うつ)” の例文
たゞしけるにかれは當四月同人店へ引うつり夫婦とも三州者の由にて隨分ずゐぶん實體じつていらしく相見え候へ共女房は此節わづらひ居るとの事に付早速甚兵衞を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
眞紅しんくへ、ほんのりとかすみをかけて、あたらしい𤏋ぱつうつる、棟瓦むねがはら夕舂日ゆふづくひんださまなる瓦斯暖爐がすだんろまへへ、長椅子ながいすなゝめに、トもすそゆか
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「あたしは、すみれをはちうつしてやりましょう。」と、竹子たけこさんはいって、すみれをば地面じめんからはなして、素焼すやきのはちなかうつしました。
つばきの下のすみれ (新字新仮名) / 小川未明(著)
勘次かんじはひつそりとしたいへのなかにすぐ蒲團ふとんへくるまつてるおしな姿すがたた。それからおしなあしさすつてるおつぎにうつした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
さて引金ひきがねを引きたれども火うつらず。胸騒むなさわぎして銃を検せしに、筒口つつぐちより手元てもとのところまでいつのまにかことごとく土をつめてありたり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
『あのひとにはあのひととしての仕事しごとがあり、めいめいることがちがいます。良人おっとぶのは海辺うみべ修行場しゅぎょうばうつってからのことじゃ……。』
しばらまつててゐるうちに、いしかべ沿うてつくけてあるつくゑうへ大勢おほぜいそうめしさいしる鍋釜なべかまからうつしてゐるのがえてた。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
今日こんにち、ひのき、すぎなどはやしをこのたいなかるのは、ひとうつゑたもので、もと/\ひのき、すぎなど温帶林おんたいりん生育せいいくしてゐたものです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
さうして學者がくしや文學者ぶんがくしやも、かならずしも上流社會じようりうしやかい人々ひと/″\ばかりでなく、かへってひく位置いちひとほう中心ちゆうしんうつつてるようになりました。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
それでヨーロッパの諸國しよこく支那しなのように青銅器せいどうき時代じだいといふものを區別くべつするほどのあひだもなく、すぐに鐵器てつき時代じだいうつつてしまつたのです。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
はなしそれからまへうちはなれて、家主やぬしはううつつた。これは、本多ほんだとはまる反對はんたいで、夫婦ふうふからると、此上このうへもないにぎやかさうな家庭かていおもはれた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
早々そうそう蚊帳かやむと、夜半よなかに雨が降り出して、あたまの上にって来るので、あわてゝとこうつすなど、わびしい旅の第一夜であった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
新小川町のとにかく中流ちゅうりゅう住宅じゅうたくをいでて、家賃やちん十円といういまの家へうつってきたについては、一じょう悲劇ひげきがあった結果けっかである。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
そして女が両側の店を覗き覗き、きよろ/\してゐるやうだつたら、その女は屹度うつだから、とて不在るすがちな海員の女房には出来かねる。
ジエィン、あなたはしとやかで勤勉で無慾で、誠實で、うつり氣な所がなく、而も勇敢です。實にやさしくまた實に雄々をゝしいのです。
四六ばんから四六ばいの雑誌にうつまでには大分だいぶ沿革えんかくが有るのですが、今はく覚えません、印刷所いんさつじよ飯田町いひだまち中坂なかさか同益社どうえきしやふのにへて
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
しかるにかれ毎晩まいばんねむらずして、我儘わがまゝつてはほか患者等くわんじやら邪魔じやまをするので、院長ゐんちやうのアンドレイ、エヒミチはかれを六號室がうしつ別室べつしつうつしたのであつた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
殺された娘お玉の死體は、隣りの六疊にうつされ、母親の時代と、その義妹でお玉には叔母に當るお近が、涙ながらに死裝束しにしやうぞくの世話をしてをりました。
ちごしづかに寢床ねどこうつして女子をなごはやをら立上たちあがりぬ、まなざしさだまりて口元くちもとかたくむすびたるまゝ、たゝみやぶれにあしられず
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そして、その墨染すみぞめの袖に沁みているこうにおいに、遠い昔のうつを再び想い起しながら、まるで甘えているように、母のたもとで涙をあまたゝび押しぬぐった。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
太夫たゆうめておどったとて、おせんの色香いろかうつるというわけじゃァなし、芸人げいにんのつれあいが、そんなせまかんがえじゃ、所詮しょせんうだつはがらないというものだ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
そして、勝負せうふをしながら畫談ぐわだんかせていたゞいたりするのも、わたしには一つのたのしみだつた。しかし、赤さかうつり住んでからは、まつたく先生とも會戰くわいせんない。
文壇球突物語 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
しか村民そんみんあひだにはかういふ非常時ひじようじたいする訓練くんれんがよく行屆ゆきとゞいてゐたとえ、老幼男女ろうようだんじよ第一だいいち火災防止かさいぼうしつとめ、ときうつさず人命救助じんめいきゆうじよ從事じゆうじしたのであつた。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
一瞬いっしゅん由旬ゆじゅんを飛んでいるぞ。けれども見ろ、少しもうごいていない。少しも動かずにうつらずに変らずにたしかに一瞬百由旬ずつ翔けている。実にうまい。)
インドラの網 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
