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鬱
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うつ
ふりがな文庫
“
鬱
(
うつ
)” の例文
苦笑しながら逸作はそう言ったが、わたくしが近頃、歌も詠めずに
鬱
(
うつ
)
しているのを知ってるものだから、
庇
(
かば
)
ってついて来て
呉
(
く
)
れた。
雛妓
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「いや、許田の御猟は、近来のご盛事じゃったな。臣下のわれわれも、久しぶり山野に
鬱
(
うつ
)
を散じて、まことに、愉快な日であった」
三国志:05 臣道の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
第二種(疾病編)疫、痘、
瘧
(
ぎゃく
)
、卒中、失神、
癲癇
(
てんかん
)
、諸狂(
躁
(
そう
)
性狂、
鬱
(
うつ
)
性狂、妄想狂、時発狂、ヒステリー狂等)、髪切り病、
恙虫
(
つつがむし
)
妖怪学講義:02 緒言
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
左は
楊
(
やなぎ
)
と
稚松
(
わかまつ
)
と雑木の緑と
鬱
(
うつ
)
した青とで
野趣
(
やしゅ
)
そのままであるが、遊園地側の白い道路は直立した細い赤松の並木が続いて、一
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
其壁
(
そのかべ
)
を
越
(
こ
)
して、
桑樹
(
くはのき
)
の
老木
(
らうぼく
)
が
繁
(
しげ
)
り、
壁
(
かべ
)
の
折
(
を
)
り
曲
(
まが
)
つた
角
(
かど
)
には
幾百年
(
いくひやくねん
)
經
(
た
)
つか、
鬱
(
うつ
)
として
日影
(
ひかげ
)
を
遮
(
さへぎ
)
つて
居
(
ゐ
)
る
樫樹
(
かしのき
)
が
盤居
(
わだかま
)
つて
居
(
ゐ
)
ます。
日の出
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
▼ もっと見る
それ
故
(
ゆえ
)
に、
結局
(
けっきょく
)
へとへとになって、
揚句
(
あげく
)
は
酒場
(
さかば
)
で
泥酔
(
でいすい
)
し、わずかに
鬱
(
うつ
)
を
晴
(
は
)
らしたのです。
彼
(
かれ
)
は、
芸術
(
げいじゅつ
)
を
商品
(
しょうひん
)
に
堕落
(
だらく
)
さしたやからをも
憤
(
いきどお
)
りました。
風はささやく
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
するとその話がきまった頃から、妙に私は気が
鬱
(
うつ
)
して、自分ながら不思議に思うほど、何をするにも昔のような元気がなくなってしまいました。
疑惑
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
下に二神あり、一を
鬱
(
うつ
)
、一を
塁
(
るい
)
と名づく、並びに葦の
索
(
さく
)
を執って不祥の
鬼
(
き
)
を伺い、得ればすなわちこれを殺すと。
十二支考:08 鶏に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
二人は土手を上つて行つて黒
麦酒
(
ビール
)
を飲んだ。酔つて幾らか
鬱
(
うつ
)
を散じてまた二人は川原の方に下りて行つた。川原には川柳の一めんに生えてゐるところがある。
日本大地震
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
時雄は
頻
(
しき
)
りに酒を
呷
(
あお
)
った。酒でなければこの
鬱
(
うつ
)
を遣るに堪えぬといわぬばかりに。三本目に、妻は心配して
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
異郷へ
鬱
(
うつ
)
を慰めに来た身が、またしても苦しい思いをして、彼れはせめてゆかりのある言葉を聞こうと、おしかさんのなまりとおなじことばで語る京都へいって
大橋須磨子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
さらぬだに、魔の行燈と、怨霊の灯と、蚊帳の色に、
鬱
(
うつ
)
し沈んだ真三の顔を、ふと窺いつつ
露萩
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
落し差しの
体
(
てい
)
となって、深夜のそぞろ歩きに、天井裏の
鬱
(
うつ
)
を慰めに出たのかも知れない。
大菩薩峠:37 恐山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
求
(
もと
)
め
播州
(
ばんしう
)
室
(
むろ
)
の津に
到
(
いた
)
りけり當所は
繁華
(
はんくわ
)
の
湊
(
みなと
)
にて名に聞えたる
室
(
むろ
)
の
早咲町
(
はやざきまち
)
など
遊女町
(
いうぢよまち
)
軒
(
のき
)
を
連
(
つら
)
ねて在ければ吾助は例の
好色
(
かうしよく
)
者と言ひ懷中には二百兩の金もあり先此處にて
勞
(
つか
)
れを慰め
鬱
(
うつ
