“うつ”のいろいろな漢字の書き方と例文
カタカナ:ウツ
語句割合
28.2%
12.5%
9.6%
4.9%
4.4%
3.3%
3.1%
2.9%
2.9%
2.7%
2.6%
2.4%
伝染2.3%
1.5%
1.4%
1.2%
1.1%
0.7%
宇津0.6%
感染0.6%
0.6%
傳染0.5%
0.4%
0.3%
0.3%
0.3%
0.3%
反映0.3%
0.3%
0.3%
0.3%
0.3%
移転0.3%
0.2%
宇都0.2%
0.2%
0.2%
0.2%
0.2%
0.2%
0.2%
相応0.2%
移動0.2%
移轉0.2%
0.2%
0.2%
0.2%
0.2%
0.2%
0.1%
0.1%
白痴0.1%
0.1%
0.1%
内海0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
推移0.1%
0.1%
撮影0.1%
映像0.1%
映射0.1%
0.1%
模彩0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
移植0.1%
移牒0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
臨摹0.1%
0.1%
0.1%
虚茫0.1%
調和0.1%
謄写0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
遷座0.1%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
はっと、視覚から脳へそれが直感する一秒間の何分の一かわからない一瞬に、すでに眼にうつる二人の位置と姿勢はまるで変っている。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
眞紅しんくへ、ほんのりとかすみをかけて、あたらしい𤏋ぱつうつる、棟瓦むねがはら夕舂日ゆふづくひんださまなる瓦斯暖爐がすだんろまへへ、長椅子ながいすなゝめに、トもすそゆか
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
すなわ曹国公そうこくこう李景隆りけいりゅうに命じ、兵を調してにわかに河南に至り、周王しゅく及び世子せいし妃嬪ひひんとらえ、爵を削りて庶人しょじんとなし、これ雲南うんなんうつしぬ。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「なーんだ」わたしは出し抜かれたやうなうつろな気になつた。わたしは腕組をして、四畳半をたゞうろついた。帽子をかぶつて外に出た。
愚かな父 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
「いや、許田の御猟は、近来のご盛事じゃったな。臣下のわれわれも、久しぶり山野にうつを散じて、まことに、愉快な日であった」
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それだから、彼等にとって生徒はまことに有難いものにうつるので「生徒さん」と云う名をつけてママして呼びずてにする事はしなかった。
農村 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
九人は、完全にうつの庶民の心に、なりかえって居た。山の上は、昔語りするには、あまり寂しいことを忘れて居たのである。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
かれに映じた女の姿勢は、自然の経過を、尤もうつくしい刹那に、捕虜とりこにして動けなくした様である。かはらない所に、ながい慰藉がある。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
……ハートをダイヤだと言い、勘定を間違え、札を取り落し、はては物におびえたようなうつろな笑い声を立てて、皆の顔を見廻す。
グーセフ (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
源氏の藤の裏葉を七枚程書いたところへ、画報社から写真をうつしに来た。七瀬と八峰が厭がつたから私とりんとだけで撮つて貰つた。
六日間:(日記) (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
彼は口腔内にも光があるのを確かめてから、死体をうつ向けて、背に現われている鮮紅色の屍斑を目がけ、グサリと小刀ナイフの刃を入れた。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
……なんの色もない、うつろな眼であった。彼はまじまじと月心尼の顔を見戍みまもっていたが、やがて寂しそうに首を振りながら云った。
春いくたび (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「ああそうか、なるほどなるほど、いかにもそうでしたね、……そりゃ叔父さんのクセが伝染うつって六ヶ敷しく考えすぎたかナ……」
白金神経の少女 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
虚栄の念また盛んで馬具で美麗を誇る、故にスペインで不従順な馬を懲らすに荘厳なる頭飾と鈴を取り上げ他の馬にうつし付けると。
彼女はやさしい聲音こわねで僕に語る——あなたが實にうまうつしとつたあの眼で凝と僕を見下して——その珊瑚さんごのやうな唇で、僕に微笑ほゝゑみかける。
家主あるじ壮夫わかもの三五人をともなひ来りて光る物をうつに石なり、皆もつてくわいとし石を竹林に捨つ、その石夜毎よごとに光りあり、村人おそれて夜行ものなし。
ただの町獣医まちじゅういつまでは親類しんるいわせる顔もないと思うから、どう考えてもあきらめられない。それであけてもれてもうつうつたのしまない。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
宮は慄然りつぜんとして振仰ぎしが、荒尾の鋭きまなじりは貫一がうらみうつりたりやと、その見る前に身の措所無おきどころな打竦うちすくみたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