ふたたび家を東京にうつすに及び、先生ただちにまげられ、いわるるよう、鄙意ひい、君が何事か不慮ふりょさいあらん時には、一臂いっぴの力を出し扶助ふじょせんと思いりしが
此事をはればきよめたる火を四隅よすみよりうつす、油滓あぶらかすなど火のうつりやすきやうになしおくゆゑ煓々たん/\熾々しゝもえあがる
血を見て凶暴きょうぼうになったかれらは、かねての計画を実行にうつした、まもなくベン夫妻と、一等運転手がたおされた。悪漢あっかんどもは完全にセルベン号を占領せんりょうした。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
「ええ、わけはないのですとも、今度はほかのことにうつります。では犬といっしょに番をするのはだれです」
かれつてうごしました、福鼠ふくねずみ其後そのあといてきました、三月兎ぐわつうさぎ福鼠ふくねずみ場所ばしようつりました、あいちやんは厭々いや/\ながら三月兎ぐわつうさぎところきました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
よるいろにそのみどりくろずみ、可愛かあいらしい珊瑚珠さんごじゆのやうなあかねむたげではあるけれど、荒涼くわうりやうたるふゆけるゆゐ一のいろどりが、自然しぜんからこの部屋へやうつされて
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
道子みちこはし欄干らんかんをよせるとともに、真暗まつくら公園こうゑんうしろそびえてゐる松屋まつや建物たてもの屋根やねまど色取いろど燈火とうくわ見上みあげるを、すぐさまはしした桟橋さんばしから河面かはづらはううつした。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
ロミオ なに、わたしのつみうつった? おゝ、うれしうもおとがめなされた! では、そのつみもどしてくだされ。
大長谷皇子おおはつせのおうじは、まもなく雄略天皇ゆうりゃくてんのうとしてご即位そくいになり、大和やまと朝倉宮あさくらのみやにおうつりになりました。皇后には、れい大日下王おおくさかのみこのお妹さまの若日下王わかくさかのみこをお立てになりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
『では、貴君きくんは、しやおい日出雄少年ひでをせうねん安否あんぴを——。』とひかけて、いそ艦尾かんびなる濱島武文はまじまたけぶみ春枝夫人はるえふじんとにひとみうつすと、彼方かなた二人ふたりたちまわたくし姿すがた見付みつけた。
千八百八十三ねん、ペテルブルグの師範学校しはんがっこう卒業そつぎょうしたソログーブは、各地かくちうつみながら、教師きょうしつとめ、かたわつくっていたが、もなく長篇小説ちょうへんしょうせつ重苦おもくるしいゆめ
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
漠々然ばく/\ぜん何時いつし義母おつかさん自分じぶんうつつて流動ながれ次第々々しだい/\にのろくなつてくやうながした。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
すなわち『万葉集』巻四の「念はじと曰ひてしものを唐棣花色はねずいろの、うつろひやすきわが心かも」、同巻八の「夏まけて咲きたる唐棣花はねず久方ひさかたの、雨うち降らばうつろひなむか」
植物一日一題 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
坂上田村麻呂さかのうえのたむらまろいまから千年余ねんあまりもむかし桓武天皇かんむてんのう京都きょうとにはじめて御所ごしょをおつくりになったころ、天子てんしさまのおともをして奈良ならみやこからきょうみやこうつってたうちの一人ひとりでした。
田村将軍 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
わたしはまだ、グリンミンゲ城へはうつらずに、あいかわらずポンメルンに住んでいるんですよ。
……もう、もう、そんな愚痴ぐちはやめ……星も出よ、あらしも吹けよ、唯ひとすぢに、あの人を思ふわが身には、どうでもよい。ある日マノンの歌ふには「うつろひやすい人心ひとごゝろ
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
ひとりで火の中に飛びこんで死ぬのをきとめたり、おたがいにかみの毛やそでうつる火をしあったり、そうしては、力をあわせて、けんめいにやぶりにかかっているのだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
映すことの構造はうつすが示すようにうつす、うつす、うつすなどの等値的射影を意味している。
うつす (新字新仮名) / 中井正一(著)
皆之を押臥わうぐわし其上に木葉或はむしろきて臥床となす、炉をかんとするに枯木かれきほとんどなし、立木を伐倒きりたをして之をくすふ、火容易やうゐうつらず、寒気かんき空腹くうふくしのぶの困難亦甚しと云ふべし
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
以上の二種の土器どきは或る飮料ゐんれうをば飮み手の口にうつす時に用ゐし品の如くなれど、土瓶どびん或は急須きうすひとしく飮料をたくわへ置き且つ他の器にそそむ時に用ゐし品とおもはるる土噐も數種すうしゆり。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
たはむれに枯草かれくさうつした子供等こどもらは、はるかにえる大勢おほぜい武士ぶし姿すがたおそれて、周章あわてながらさうと、青松葉あをまつばえだたゝくやら、えてゐるくさうへころがるやらして、しきりにさわいでゐた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
すで萬人向ばんにんむきの書物しよもつがないとすれば、問題もんだいは、讀者自身どくしやじしん工夫くふううつらなければならぬ。ぼくは、如何いかなるほんむかといふことよりも、むし大事だいじなのは、如何いかほんむかといふことではいかとおもふ。
読書の態度 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
では あの地球からのおきやくさんたちは 野外やぐわいゐんの方へうつしませう
私達わたしたち卓子てーぶるかこんで、たばこをふかしながら漫談まんだんときうつした。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
幻影まぼろしなればうつろひぬ
独絃哀歌 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
都にうつせ烏瓜
花守 (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)