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
来る日も来る日も念仏を唱えながら
鬱
(
うつ
)
うつとして過しているところであった。
円朝の牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
春の今頃の時節の、日曜日の昼下りというのは、へんにむしむしして、気分が
鬱
(
うつ
)
するものですねえ。赤木医師も毎年今頃の気候が、一番体や頭に悪いと、いつか問わず語りに話していました。
凡人凡語
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
他の事に
紛
(
まぎ
)
らして暫し
鬱
(
うつ
)
を忘れるというのが、東洋思想の「慰め」である。
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
落語
(
らくご
)
の
濫觴
(
らんしやう
)
は、
昔時
(
むかし
)
狂歌師
(
きやうかし
)
が
狂歌
(
きやうか
)
の
開
(
ひらき
)
の
時
(
とき
)
に、
互
(
たがひ
)
に手を
束
(
つか
)
ねてツクネンと
考込
(
かんがへこ
)
んで
居
(
を
)
つては
気
(
き
)
が
屈
(
くつ
)
します、
乃
(
そこ
)
で
其合間
(
そのあひま
)
に世の中の
雑談
(
ざつだん
)
を
互
(
たがひ
)
に語り
合
(
あ
)
うて、一
時
(
じ
)
の
鬱
(
うつ
)
を
遣
(
や
)
つたのが
濫觴
(
はじまり
)
でござります。
落語の濫觴
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
お
品
(
しな
)
は
毎日
(
まいにち
)
閉
(
し
)
め
切
(
き
)
つて
居
(
ゐ
)
た
表
(
おもて
)
の
雨戸
(
あまど
)
を一
枚
(
まい
)
だけ
開
(
あ
)
けさせた。からりとした
蒼
(
あを
)
い
空
(
そら
)
が
見
(
み
)
えて
日
(
ひ
)
が
自分
(
じぶん
)
の
居
(
ゐ
)
る
蒲團
(
ふとん
)
に
近
(
ちか
)
くまで
偃
(
は
)
つた。お
品
(
しな
)
は
此
(
こ
)
れまでは
明
(
あか
)
るい
外
(
そと
)
を
見
(
み
)
ようと
思
(
おも
)
ふには
餘
(
あま
)
りに
心
(
こゝろ
)
が
鬱
(
うつ
)
して
居
(
ゐ
)
た。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
飲もう! 飲んで
鬱
(
うつ
)
を晴らそう。
汝
(
なんじ
)
、無力なる国民学校教師よ。
春の枯葉
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「このことは、お聞きにいれない約束になっておりますが、わたし一人の胸にためておけといわれても、重荷なばかりで、気持が
鬱
(
うつ
)
してなりませんから、それで、申しあげることにいたしましたのです」
鈴木主水
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
「誰も来やしないよ。それはあんたの体の中で血が暴れているせいだよ。血の出所がなくなって、
鬱
(
うつ
)
して濃くなってくると、いろんなものが見えたり聞こえたりするのだよ……ご飯はどう、食べるかね?」
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
鬱
(
うつ
)
として
嚴
(
おご
)
そかに立てる影かな。
カンタタ
(旧字旧仮名)
/
ポール・クローデル
(著)
不遇で長かった皇太子時代には、青年らしい奔放な恋もし、また
鬱
(
うつ
)
を
放
(
はな
)
つためには、後宮の女色漁りも人いちばいな方であった。
私本太平記:13 黒白帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しかりといえども、集散遅速は火の初めて滅して、煙気なお
鬱
(
うつ
)
せるがごとし。ゆえに、鬼神の感格あり、
厲霊
(
れいりょう
)
の来出あり、
精爽
(
せいそう
)
の依託あり、魂魄の流行あり。
通俗講義 霊魂不滅論
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
しばらくすると、
玄關
(
げんくわん
)
の
襖
(
ふすま
)
が、いつになく、
妙
(
めう
)
に
靜
(
しづか
)
に
開
(
あ
)
いて、
懷手
(
ふところで
)
で
少
(
すこ
)
し
鬱
(
うつ
)
した
先生
(
せんせい
)
が
麻を刈る
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
彼女はもう何もかも一切のわずらわしさを捨て、故郷に
隠遁
(
いんとん
)
してしまおうと決心したが、その心持ちを知る人に
慰藉
(
いしゃ
)
されて思い直し、末虎、照玉と共に旗上げをして
鬱
(
うつ
)
をなぐさめた。
豊竹呂昇
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
鬱
(
うつ
)
として
曇天
(
どんてん
)
のしたに動かざり
梢
(
こずゑ
)
のさくら散り敷けるさくら
桜
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
あり余る若さと
鬱
(
うつ
)
のやりばとして、宮はよく洛外へ
狩猟
(
かり
)
