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抽
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ぬ
ふりがな文庫
“
抽
(
ぬ
)” の例文
またある日、このガスを空気ポンプで
抽
(
ぬ
)
くと、静に蒸発した。翌日同じ事をやると、今度は爆発し、傍にいたデビーも
腮
(
あご
)
に負傷した。
ファラデーの伝:電気学の泰斗
(新字新仮名)
/
愛知敬一
(著)
そこで急いで剣を
抽
(
ぬ
)
いて出ていって切りつけた。剣は怪しい男の
股
(
あし
)
に中って一方の股が落ちた。怪しい男は悲鳴をあげて逃げていった。
阿英
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
と
俯向
(
うつむ
)
けて唄うので、
頸
(
うなじ
)
を
抽
(
ぬ
)
いた
転軫
(
てんじん
)
に
掛
(
かか
)
る手つきは、鬼が角を
弾
(
はじ
)
くと言わば
厳
(
いか
)
めしい、むしろ黒猫が居て顔を洗うというのに適する。
伯爵の釵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
下
(
した
)
を
見
(
み
)
ると
驚
(
おどろ
)
く
程
(
ほど
)
首
(
くび
)
が
長
(
なが
)
くなつて
居
(
ゐ
)
て、
宛
(
まる
)
でそれは、
遙
(
はる
)
か
眼下
(
がんか
)
に
横
(
よこ
)
たはれる
深緑
(
しんりよく
)
の
木
(
こ
)
の
葉
(
は
)
の
海
(
うみ
)
から
抽
(
ぬ
)
き
出
(
で
)
て
居
(
ゐ
)
る
莖
(
くき
)
のやうに
見
(
み
)
えました。
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
夜、二畳の
炬燵
(
こたつ
)
に入って、
架上
(
かじょう
)
の一冊を
抽
(
ぬ
)
いたら、「
多情多恨
(
たじょうたこん
)
」であった。
器械的
(
きかいてき
)
に
頁
(
ページ
)
を
翻
(
ひるがえ
)
して居ると、ついつり込まれて読み入った。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
▼ もっと見る
恋愛は人世の
秘鑰
(
ひやく
)
なり、恋愛ありて後人世あり、恋愛を
抽
(
ぬ
)
き去りたらむには人生何の色味かあらむ、然るに尤も多く人世を観じ
厭世詩家と女性
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
この標準は時により人により随分まちまちであってその中から何等かの方則といったようなものを
抽
(
ぬ
)
き出すのは容易な事とは思われない。
歌の口調
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
現に今日も、この
卓子
(
テエブル
)
の上には、
籐
(
とう
)
の籠へ入れた
桜草
(
さくらそう
)
の鉢が、何本も細い茎を
抽
(
ぬ
)
いた先へ、
簇々
(
ぞくぞく
)
とうす赤い花を
攅
(
あつ
)
めている。……
路上
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
まだ穂の出揃わぬ粟生の中にもまじっている。やや苅りごろに近く黒ずんだ陸稗の畑からも
抽
(
ぬ
)
け出ていた。目のさめるような丹色である。
雪国の春
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
敬太郎はそのひまに例の
洋杖
(
ステッキ
)
を
傘入
(
かさいれ
)
から
抽
(
ぬ
)
き取ったなり、
抱
(
だ
)
き込むように羽織の下へ入れて、主人の座に帰らないうちにそっと表へ出た。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
はるかに火薬庫の煙筒は高く三田村の岡を
抽
(
ぬ
)
いて
黄昏
(
たそがれ
)
の空に現われているけれども、黒蛇のような煤煙はもうやんでしまった。
駅夫日記
(新字新仮名)
/
白柳秀湖
(著)
と言ひかけしが、
起
(
た
)
ちて、椽側の上に釣れる
竿架棚
(
さおだな
)
の上なる袋より、六尺程の竿一本を
抽
(
ぬ
)
き取り来りて、之を振り廻しながら
元日の釣
(新字旧仮名)
/
石井研堂
(著)
虫自身にはそんな事のあった事は全く知らなく、よい加減蜜を吸ったらそこから嘴を
抽
(
ぬ
)
き出し、復た他の花に這入って行く。
植物記
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
己は選びもせずに、ラシイヌの
外
(
ほか
)
の一巻を
抽
(
ぬ
)
き出して、
持
(
も
)
て来た一巻を代りに入れて置いて、しづえと一しょに洋室を出た。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
たくし上げられた袖から
抽
(
ぬ
)
きでて、二の腕まで腕が現われている。それにも血汐が着いている。手に握ったは白刃である。中段に構えて押し進む。
神秘昆虫館
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
選に
漏
(
も
)
れたる重要な作曲家のうちから、さらに数十人を
抽
(
ぬ
)
いて年代順に略伝し、その重要作品と優秀レコードを掲げて、参考に
便
(
べん
)
した次第である。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
「まア!」と言って妻は
真蒼
(
まっさお
)
になった。自分は