やがて、小夜の中山、宇津うつの山を越えたとき、遠くに雪を頂いた山が見えた。名を尋ねると甲斐かい白根しらねというのであった。
「波岡家では、町方の手先や御用聞は、門の中へ入れると、不浄が感染うつると言ったじゃないか」
丹泉はしきりに称讃して其鼎をためつすがめつ熟視し、手をもつて大さをはかつたり、ふところ紙に鼎の紋様をうつしたりして、斯様いふ奇品に面した眼福を喜び謝したりして帰つた。
骨董 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
「レコが入つてたんやろ。……あの人も雪隱で拍手を叩くなんて、少し傳染うつつて來たかなア、おきちが。」と千代松は微笑ほゝゑんだ。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
唇から付いたんなら、もう少しうつすり付きますが、筒の口は紅が笹色さゝいろになつてゐるほど付いてるでせう。それは、紅皿から指で筒の口へなすつたものに相違ありません
映すことの構造はうつすが示すようにうつす、うつす、うつすなどの等値的射影を意味している。
うつす (新字新仮名) / 中井正一(著)
見るに足らぬとそちで思わばおのれが手筋も知れてある、大方高の知れた塔建たぬ前から眼にうつって気の毒ながら批難なんもある、もう堪忍の緒もれたり
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
一二二けんぞくのなすところ、人のさいはひを見てはうつしてわざはひとし、世のをさまるを見てはみだれおこさしむ。
うつて仰の通り少しも違はず何でも物ごとは話して見なばわからぬものなり貴君樣に此お話しをせずば大切の品を何時いつまでもあづかり居るか知れざりしに今日元の主へ返へすべき便たよりを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
時折その信心が迷信におちいっている場合もあるでしょうが、信心は人間を真面目にさせます。このことが作る品物にも反映うつってくるのだと思われます。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
そういう英雄豪傑の写真に交って、ぽん太の写真が三、四種類あり、洗い髪で指をほおのところに当てたのもあれば、桃割に結ったのもあり、口紅の濃くうつっているのもあった。
三筋町界隈 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
内容には色々な世相をうつしてゐるが、秀れたものは、矢張り恋愛と戦争を書いたものに多かつた。
うつかりして居ればおとなまでが、汚ないつらしてやがるといふ言葉を叩きつけて行く、めたん子の遊ぶ時間はどれだけたつぷりあつても、何處も行き停まりであつて
めたん子伝 (旧字旧仮名) / 室生犀星(著)
わざわざ御自身でおいでくだされて、あのうつけ者を婿養子むこようしにとのお言葉さえあるに、恐れ入ったただいまの御仕儀ごしぎ。これが尋常よのつねの兄じゃ弟じゃならば、当方は蔵前取りで貴殿は地方じがただ。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
善は急げと、其日すぐお由の家に移転うつつた。重兵衛の後にいて怖々おづおづ入つて来る松太郎を見ると、生柴なましば大炉おほろをりべてフウフウ吹いてゐたお由は、突然いきなり
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
登時そのとき大岡忠相ぬし再度ふたゝび元益に向ひて云やう其方親子おやこは庄兵衞の殺されたるより其のかたきうつくれよと願ひ出たるをり武左衞門親子おやこの者はまさしく庄兵衞を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
こめし櫻山めぐふもとに風かほる時は卯月うづきの末の空花の藤枝ふぢえだはや過て岡部に續く宇都うつの山つたの細道十團子とほだんご夢かうつゝにも人にもあはぬ宇都の谷と彼の能因のういんが昔を今にふりも變らぬ梅若葉鞠子まりこの宿を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
さてそのついでに調べると、小栗の譚は日本の史実を本としたものの、西暦二世紀に、チミジア国(今のアルゼリア)の人アプレイウスが書いた、『金驢篇デ・アシノアウレオ』の処々をうつし入れた跡が少なくない。
葉子は顔をあかくして、うつむいていた。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
うつけしさまにたてる時。
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
詮方せうことなしに煙草の会社へ通つて居た十一になる娘を芳原よしはらへ十両でうつて、それも手数の何のツて途中へ消えて、手に入つたのはたつたお前、六両ぢやねいか、焼石に水どころの話ぢやねエ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
私はもと甘家の弟さんと許婚いいなずけになっていたものですが、家が貧しくって、遠くへうつったものですから、とうとう音信がなくなりました、それが今度帰って聞きますと、甘の方では
阿英 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
なぜ同行の大使館員二人にはうつらないのでしょう! これでは殿下は死んでも死に切れません! いいや殿下は我慢なさっても我々印度人にはもう我慢がならないのです
ナリン殿下への回想 (新字新仮名) / 橘外男(著)
柘榴ざくろの花は、薔薇よりも派手にかつ重苦しく見えた。緑の間にちらりちらりと光って見える位、強い色を出していた。従ってこれも代助の今の気分には相応うつらなかった。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
