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沾
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ぬ
ふりがな文庫
“
沾
(
ぬ
)” の例文
支線の車に乗り換へると、ローラも涙に
沾
(
ぬ
)
れた顔を直すためにヷニテイ・ケースを膝の上に取りあげると一心になつて鏡をのぞきはぢめた。
南風譜
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
おつぎは
冷
(
つめ
)
たい
雨
(
あめ
)
に
沾
(
ぬ
)
れてさうして
少
(
すこ
)
し
縮
(
ちゞ
)
れた
髮
(
かみ
)
が
亂
(
みだ
)
れてくつたりと
頬
(
ほゝ
)
に
附
(
つ
)
いて
足
(
あし
)
には
朽
(
く
)
ちた
竹
(
たけ
)
の
葉
(
は
)
がくつゝいて
居
(
ゐ
)
る。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
「吾妹子が
赤裳
(
あかも
)
の裾の
染
(
し
)
め
湿
(
ひ
)
ぢむ今日の
小雨
(
こさめ
)
に吾さへ
沾
(
ぬ
)
れな」(巻七・一〇九〇)は男の歌だが同じような内容である。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
例せば誰も蛇は常に
沾
(
ぬ
)
れ粘ったものと信ずるが、これその鱗が強く光るからで、実際そんなに沾れ粘るなら沙塵が着き、
重
(
おも
)
りて疾く走り得ぬはずでないか。
十二支考:04 蛇に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
そこでお頸をお刺し申そうとして三度振りましたけれども、
哀
(
かな
)
しみの情がたちまちに起つてお刺し申すことができないで、泣きました涙がお顏を
沾
(
ぬ
)
らしました。
古事記:03 現代語訳 古事記
(旧字新仮名)
/
太安万侶
、
稗田阿礼
(著)
▼ もっと見る
麻や
栲
(
たえ
)
を着ていた時代には、その扇は使わずともすぐに蒸発したのが、
木綿
(
もめん
)
になってそれをほとんと不可能にしたのである。だから夏分は肌がいつも
沾
(
ぬ
)
れている。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
何とは知らず周囲の草の中で、がさがさ音がして犬の
沾
(
ぬ
)
れて居る口の端に這い寄るものがある。木の上では睡った鳥の重りで枯枝の落ちる音がする。近い街道では車が軋る。
犬
(新字新仮名)
/
レオニード・ニコラーエヴィチ・アンドレーエフ
(著)
「ぬばたまの黒髪山を朝越えて
山下露
(
やましたつゆ
)
に
沾
(
ぬ
)
れにけるかも」(巻七・一二四一)などと較べると、やはり此歌の方が旨い。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
いわく家馬肉のごとし、ただし地に落ちて沙に
沾
(
ぬ
)
れず〉とあるは、いわゆる蒙古の
野小馬
(
ワイルド・ポニー
)
一名プルシャワルスキ馬だろうが、昔は今より住む所が広かったらしい。
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
「わたしは不思議な夢を見た。サホの方から俄雨が降つて來て、急に顏を
沾
(
ぬ
)
らした。また
錦色
(
にしきいろ
)
の小蛇がわたしの
頸
(
くび
)
に
纏
(
まと
)
いついた。こういう夢は何のあらわれだろうか」
古事記:03 現代語訳 古事記
(旧字新仮名)
/
太安万侶
、
稗田阿礼
(著)
あまり
賑
(
にぎ
)
やかそうなので
傘
(
かさ
)
を借りて、夕方ぶらりと様子を見に出てみると、
土俵場
(
どひょうば
)
は雨に
沾
(
ぬ
)
れて人影もなく、ただその周囲の掛茶屋の中から、多くの
灯
(
ひ
)
が
揺
(
ゆら
)
めき酒盛りの声が聞えている。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
盥
(
たらひ
)
の
汚
(
けが
)
れた
微温湯
(
ぬるまゆ
)
は
簀
(
す
)
の
子
(
こ
)
の
上
(
うへ
)
から
土
(
つち
)
に
注
(
そゝ
)
がれた。さうして
其
(
そ
)
の
沾
(
ぬ
)
れた
簀
(
す
)
の
子
(
こ
)
には
捲
(
ま
)
くつた
筵
(
むしろ
)
が
又
(
また
)
敷
(
し
)
かれた。
朝
(
あさ
)
から
雨戸
(
あまど
)
は
開
(
あ
)
け
放
(
はな
)
たれて
歩
(
ある
)
けばぎし/\と
鳴
(
な
)
る
簀
(
す
)
の
子
(
こ
)
の
上
(
うへ
)
の
筵
(
むしろ
)
は
草箒
(
くさばうき
)
で
掃
(
は
)
かれた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
また「
霍公鳥
(
ほととぎす
)
しぬぬに
沾
(
ぬ
)
れて」(同・一九七七)等の例もあり人間以外の
沾
(
ぬ
)
れた用例の一つである。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
何処
(
いずこ
)
とも知れぬ大海を漂浪したこの動物の遺骸破れ損じて浜辺の地上にのたくった、その長さ四丈八尺
海沫
(
かいまつ
)
に
沾
(
ぬ
)
れ巌石に磨かれたるを、ヘルモナクス魚取らんとて網で引き上げ
十二支考:03 田原藤太竜宮入りの話
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
沾
漢検1級
部首:⽔
8画
“沾”を含む語句
教儂不沾裙
恩沾無涯
沾圃
沾峩
沾徳
沾汚
沾沾
沾蓬
菊岡沾涼
露沾