に出た。供にはいつも吉野、十津川いらいの
猛者
(
もさ
)
を大勢つれていた。
私本太平記:09 建武らくがき帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
これ婚姻の当夜以来、お通がいまだ一たびも聞かざりし
鬱
(
うつ
)
し
怒
(
いか
)
れる良人の声なり。
琵琶伝
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「お気のどくに堪えません。このたびは、非常な
御不首尾
(
ごふしゅび
)
でお帰りなされた。きっとその
鬱
(
うつ
)
を筑前どのに聞いて戴こうと思っていたにちがいない」
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「
姦婦
(
かんぷ
)
」と
一喝
(
いっかつ
)
、
雷
(
らい
)
の如く
鬱
(
うつ
)
し
怒
(
いか
)
れる声して、
外
(
と
)
の
方
(
かた
)
に呼ばはるものあり。
二世の契
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
それは人目にもわかる程だったので、むしろ幸いにして、主君に
暇
(
いとま
)
を乞い、
山代
(
やましろ
)
の温泉へ行って、
病
(
やまい
)
よりはむしろ心の
鬱
(
うつ
)
を忘れようとしていた。そして
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と
一声
(
ひとこえ
)
、時彦は、
鬱
(
うつ
)
し沈める音調もて、枕も上げで名を呼びぬ。
化銀杏
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
留守をつとめていた腹心の早川主膳には、主人が何で鎌倉のご不興を
蒙
(
こうむ
)
ったのか、心外でならないらしく、いまも、道誉が昼酒に
鬱
(
うつ
)
を
放
(
や
)
っているその席で
私本太平記:05 世の辻の帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
然
(
しか
)
るに松川は
未
(
いま
)
だ眠らでぞある。
鬱
(
うつ
)
し
怒
(
いか
)
れる音調
以
(
も
)
て
妖怪年代記
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
玄蕃にいいふくめて、途中に兵を
埋伏
(
まいふく
)
し、夜逃げの秀吉を急襲して、一挙に後の
禍
(
わざわい
)
を絶ち、ここ腹いッぱい溜っている
鬱
(
うつ
)
を晴らせるものと、夜明け方まで
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
公子 (色はじめて
鬱
(
うつ
)
す)むむ。
海神別荘
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「いや、ふたりとも、しんが疲れたことであろ。そう気を病むな、
鬱
(
うつ
)
するな。大儀大儀、酒でも参るがよい」
新書太閤記:11 第十一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼はたちまち、ここ数日の
鬱
(
うつ
)
を眉に払って、大満悦な
態
(
てい
)
となり、すぐさま
開封
(
かいほう
)
東京
(
とうけい
)
へさして出立した。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ここで吉次は幾ぶん胸の
鬱
(
うつ
)
をはらした。見まわせば、いかにも貧しそうだ。豊かな公卿というものは
尠
(
すく
)
ないが、わけてここの邸には、坐っていても貧乏のにおいがする。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しかし同じ嘆息にしても、ああ——と
満腔
(
まんこう
)
から
鬱
(
うつ
)
を天へ吐きすてるのもあるし、われとわが身へ、ああと歎いて、世の憂いをいよいよ身一つに
蒐
(
あつ
)
めてしまうものとがある。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
つい
鬱
(
うつ
)
を吐いていたらしいが、たとえ
放免筋
(
ほうめんすじ
)
(諜者)でなくても、ヘタな人間に聞かれると、いつか密告されていて、後日忘れた頃に引ッ張られた——などの例は毎々眼にも見
私本太平記:02 婆娑羅帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
等々々、みな
悪
(
あ
)
しざまに、数正の非行を
罵
(
ののし
)
って、家康の
鬱
(
うつ
)
を、慰めようとするのだった。
新書太閤記:11 第十一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
鬱
(
うつ
)
ぼつが、発したのである。
新書太閤記:10 第十分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
詩を詠じて
鬱
(
うつ
)
を放ち
三国志:06 孔明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
鬱
常用漢字
中学
部首:⾿
29画
“鬱”を含む語句
憂鬱
憂鬱症
悒鬱
鬱陶
鬱々
鬱金香
沈鬱
鬱憂
鬱蒼
蓊鬱
鬱屈
気鬱
幽鬱
憂鬱病
鬱気
鬱憤
鬱積
鬱然
鬱懐
鬱血
...