傳染うつ)” の例文
新字:伝染
『え。』と氣がさした樣に聲を落して、『だけど私が言つたなんか言つちや厭よ。よ、昌作さん貴方も傳染うつらない樣に用心なさいよ。』
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
「レコが入つてたんやろ。……あの人も雪隱で拍手を叩くなんて、少し傳染うつつて來たかなア、おきちが。」と千代松は微笑ほゝゑんだ。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
井田は舌鼓を打ちながら「傳染うつり相な聲だな」と不知に獨語して頭からまくしかゝる或者をつき破るかの樣な勢で、さつと風呂から立上つた。
半日 (旧字旧仮名) / 有島武郎(著)
彼女は私の身熱のあまり高かつたため何時いつしか病を傳染うつされて、私の身代りに死んだのである。私の彼女に於ける記憶は別にこれといふものもない。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
おれの咳が傳染うつつたのかな。彼は何氣なささうに自分の足もとに揃へてある一組の婦人靴を目に入れる。
恢復期 (旧字旧仮名) / 堀辰雄(著)