うつ)” の例文
さう言つて目賀田は蝙蝠傘かうもりがさを多吉に渡し、痛い物でも踏むやうな腰付をして、二三間離れた橋の袂の藪陰につくばつた。禿げた頭だけがうつすりと見えた。
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
唇から付いたんなら、もう少しうつすり付きますが、筒の口は紅が笹色さゝいろになつてゐるほど付いてるでせう。それは、紅皿から指で筒の口へなすつたものに相違ありません
併し家らしいものは山の臺上だいうへにも臺下だいしたにも見えず、ただその上下うへしたの所々に散點する森や林やの黒い影をうしろにかして、霧のやうなものがうつすり棚曳いてゐるのが、望まれるだけであつた。
地方主義篇:(散文詩) (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
日がうつすりと光つてゆく、ソフイー。
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)