紙帳の天井に、楓の葉のような影が二個映ってい、それが、ひそかな音を立てて、あちこちへ移動うつっていた。小鳥の脚の影らしい。また二個数が増した。もう一羽、紙帳へ停まったらしい。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
善は急げと、其日すぐお由の家に移轉うつつた。重兵衞の後にいて怖々おづ/\と入つて來る松太郎を見ると、生柴を大爐に折燻べてフウ/\吹いてゐたお由は、突然
赤痢 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
よび出されしに女房が亂心らんしんなし奉行所へ召連うつたへとなししをすこしも知らねば如何なるすぢのお尋かと心に不審く引出されしが其時大岡殿庄兵衞を見られ其方は何時なんどき改名かいめいせしぞ其方の名を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
皇居を京都から東京にうつし、そこに新しい都を打ち建てよとの声が、それだ。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
従つて、傍丘を或はもとほりの丘辺など言ふ語でうつすことはいけないので、地名にあるものは、ただし此とは別である。かういふ言葉が文献時代になつても、散列層のやうにはさまつて残つて居るのである。
愚かしく、うつくしく
海豹と雲 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
お京は家に入るより洋燈らんぷに火をうつして、火鉢を掻きおこし、吉ちやんやおあたりよと聲をかけるに己れは厭やだと言つて柱際に立つて居るを
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
立通たてとほ指替さしかへの大小并びに具足迄省愼置たしなみおかるゝ程の氣質きしつにては勿々なか/\此金子を受取ざるも道理もつともなりしかしながら某しも一人のむすめうつて昔しの恩を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
原田は白眼付にらめつけこゝ横着わうちやくものめ定めし汝は脇差ばかりではあるまじ外々の品もぬすみ取てうつたであらうと問詰ければほかに二本の脇差はさわぎのうちゆゑ火中へ入て御座りしを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
なお、「春の日のうらがなしきにおくれゐて君に恋ひつつうつしけめやも」(巻十五・三七五二)という、狭野茅上娘子さぬのちがみのおとめの歌は全くこの歌の模倣である。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
「春の日のうらがなしきにおくれゐて君に恋ひつつうつしけめやも」(巻十五・三七五二)は狭野茅上娘子さぬのちがみのおとめの歌だから、やはり同じ傾向の範囲と看ることが出来
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
それを再び使者をもって我らに強制なされようとはいよいよもって白痴うつけな振る舞い。ただただ呆れるばかりでござる。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
返答を聞きたいと云われるなら甚五衛門しかと申し上げるによって、忘れずに殿に申し伝えられい——我らが主人義明公は、本来馬鹿者ではござらぬが魔性の女に魅入られて近来白痴うつけになり申した。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
それが自分にうつろうがうつるまいが、そんなことは一切合財考えなしで随分可笑おかしな不調和な扮装つくりをしている人が沢山あるようです。
好きな髷のことなど (新字新仮名) / 上村松園(著)
何とかして自分にあうもの、うつる形などについて、婦人がそれぞれに自分で考えるようなことになってほしい気がします。
好きな髷のことなど (新字新仮名) / 上村松園(著)
妙子さんのがうつったとは決して仰有らない。唯清之介さんが流感に罹った、と全く別口に扱っている。母親は殊に身贔屓みびいきが強く
女婿 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
お勢は返答をせず、只何か口疾くちばやささやいた様子で、忍音しのびねに笑う声が漏れて聞えると、お鍋の調子はずれの声で「ほんとに内海うつ……」「しッ!……まだ其所そこに」と小声ながら聞取れるほどに「居るんだよ」。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
うつし願は輕羅うすものと成て君が細腰こしにまつはりたしなどと凝塊こりかたまり養父五兵衞が病氣にて見世へいでぬを幸ひに若い者等をだましては日毎ひごと夜毎に通ひつめ邂逅たまさかうちねるには外を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
葡萄の蔓は高く這ひのぼりて、林の木々にさへ纏ひたり。彼方の山腹の尖りたるところにネミの市あり。其影は湖の底にうつりたり。我等は花を採り、梢を折りて、且行き且編みたり。
あなうつけ此櫛こそは
晶子詩篇全集拾遺 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
芝居は眼にうつたへる方が主で、耳に愬たへる方が従であるといふやうに解釈するものがあるとすれば、それはあまり芝居の歴史にうとすぎます。
演劇漫話 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
ただ闇雲やみくもに、外面如菩薩げめんにょぼさつの、噉肉外道たんにくげどうの、自力絶対のと、社会よのなかが変っても、人心や生活くらし様式ありさま推移うつっても、後生大事に旧学にかじりついているのは、俗にいう、馬鹿の一つ覚えと申すもので……。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
逐清搬楸枰 清を逐うて楸枰をうつす。
閉戸閑詠 (新字旧仮名) / 河上肇(著)
または写真機を出して撮影うつして行くものなぞいろいろありまして、中には何やらお話をしかけるものもあります。