狼狽
(
あわて
)
て
二
(
ふたつ
)
の抽斗を
抽
(
ぬ
)
き放って中を一々
験
(
あら
)
ためたけれど無いものは無い。
酒中日記
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
そはたゞ其卷册の裡より我心に
適
(
かな
)
へるものを
抽
(
ぬ
)
き出し得たりといふのみにて、譬へば蜂の百花の上に翼を休めて、唯だ一味の蜜を探らんが如くなるべし。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
火山ばかりを
抽
(
ぬ
)
き出して、他の山岳から離隔して、それを特色とすることを好まない、またこの頃の一部の若い人たちのように、日本アルプスからとかく
日本山岳景の特色
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
藁葺
(
わらぶき
)
屋根を越して
廓
(
くるわ
)
の一劃の密集した屋根が近々と望まれた。日本建ての屋根瓦のごちゃごちゃした上に西洋風の塔が取って付けたように
抽
(
ぬ
)
き立っていた。
とと屋禅譚
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
春は草木の花を開かしめ芽を
抽
(
ぬ
)
かしめ、禽獸蟲魚をして、其の蟄伏の状態よりして、活動の状態に移らしめる。
努力論
(旧字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
日の光は形円きトベラノキに遮られて空気
冷
(
ひや
)
やかに風うすく匐ひくねれるサンザシに淡紅緑の芽は蕾み、そのもとに水仙の芽ぞ寸ばかり地を
抽
(
ぬ
)
きてうち
戦
(
そよ
)
ぐ。
春の暗示
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
所謂写実派と雖も豈徒らに事の長さと物の広さとを詳記して止む者ならんや、事の情と物の態とを
抽
(
ぬ
)
きて之を写さゞるを得ず、然らば即ち是も亦理想派なり。
詩人論
(新字旧仮名)
/
山路愛山
(著)
四角に見えたる食卓ながら横に板を
抽
(
ぬ
)
き
出
(
だ
)
して支えの腕木を
箝
(
は
)
めければ
忽
(
たち
)
まち長方形の大なる食卓と変じぬ。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
肉体
(
にくたい
)
は
通例
(
つうれい
)
附近
(
ふきん
)
の
森蔭
(
もりかげ
)
や
神社
(
やしろ
)
の
床下
(
ゆかした
)
などに
隠
(
かく
)
し
置
(
お
)
き、ただ
引
(
ひ
)
き
抽
(
ぬ
)
いた
魂
(
たましい
)
のみを
遠方
(
えんぽう
)
に
連
(
つ
)
れ
出
(
だ
)
すものでござる。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
彼は手をさし延べて、枕のずつと上の方にある書棚から、何か書物を
手任
(
てまか
)
せに
抽
(
ぬ
)
かうとした。その手を書棚にかけた瞬間に、がちやん! と物の壊れる音がした。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
多くの誡命の中からこの二つを
抽
(
ぬ
)
き出し、これが最も重要なる根本的の誡命であると答え給うたのです。
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
恋愛は人生の
秘鑰
(
ひやく
)
なり、恋愛ありて後、人世あり。恋愛を
抽
(
ぬ
)
き去りたらむには人生何の
色味
(
しきみ
)
かあらむ。
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
其
(
それ
)
等の若い詩人の詩集を
抽
(
ぬ
)
いて一一の作者の特長や詩の題目及び傾向を簡潔に聞かせて
呉
(
く
)
れた。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
つい近代までの学者は、精苦して八十幾つの元素を万有の中から
抽
(
ぬ
)
き出してみたが、電子というものが出てみると、その八十幾つの元素がことごとくおばけとなってしまいました。
大菩薩峠:25 みちりやの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
といったかと思うと、伴れている金甲神が、もう刀を
抽
(
ぬ
)
いて、周の腹を裂いて、その臓腑をだして
滌
(
あら
)
って、もとの通りに収め、その上に四角な竹の笠を
伏
(
ふ
)
せ、釘をその四隅に打ったが
涼亭:――序に代へて――
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
近代の霊媒中、
嶄然
(
ざんぜん
)
一頭地を
抽
(
ぬ
)
いて居るのは、何と言ってもステーントン・モーゼスで、その手に
成
(
な
)
れる自動書記の産物『
霊訓
(
スピリットティチングス
)
』は、たしかに後世に残るべき、
斯界
(
しかい
)
のクラシックである。
霊訓
(新字新仮名)
/
ウィリアム・ステイントン・モーゼス
(著)
此一卷は萬葉の光彩を添ふると共に和歌界の光彩を添ふる者として余は特に之を
抽
(
ぬ
)
き出だしゝなり。然るに所謂歌よみ等の之を
擯斥
(
ひんせき
)
するは其趣向の滑稽なりとの理由による者にやあらん。
万葉集巻十六
(旧字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
時に松風ひびきあがり、野飼の駒たてがみを振ひ、首を
擡
(
もた
)
げ、高く
嘶
(
いば
)
ゆることやまざりき。傍に砕けたる瓦の
