騎士と姫きしとひめ
春の弥生の夜は仄に 天地ひくゝ垂れあひて、 情のにほひいちめんに おぼろおぼろの花ぐもり、 精舎の壁の地獄絵も 温き霞を纏ふらむ。 森の木立の月かげを 避けて、まぶかき黒鉄の 甲に、なほも色白の 面凛々しく、瑠璃青の 瞳きよげに、花ぐさを …