オシャベリ姫 (新字新仮名) / 夢野久作かぐつちみどり(著)
めづらなる月の世界の鳥獣とりけもの映像うつすと聞けり。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
その水の光は、足許あしもとつちに影を映射うつして、羽織の栗梅くりうめあかるく澄み、袖の飛模様も千鳥に見える。
古狢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「年長く病みし渡れば、月かさね憂ひさまよひ、ことごとは死ななと思へど、五月蠅さばへなす騒ぐ児等を、うつててはしには知らず、見つつあれば心は燃えぬ」
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
さてこれに、血竭二羅度らど、焼酎十六度よりなる越幾斯エキスにて、雲様の斑点とらふ模彩うつす。かつ、あらかじめ原色料くすりをよく乾かすよう注意きをつけ、清澄たる洋漆を全面そうたいびせるべし。
元禄十三年 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「褌橋が落ちた。とうつったものです」で、みんなが笑い出した。今のは鉄橋。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
御存じだと思うが、仏教の方で瀉瓶しゃへいと云う言葉がある。かめの水をうつえるように、すっかり伝えてしまうことである。貴殿に対する拙者の人相教授も瀉瓶だった。
奉行と人相学 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
野に火が上り、海に浮び、河にうつる。おびただしい火の大群である。
お京は家に入るより洋燈らんぷに火をうつして、火鉢をきおこし、吉ちやんやおあたりよと声をかけるに己れは厭やだと言つて柱きはに立つてゐるを
わかれ道 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
山門の前五六間の所には、大きな赤松があって、その幹がななめに山門のいらかを隠して、遠い青空までびている。松の緑と朱塗しゅぬりの門が互いにうつり合ってみごとに見える。その上松の位地が好い。
夢十夜 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
うつてじと投げぬれば
騎士と姫 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
気難きむづかしきこの主人あるじむづかしき顔しつつさくら移植うつさせて
(新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
「ほウ、水上署から、水産局の監視船へ、事件が移牒うつされたってわけだね?」
動かぬ鯨群 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
さゞなみうつたる連着懸れんぢやくがけ
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
日本の国語にうつあとづけて行った詩のことばことばが、らんぼおやぼおどれいるや、そう言った人の育って来、又人々の特殊化して行ったそれぞれの国語の陰影を吸収して行かないのである。
詩語としての日本語 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
どどいつ端唄はうたなら、文句だけは存じておりますが、といって笑顔になって、それはお花見の船でなくッてはうつりません。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
京都に今歳ことし八十幾つかになる老人としよりで、指頭画しとうぐわの達者な爺さんがある。古い支那画しなゑなどを指頭ゆびさき臨摹うつすが、なか/\上手だ。夏目漱石氏が先年京都に遊びに来てからは
うつ州の城内に寺があって、その寺内に鉄塔神てつとうじんというのが祭られているが、その神霊赫灼かくしゃくたるものとして土地の人びとにも甚だ尊崇されていた。
山吹はその清流に影をうつして咲いているのである。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
「めっきり記憶がなくなってしまった。俺の頭はどうかしている。いやいや頭ばかりではない、身体全体がどうかしている。精力がない! 虚茫うつけてしまった。……はっきり覚えていることといえば、その時の痙攣しびれ一つだけだ」
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
それでも体格は立派であり、よく洋装が調和うつって見えました。
用いてそのまゝに謄写うつしとりて草紙そうしとなしたるを見侍みはべるに通篇つうへん俚言りげん俗語ぞくごことばのみを
怪談牡丹灯籠:01 序 (新字新仮名) / 坪内逍遥(著)
毗廬遮那如来、北方不空成就如来、西方無量寿仏、十万世界一切の諸仏、各々本尊をうつして、光焔を発し、一切罪を焚焼して、幼君の息災を垂れ給え
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
徳川さんは、紺のレインハットに、ゲートルに地下足袋のいでたちで、私の乘つてゐた座席へうつり、雨の中を私達の乘つて來た機關車は小板谷へ登つて行つた。
屋久島紀行 (旧字旧仮名) / 林芙美子(著)
此奴こいつうつかり京都きやうとまでつて、萬一ひよつと宿やどがないと困ると思ひまして、京都きやうとの三でう白河橋しらかはばし懇意こんいものがございますから、其人そのひとところへ郵便を出して、わたしまゐるからうかめてくださいとまうしてりますると
牛車 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
躄車くるまなどに乗せてやりましては、世間への見場悪く、……いっそ、道了様を屋敷内へお遷座うつししたらと……庭師に云い付け、同じ形を作らせましたところ、虚妄うつろごころの父、それを同じ道了様と思い
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)