腕まで腕が現われている。それにも血汐が着いている。手に握ったは白刃である。中段に構えて押し進む。
神秘昆虫館 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
選にれたる重要な作曲家のうちから、さらに数十人をいて年代順に略伝し、その重要作品と優秀レコードを掲げて、参考に便べんした次第である。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
「まア!」と言って妻は真蒼まっさおになった。自分は狼狽あわてふたつの抽斗をき放って中を一々あらためたけれど無いものは無い。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
そはたゞ其卷册の裡より我心にかなへるものをき出し得たりといふのみにて、譬へば蜂の百花の上に翼を休めて、唯だ一味の蜜を探らんが如くなるべし。
火山ばかりをき出して、他の山岳から離隔して、それを特色とすることを好まない、またこの頃の一部の若い人たちのように、日本アルプスからとかく
日本山岳景の特色 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
藁葺わらぶき屋根を越してくるわの一劃の密集した屋根が近々と望まれた。日本建ての屋根瓦のごちゃごちゃした上に西洋風の塔が取って付けたようにき立っていた。
とと屋禅譚 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
春は草木の花を開かしめ芽をかしめ、禽獸蟲魚をして、其の蟄伏の状態よりして、活動の状態に移らしめる。
努力論 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
日の光は形円きトベラノキに遮られて空気ひややかに風うすく匐ひくねれるサンザシに淡紅緑の芽は蕾み、そのもとに水仙の芽ぞ寸ばかり地をきてうちそよぐ。
春の暗示 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
所謂写実派と雖も豈徒らに事の長さと物の広さとを詳記して止む者ならんや、事の情と物の態とをきて之を写さゞるを得ず、然らば即ち是も亦理想派なり。
詩人論 (新字旧仮名) / 山路愛山(著)
四角に見えたる食卓ながら横に板をして支えの腕木をめければたちまち長方形の大なる食卓と変じぬ。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
肉体にくたい通例つうれい附近ふきん森蔭もりかげ神社やしろ床下ゆかしたなどにかくき、ただいたたましいのみを遠方えんぽうすものでござる。
彼は手をさし延べて、枕のずつと上の方にある書棚から、何か書物を手任てまかせにかうとした。その手を書棚にかけた瞬間に、がちやん! と物の壊れる音がした。
多くの誡命の中からこの二つをき出し、これが最も重要なる根本的の誡命であると答え給うたのです。
恋愛は人生の秘鑰ひやくなり、恋愛ありて後、人世あり。恋愛をき去りたらむには人生何の色味しきみかあらむ。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
それ等の若い詩人の詩集をいて一一の作者の特長や詩の題目及び傾向を簡潔に聞かせてれた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
つい近代までの学者は、精苦して八十幾つの元素を万有の中からき出してみたが、電子というものが出てみると、その八十幾つの元素がことごとくおばけとなってしまいました。
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
といったかと思うと、伴れている金甲神が、もう刀をいて、周の腹を裂いて、その臓腑をだしてあらって、もとの通りに収め、その上に四角な竹の笠をせ、釘をその四隅に打ったが
近代の霊媒中、嶄然ざんぜん一頭地をいて居るのは、何と言ってもステーントン・モーゼスで、その手にれる自動書記の産物『霊訓スピリットティチングス』は、たしかに後世に残るべき、斯界しかいのクラシックである。
此一卷は萬葉の光彩を添ふると共に和歌界の光彩を添ふる者として余は特に之をき出だしゝなり。然るに所謂歌よみ等の之を擯斥ひんせきするは其趣向の滑稽なりとの理由による者にやあらん。
万葉集巻十六 (旧字旧仮名) / 正岡子規(著)
時に松風ひびきあがり、野飼の駒たてがみを振ひ、首をもたげ、高くいばゆることやまざりき。傍に砕けたる瓦のうづたかきがあり、そのあひだをきいでて、姫百合の一もと花さくもあはれなり。
松浦あがた (新字旧仮名) / 蒲原有明(著)
若人たちは茎を折っては、巧みに糸を引き切らぬように、長く長くとき出す。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
その矗々ちくちくとして、鋭く尖れるところ、一穂の寒剣、晃々天を削る如く、千山万岳鉄桶を囲繞せる中に、一肩を高くき、あたまに危石あり、脚に迅湍あり、天柱こつとして揺がず、まことに唐人の山水画
種々いろんなものがあって、錠も下さないであったが、婆さんがしたのか、誰れがしたのか、何時の間にかお前の物は、余処々々よそよそしく、他へ入れ換えて了って、今では唯上たったの一つが、き差し出来るだけで
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
姑が帰ってから二、三日の間、お庄母子おやこは家の片着けにかかっていた。箪笥の抽斗ひきだしが残らずき出され、錠のおろされた用心籠や風を入れたことのないような行李が、押入れの奥から引っ張り出された。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
彼は矢立やたての筆をきて、手形用紙に金額を書入れんとするを
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
立ちつつ棚の本をく。
晶子詩篇全集拾遺 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
……大きな建物ばかり、四方に聳立しょうりつした中にこの仄白ほのじろいのが、四角に暗夜やみいた、どの窓にも光は見えず、もやの曇りで陰々としている。
開扉一妖帖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
といって、その毛のない革をいて、七郎を伴れて一緒にいこうとした。七郎は聞かなかった。そこで武はひとりで帰っていった。
田七郎 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
たとえば「雀の毛槍」などは、私等がいてもてあそんだのは、もっと茎が長々として花のふさが大きく、絵にある行列のお供の槍とよく似ていた。
心を物外にかんとするは未だし、物外、物内、何すれぞ悟達の別を画かむ。運命に黙従し、神意に一任して、始めて真悟の域に達せんか。
山庵雑記 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
今夜はいつになく風が止んで、墓地と畑の境にそそり立ったはんの梢が煙のように、え渡る月をいて物すごい光が寒竹のやぶをあやしく隈どっている。
駅夫日記 (新字新仮名) / 白柳秀湖(著)
わたくしは唯其中に見えてゐる一の人物をき出して、此に註して置く。即ち「奇縁遇浄尼」の句中の浄尼じやうにである。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
裁縫しごとの手をめて、火熨に逡巡ためらっていた糸子は、入子菱いりこびしかがった指抜をいて、鵇色ときいろしろかねの雨を刺す針差はりさしを裏に、如鱗木じょりんもくの塗美くしきふたをはたと落した。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
五濁五悪ごじょくごあくの血肉をき去ってその代りに、天人の玉の乳鉢で煉った、真珠の露を入れ換えたと言った感じです。
日の光は形円きトベラノキに遮られて空気ひややかに風うすく匐ひくねれるサンザシに淡紅緑の芽は蕾み、そのもとに水仙の芽ぞ寸ばかり地をきてうち戦ぐ。
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
處々にけ出でたる截石きりいしまさおちんとして僅に懸りたるさま、唯だ蔓草にのみ支へられたるかと疑はる。