堆
(
うづたか
)
きがあり、そのあひだを
抽
(
ぬ
)
きいでて、姫百合の一もと花さくもあはれなり。
松浦あがた
(新字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
若人たちは茎を折っては、巧みに糸を引き切らぬように、長く長くと
抽
(
ぬ
)
き出す。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
その
矗々
(
ちくちく
)
として、鋭く尖れるところ、一穂の寒剣、晃々天を削る如く、千山万岳鉄桶を囲繞せる中に、一肩を高く
抽
(
ぬ
)
き、
頭
(
あたま
)
に危石あり、脚に迅湍あり、天柱
屹
(
こつ
)
として揺がず、
洵
(
まこと
)
に唐人の山水画
それからそれ:書斎山岳文断片
(新字新仮名)
/
宇野浩二
(著)
種々
(
いろん
)
なものがあって、錠も下さないであったが、婆さんがしたのか、誰れがしたのか、何時の間にかお前の物は、
余処々々
(
よそよそ
)
しく、他へ入れ換えて了って、今では
唯上
(
たった
)
の一つが、
抽
(
ぬ
)
き差し出来るだけで
別れたる妻に送る手紙
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
姑が帰ってから二、三日の間、お庄
母子
(
おやこ
)
は家の片着けにかかっていた。箪笥の
抽斗
(
ひきだし
)
が残らず
抽
(
ぬ
)
き出され、錠の
卸
(
おろ
)
された用心籠や風を入れたことのないような行李が、押入れの奥から引っ張り出された。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
彼は
矢立
(
やたて
)
の筆を
抽
(
ぬ
)
きて、手形用紙に金額を書入れんとするを
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
立ちつつ棚の本を
抽
(
ぬ
)
く。
晶子詩篇全集拾遺
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
……大きな建物ばかり、四方に
聳立
(
しょうりつ
)
した中にこの
仄白
(
ほのじろ
)
いのが、四角に
暗夜
(
やみ
)
を
抽
(
ぬ
)
いた、どの窓にも光は見えず、
靄
(
もや
)
の曇りで陰々としている。
開扉一妖帖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
といって、その毛のない革を
抽
(
ぬ
)
いて、七郎を伴れて一緒にいこうとした。七郎は聞かなかった。そこで武は
独
(
ひと
)
りで帰っていった。
田七郎
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
たとえば「雀の毛槍」などは、私等が
抽
(
ぬ
)
いて
弄
(
もてあそ
)
んだのは、もっと茎が長々として花の
総
(
ふさ
)
が大きく、絵にある行列のお供の槍とよく似ていた。
野草雑記・野鳥雑記:01 野草雑記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
心を物外に
抽
(
ぬ
)
かんとするは未だし、物外、物内、何すれぞ悟達の別を画かむ。運命に黙従し、神意に一任して、始めて真悟の域に達せんか。
山庵雑記
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
今夜はいつになく風が止んで、墓地と畑の境にそそり立った
榛
(
はん
)
の梢が煙のように、
冴
(
さ
)
え渡る月を
抽
(
ぬ
)
いて物すごい光が寒竹の
藪
(
やぶ
)
をあやしく隈どっている。
駅夫日記
(新字新仮名)
/
白柳秀湖
(著)
わたくしは唯其中に見えてゐる一の人物を
抽
(
ぬ
)
き出して、此に註して置く。即ち「奇縁遇浄尼」の句中の
浄尼
(
じやうに
)
である。
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
裁縫
(
しごと
)
の手を
休
(
や
)
めて、火熨に
逡巡
(
ためら
)
っていた糸子は、
入子菱
(
いりこびし
)
に
縢
(
かが
)
った指抜を
抽
(
ぬ
)
いて、
鵇色
(
ときいろ
)
に
銀
(
しろかね
)
の雨を刺す
針差
(
はりさし
)
を裏に、
如鱗木
(
じょりんもく
)
の塗美くしき
蓋
(
ふた
)
をはたと落した。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
五濁五悪
(
ごじょくごあく
)
の血肉を
抽
(
ぬ
)
き去ってその代りに、天人の玉の乳鉢で煉った、真珠の露を入れ換えたと言った感じです。
銭形平次捕物控:237 毒酒薬酒
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
日の光は形円きトベラノキに遮られて空気
冷
(
ひや
)
やかに風うすく匐ひくねれるサンザシに淡紅緑の芽は蕾み、そのもとに水仙の芽ぞ寸ばかり地を
抽
(
ぬ
)
きてうち戦ぐ。
桐の花
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
處々に
抽
(
ぬ
)
け出でたる
截石
(
きりいし
)
の
將
(
まさ
)
に
墜
(
おち
)
んとして僅に懸りたるさま、唯だ蔓草にのみ支へられたるかと疑はる。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
抽
常用漢字
中学
部首:⼿
8画
“抽”を含む語句
抽出
抽籤
抽斗
引抽
抽象的
抽象派
小抽斗
抽匣
渋江抽斎
小抽出
抽取
澀江抽斎
抽象
抽箱
抽象究的
抽賞
新抽
澀江抽齋
籤抽
雑抽
...